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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
学園祭編
40/66

第11話

 


◆◇◆◇◆


 学園祭1日目終了。

 今日でほとんどのクラスを回った。明日はクイズ大会などが行われるはずだ。


「ただいま〜」

「紫苑様、お帰りなさい」


 紫苑より一足先に帰っていた片桐は、夕食の準備をしていたようだ。

 キッチンの方からいい匂いが漂う。


 

 夕食後。

 

「さて、紫苑様。いろいろお聞きしたいことがあります」

「な、なんだ?」

「まず、愛梨さんのことです。あんなに仲が良い幼馴染がいたなんて……」

「愛梨とは幼稚園から一緒で、昔は家に呼んで遊んだりもしたよ」

「そうですか……私の知らない紫苑様をたくさん知ってるのですね……」

「片桐に言っても特に接点なさそうだったから今まで言わなかったけど」

「愛梨さんが紫苑様と一番仲が良い女性ですか?」

「どうだろう……片桐や白雪、姉さんとかとも仲が良いと思ってるんだけど……」

「学校では?」

「学校だと愛梨かな。他の人は高校で出会った人ばかりだから」

「そうですか」


 片桐は安心したように息を吐いた。


「それより、今日の片桐は面白かったなー」

「もう、やめて下さい。恥ずかしいです」

「レアなものが見れてよかったよ」


 片桐は頬を染めて、プイッとそっぽを向いてしまう。今日の自分の言動を恥じているようだ。


「紫苑様がいけないんですよ? あんなに仲が良い女性がいたなんて……それも今まで隠して……」

「いや、悪かったよ」


 紫苑は少し理不尽かなと思いながらも謝った。すると、片桐は機嫌を直したようだ。


「ということで、今日も一緒に寝ましょうね♪」

「いやいや、なんでだよ」

「私を不安にさせた罰です」

「俺が悪いのか?」

「ふふっ、それに先ほども申し上げたではないですか。紫苑様を甘やかせてあげたいと。今夜は二人で過ごしましょう?」

「いつも二人で過ごしてるだろうに。それに最近片桐と一緒に寝てばかりな気がする」

「いいではないですか。私たち、組織の中で一番と言っていいくらい仲良しなのですから」

「いや、まぁそうなんだけど……」


 片桐と寝るといろいろ大変だ。ドキドキして寝れなくなったり、理性を抑えるのに必死になったり。


「紫苑様は私に身を委ねてくれればいいのです。それだけで、あなたがそばに居てくれるだけで私は嬉しいのです」

「はぁ、わかったよ。

 それじゃあもう寝るか」


 今日は疲れた。それにどうせベッドに入ってもしばらく寝れないのだから。


「待って下さい」


 片桐の声が圧力を増した。決して逃さないと言ったような声。


「如何わしいものとは何ですか?」


 あ、忘れてた。

 愛梨が余計なことを言ってしまったのだ。


「紫苑様? お応えできないようなものなのでしょうか?」


 片桐の声が冷ややかになっていく。


「紫苑様、詳細に説明して頂くまで今夜は寝かせません」



 この後、紫苑はベッドに入り予想に反してすぐに眠ってしまった。

 ちなみに片桐に説明し、説得するまで2時間かかった。

 こうして紫苑と片桐は二人きりの仲良し(?)な時間を過ごしたのであった。


 

