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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
学園祭編
44/66

第15話

エピローグです。



◆◇◆◇◆


 学園祭が終わり、紫苑は愛梨と帰宅中。

 周りを見れば、まだ興奮冷めぬ生徒が学園祭について語り合っている。


「紫苑、さっき具合悪そうだったけど大丈夫?」

「ああ、さっきはありがとう。おかげで助かったよ」

「よかった、紫苑が復活して。

 ……ねぇ、みんなはリレーのヒーローは樋川君て言ってるけど、私は紫苑だと思ってるよ」

「な、なんだよいきなり」

「……やっぱり紫苑が走ってる姿ってかっこいいよね」

「……お前、学園祭で頭おかしくなったのか?」

「酷い! せっかく褒めてるのに」

「……いや、いつもの愛梨らしくないと思って」

「悪かったわね! どうせいつもの私は素直じゃありませんよーだ」

「……悪かったよ」

「ふふっ、怒ってなんかないよ。

 それより、紫苑の走り感動しちゃった。凄く一生懸命だった」

「みんな一生懸命だったろうに」

「ううん。そうじゃなくて……なんかこう、体に電気が流れるような感動だった」

「……それは多分、愛梨のおかげだ。お前はあの短い距離でも諦めてなかったな。ひたすら前を追ってた。それで俺もハッとなったよ」

「そうなの? それじゃあ私のおかげね」


 愛梨は嬉しそうに破顔させる。

 思わず紫苑はドキリとさせられた。


「そ、そうだな。でも、あのときの走った感覚が思い出せないんだよなー」

「短距離はそんなもんでしょ」

「周りの景色も声援も自分が何を思って走ってたのかも思い出せない」


 まるで夢から覚めて、その夢をどうしても思い出せないみたいに。


「それだけ集中してたのよ。いいことじゃない」

「そうだな。走ってたのはほんの少しの間だったけど、凄く充実した瞬間だった気がする」

「あれが陸上の大会で出せるといいわね」

「……そうなんだよな」

「大丈夫よ。私がまた紫苑に元気とやる気をあげるから」

「ありがとう。俺も愛梨を応援するよ」


 やはり、愛梨の存在はありがたい。


「……そういえば、早苗さんと千冬さんは東京に帰ったの?」

「あ、ああ帰ったんじゃないか?」


 半分本当で半分嘘だ。


「……本当に? 怪しい」

「……ホントホント」

「もちろんあの二人に変なことしてないよね?」

「してないよ!」

「……そう。なら信じる」


 なんとか愛梨は納得してくれた。


◆◇◆◇◆


「ただいまー」

「お疲れ様です。学園祭、結果はどうでしたか?」


 この後片桐に学園祭の結果やその他いろいろな話をした。



「紫苑様が楽しめたようでよかったです」

「まぁいろいろあったけどな」

「いい思い出になりましたね」

「そうだな」


 片桐も学園祭に来れて嬉しそうだった。それに、来年も来る予定らしい。


「あ、それと紫苑様、白雪お嬢様から先ほど電話がありました。紫苑様がまだお帰りになってませんでしたので、白雪お嬢様がまた掛け直すと」

「白雪から? なんだろう」

「機嫌がいいというわけではなさそうでしたよ」

「え!? 俺、白雪を怒らせるようなことしたか?」

「さあ? 私もわかりません」


 何故白雪がご機嫌ななめなのかわかりかねていると電話が鳴った。


「白雪? どうしたの?」

「お兄様! 私も学園祭行きたかったです!」


 そういうことか……


 姉さんがいろいろと土産話をしたらしい。


「しょうがないよ。白雪、忙しかったんでしょう?」

「う〜〜〜片桐とお姉様ずるいです」

「まあまあ、また来年来ればいいじゃん」

「私は学園祭を見たいのではありません。

『お兄様と一緒に』学園祭を楽しみたかったのです!」

「じゃあ来年は俺と一緒に学園祭を楽しむか」

「はい是非!」


 白雪の元気な返事が返ってくる。これで機嫌は直っただろうか。


「……それと、お兄様は私とお姉様以外にも可愛らしい幼馴染がいらっしゃるとか」


 それも報告したのか……


「私の代わりに行かせた側近から聞きました。大変仲が良く、それはもう恋人のようだったと……」


 おいおい、何を報告してんだ側近たち!


「ち、ちょっと待って、そんなことはない。恋人じゃないし、ただの幼馴染だよ」

「お兄様! 言い訳なんか聞きたくありません! 私というものがありながら、幼いころから浮気していたのですね!」

「浮気って……」

「もう浮気者のお兄様なんか知りません!」

「お、俺が悪いのか?」


 白雪が完全に拗ねてしまった。


「お兄様はどうしてそう大勢の女性を侍らせているのでしょう」

「侍らせてなんかないわい」

「この浮気癖はなんとかしないと将来私の苦労が絶えません!」

「いやいや、おっしゃっている意味がよくわからんのですが……」

「もう! お兄様の馬鹿!」

「よくわからないけど、ごめん」

「はぁ〜お兄様は優しくてかっこいいですから競争倍率が高くなるのは当然のことですが……」

「はぁ、ありがとう」

「まぁいいです。私が一番になればいいのですから。

 今度、その幼馴染の方を紹介してくださいね?」

「あ、うん。機会があればね」

「楽しみです」


 紫苑としてはできれば紹介したくない。また面倒なことが起こりそうだ。


「お兄様、会いたいです。私も直接お兄様のお顔を見て、お話ししたいです」

「俺も、白雪に会いたいよ」


 だが、ストレートに言われるとさすがに照れる。


「お兄様にそう言って頂けて嬉しいです」

「白雪は可愛い義妹だからな」

「……私は義妹……そうですね……」


 急に白雪の声が小さくなり、元気がなくなる。


「白雪? どうしたの?」

「……いえ、なんでもありません」

「そう?」

「はい。でも、私は諦められません。私には貴方しかいないのですから」

「白雪?」

「いえ、気にしないでください。

 それより、今後浮気は絶対ダメですからね!」

「……してないって」

「お兄様、会えるのはおそらく夏休みでしょう。待ち遠しいです。私はいつもお兄様を想っております。お兄様も私を想っていてくださいね」

「ありがとう白雪。白雪もトレーニング大変かもしれないけど、頑張って。また夏に会おうね」


 電話の向こうからでも名残惜しそうな雰囲気が伝わってきた気がしたが、いつまでも電話しているわけにはいかないので電話を終えた。

 気づけば三十分近く話していた。だが、愛梨や片桐、姉さんと比べれば少な過ぎる時間だった。



「紫苑様、終わりましたか? 夕食ができてますが」

「ああ、食べようか」

「白雪お嬢様は何と?」

「……なんというか、いつも通りの白雪だったよ」


 紫苑は片桐の問いにはっきりと答えていないのだが、


「そうですか」


 片桐は理解したようだ。


「ところで紫苑様、今日も一緒に寝ますよね?」

「……勘弁してください」


 このままでは片桐と寝ることが習慣化してしまいそうだ。


 結局、この日は一人で眠ることが許された。

 学園祭の思い出に浸りながら、穏やかな眠りについた。


学園祭編 完


次は番外編を挟んで、新編突入です!

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