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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
学園祭編
37/66

第8話

学園祭始まりました。

 


◆◇◆◇◆


 学園祭当日。

 天気は晴れて、段ボール造形も外に展示している。どのクラスの作品も凄いクオリティだ。

 今年の学園祭は凄く盛り上がりそうな予感だ。



「片桐、俺は先に学校行くから。学校に着いたら、連絡してくれ。正面玄関で待ち合わせよう」

「はい! いってらっしゃいませ!」


 片桐も学園祭を楽しみにしているようだ。


「それと、学校では敬語はなしで。行ってきます」


 紫苑も高校生活初めての学園祭を楽しみにしていた。


◆◇◆◇◆


 開会式が体育館で行われ、一般公開のために準備をしている。

 紫苑もクラスの出し物の準備を手伝った。


 そして、一般公開が始まる時刻。

 すでに、多くの人が門の前で待っていた。一人一人にパンフレットを配る受付係は大変そうだ。

 うちのクラスにもお客さんがちらほら見え始めた。

 紫苑はクラスの係には入っていないので、シフトはない。それは愛梨も同様だ。


「紫苑、風紀委員のシフトはいつ?」

「今日は10時から12時」

「2時間もやるの!?」

「まぁ風紀委員の腕章つけて校内ぶらぶらするだけだからな」

「じゃあ私もついて行っていい?」

「いいけど、揉め事があったら危ないぞ」

「そのときは紫苑が私を守ってくれるでしょ?」

「はぁ、そんときはお前は逃げろよ」


 紫苑の返答が良くなかったのか、愛梨は少し頬を膨らませたが、すぐに元に戻った。


「それで、親戚のお姉様はいついらっしゃるのかしら?」

「なんだよお姉様って。多分、お昼頃」

「しっかりと挨拶しないと」


 なんだかやけに愛梨が気合いを入れている。

 片桐は、お昼頃にお弁当を持って学校に来ると言っていた。


「それじゃあ、私と他のクラスとか見て回りましょう」

「そうだな」


 二人で校内をウロウロしていると、クラスや部活で一緒の生徒に会いからかわれることもあった。

 愛梨はその度、顔を赤らめている。対して、紫苑は中学時代と同じく受け流す。


 こうして見ると、カップルが多い。学園祭時期だからか、中庭には多くのカップルがいた。

 今の自分たちも、他人から見るとそんな風に見えるのかなと紫苑は思った。


◆◇◆◇◆


 いろいろと見て回り、現在10時前。


「そろそろ風紀委員のシフトだ。本当にお前もついてくるのか?」

「うん!」


 紫苑たちは本部に腕章を取りに行き、紫苑は愛梨に腕章をつけてもらった。


 校内をウロウロとまわる。風紀委員の仕事中だからといって、クラスを見て回ってはいけないわけではない。

 つまり、さっきと変わったのは紫苑の腕に腕章が付いただけ。

 紫苑も愛梨とまわるのは楽しいので、特に文句はない。愛梨も楽しんでいるようだ。

 ちなみに、風紀委員の相方には別行動にしてもらった。


◆◇◆◇◆


 11時前。これまでは特に問題はなかった。

こんな人の多い、しかも学校で暴れる馬鹿もいないだろう。ガラの悪い人はちらほらといた気がする。


 すると、紫苑のポケットに入れているスマホにメールが一通届いた。

 片桐からだ。どうやらもう来たらしい。すぐにそっちに行くとメールで伝える。


「愛梨、正面玄関に行くぞ」

「う、うん。緊張してきた」

「……なんでだよ」

「いや、しっかり挨拶しないと。そして、戦力確認しないと」

「戦力確認て……」


 愛梨は何がしたいのか。紫苑にはよくわからなかったが、とりあえず二人は正面玄関に向かった。


 ☆


 正面玄関には、見る人を圧倒する美しさを持つ女性が立っていた。

 彼女は、自分のスマホに届いたメールを確認すると、美しい笑みをたたえる。

 そんな彼女に近づく複数の影があった。


「お姉さん一人? 凄く美人だね。俺たちと見て回らない?」


 金髪でピアスをした男が声をかける。

 片桐は三人の男に囲まれていた。

 面倒なものに捕まったと思いながら、返事をする。


「連れがいるので」


 まるでゴミを見るかのような冷たい目。見えない圧力がある声。三人の男は、竦み上がった。だが、諦める様子はない。


「お、俺たちと遊ぼうぜ」


 男の一人が強引に片桐の腕をつかもうとする。

 だが、片桐はそれを難なく避ける。

 紫苑様以外の男に触れられたくない。そう思っていたので、反射的に体が動いた。

 紫苑様の顔が早く見たいなと思いながら、まだ自分を取り囲む男たちを見据えた。

 片桐なら一瞬で男達をねじ伏せられるが、それをする時間とエネルギーが無駄だと思った。


 そこへ紫苑がやってきた。紫苑の顔を確認すると、片桐はぱあっと明るくなった。

 紫苑も片桐を見て笑顔になったが、次の瞬間には険しくなった。男達を強引にかき分けて片桐の前に立つ。


「お待たせ」


 紫苑は片桐を安心させるようにできる限りの笑顔を作る。


「なんだてめぇ。引っ込んでろ」


 男の一人が紫苑を掴もうとする。

 紫苑はその腕を取り、捻って関節を決めた。男は顔を苦渋で歪める。

 そのまま動けない男を別の男にぶつけ、もう一人は腹に蹴りを入れた。

 


 その後、三人は先生方に取り押さえられ強制的に校外へ出された。

 そのとき紫苑は初めて風紀委員でよかったと思った。


「紫苑さ……紫苑、大丈夫?」


 片桐は、紫苑様と言おうとして慌てて言い直す。

 それが紫苑にはとてもおかしく見えた。


「早苗姉さんこそ大丈夫だったの?」


 紫苑は笑いを必死に抑えて問う。

 片桐のことは早苗姉さんと呼ぶことにした。


「私は大丈夫よ。紫苑が守ってくれるから」


 早苗姉さんはいつもの微笑で紫苑を見つめる。呼び方を変えても、態度は変わらない。

 そうやって、甘い雰囲気を醸し出していると不機嫌な声がかけられた。


「紫苑、そろそろ私にもお姉さんを紹介して欲しいのだけど」


 完全に愛梨の存在を忘れていた。



〜続く〜


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