◆◇◆◇◆


 学園祭2日目。

 今日も愛梨と一緒にいる予定だ。半強制的にそうさせられたのだが。

 片桐は時間があれば今日も来るらしい。


「紫苑、今日のシフトは?」

「今日は午後だ。1時から3時」

「じゃあ今日はクイズとか歌を見ましょう?」


 中庭でクイズ大会をして、体育館でクラスで作詞作曲した歌を披露しているのだ。どちらも順位を付け、得点化される。

 自分のクラスが出ているときは応援するのだ。


「そうだな。クラスはほとんど見たし」

「今日も早苗さん来るの?」

「時間があれば来るらしい」

「……そう」


 愛梨が少し悲しそうな顔になった気がする。だが、すぐ元に戻った。


「それより、昨日は何もなかったのよね?」

「……何もなかったよ」


 昨夜片桐に2時間ほど尋問され、その後一緒に眠ったことは黙っておく。


「……怪しい」

「……ジロジロ見ても何も出てこないぞ」


 それでも、なんとか納得してくれたようだ。


「早苗さんて本当はどこに住んでるの?」

「えーと……と、東京」


 とっさに応えられなかった。実際は紫苑と一緒に暮らしている……なんて言えない。


「……ふーん。学園祭のためにわざわざ来たんだ」

「……そうだね」

「へー。やっぱり相当仲がいいのね」


 やばい。凄い睨んでる。というか、疑ってる。


「早苗さん、いつ東京に帰るの?」

「……さあ? いつだろうね……」

「まさか、このまま紫苑と一緒に暮らすとかないよね?」

「……そりゃないんじゃないかな」


 実はすでに一緒に暮らしてます。


「かな? その可能性もあるってこと?」

「いや、ない」

「そう? よかった」


 何がよかったんだ……




 クイズ大会が始まり、二人は中庭に来ていた。


「うちのクラス予選突破できるのかな」


 クイズ大会は学年関係なく行われる。当然三年有利だ。だが、しばしば2年や1年が上位に来ることもある。


「うちのクラス、事前に行われたペーパテストで全体の5位だったらしいよ」

「え!?」

「紫苑、知らなかったの? 掲示板に張り出されてたのに」

「全然見てない。そんなものがあったことすら知らなかった」

「はぁ、何してるのよ。

 事前にペーパテストをして、その成績が均等になるように3つのグループに分けて、予選を行うの」

「そうだったのか」

「うちのクラスがいるグループは、予選の第2グループ。全体2位だった3年生のクラスが同じグループにいるわ」

「予選通過できるのはグループ内で何クラス?」

「3クラスよ。でもペーパテストの成績は関係なくなるから、予選でいい成績残さないと準決勝には進めないわね」

「確か、1年は3クラス、2年2クラス、3年2クラスだったな。ペーパテストでこのグループ2位だから、頑張れば予選通過できるかもな」

「そうね。予選は、何か課題を出されてそれをクリアすると解答権を貰えるの。だから、知識だけあってもダメね」

「……具体的に何をするんだ?」

「さあ? 噂では風船膨らませたり、早食いだったり、腕立て伏せだったり……らしわ」


 クイズの選手たちよ、ご愁傷様です。




 第1グループの予選が終わった。

 第1グループでは、ペーパテスト1位の3年のクラスと10位、12位の2年のクラスが準決勝に進んだ。この結果を見ると、ペーパテストの順位はあまりあてにならない。また、3年生だからと言って、絶対勝てるわけではないようだ。

 ちなみに課題は、『早食い』だった。女の子も参加していたけれど。


 次は、紫苑たちのクラスがいる予選第2グループ。

 クイズ選手の3人が前へ出る。

 今回の課題は、『10秒間で紙ヒコーキを折って、出来るだけ遠くに飛ばせ』だった。

 なんだそりゃとつっこみたくなったが、見てるとなかなか面白い。

 早食いよりましだ。第1グループの人たち動けなくなってるし。

 

 どのクラスも様々な紙ヒコーキを作っていた。10秒間にもかかわらず、なかなか凝っている。

 紫苑たちのクラスも何回か解答権を得ていた。

 そして、終わってみると第2グループ3位で準決勝に進んでいた。

 応援していたクラスメイトが凄く喜んでいる。紫苑と愛梨も拍手をして選手の健闘を称えた。


◆◇◆◇◆


 クイズ大会の予選が終わって、準決勝まで時間があるので紫苑と愛梨は部活の展示を見ていた。


「よかったね〜うちのクラス予選通過できて」

「そうだな。クイズ大会といっても、運とかチームワークとかも必要だな」

「まぁ予選だからね。準決勝からは知識重視みたいよ」

「そうなのか?」

「準決勝は、難易度が違う3つの箱から1つを選んで、中に入っている問題に答えるの。当然、間違えたら0点だし、難易度によって得点も違うけどね」

「ここから、上級生が有利になっていくのか」

「まぁそうね。でも予選終了時点で1年が2クラス、2年3クラス、3年4クラスだからね」

「今度はどこと一緒なんだ?」

「さあ? 準決勝のグループ分けは、くじ引きらしいから」

「3年がいないといいな」

「そうね」


 

「文化部って結構真面目に活動してるんだな」

「それ文化部の人に失礼よ」


 現在紫苑と愛梨は化学部にお邪魔していた。幼い子どもたちは、スーパーボールやスライムを作っている。

 大人には、白衣を着た部員が活動内容や展示について丁寧に説明していた。

 紫苑と愛梨は、液体窒素の中に数秒浸したマシュマロを食べ、スライムを作って部室を出た。



 生物部では、豚の眼球の解剖をしていた。紫苑は少し興味があったので、見学していたが、愛梨には刺激が強かったようだ。

 これまた白衣を着た部員が眼球の部位について細かく説明していた。


 この後、写真部、美術部などを見て茶道部では体験までさせてもらった。普段は大和撫子という言葉からはほど遠い愛梨が、お茶をたてている姿は、まぁなんというか……滑稽だった。



 昼食を挟み、そろそろ風紀委員のシフトの時間なので、また腕章を付けてウロウロすることにした。当然、相方とは別行動。



 愛梨がグラウンドの段ボール造形を見たいというので、グラウンドに足を向けた。

 クオリティの高い作品が多く並んでいる。


「そういえば、早苗さん来ないね」

「そうだな。忙しいのかな」

「早苗さん、家で何してるの?」

「さあ? どっかに出かけてるのかも」


 実は、家で本来紫苑がやるべき仕事の一部をやってくれているだろう……なんて言えない。


 そうして、様々な段ボール造形をジロジロ見ていると、愛梨が突然声を上げた。


「ね、ねぇ紫苑。あっちにやばそうな人たちがいる」

「はぁ? またナンパ野郎? トラブルはもうごめんだ」

「ち、違うよ。もっとやばそう」

「誰だよ」


 そう言って紫苑は顔を上げた。

 そこには、学校の正門に横付けされた何台もの黒塗りのベンツ。窓も黒く、中は見えない。そこから複数のガタイのいい男がぞろぞろと出てくる。全員黒スーツ姿。スキンヘッドやサングラス掛けた人もいる。

 まるでヤクザ。一目見たら誰もがそう思う格好だった。

 近くにいた生徒や来校者は慌てて校内に逃げる。


「ねぇ紫苑、あの人たちやばいよ。私たちも中に行こう」

「ああ、そうだな……ん? ちょっと待って」

「何してるの! いくら紫苑が強いからってあの人数は無理よ!」

「いや、そうじゃない」


 すると、一台のベンツから一人の女性が出てきた。


「おいおい、マジ勘弁してくれ」


 その姿を確認した紫苑は深くため息をついた。



〜続く〜


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