第8話
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白雪が鷹司家に来て一ヶ月が経った。もうすっかり今の生活に馴染んでいる。白雪は、千冬と同じ小学校に通っていた。
「白雪、学校はどう?」
「お友達もたくさんできたし、楽しいよ!」
来たときとは別人のように明るくなった。ーーそれも、千冬のお陰だが。
それでも、時折悲しそうにしていることがあった。それは、小学生が見せる悲しみではなかった。
千冬は、白雪がこの家に来た本当の理由を知らない。白雪も話したがらない。
だが、それが白雪のトラウマになっていることは明らかだった。
それを自分に打ち明けてくれないことに、千冬は寂しさを感じていた。
☆
千冬の両親は、所謂政略結婚だった。そのことは、組織の人間しか知らない。それでも、二人は愛し合っていた。千冬に対してもこの上ない愛情を注いだし、白雪にも実の娘のように可愛がった。
何の不都合もない生活だが、千冬は度々あることが頭によぎる。
ーー白雪の親はどこにいるのか。娘を置いて何をしているのか。
千冬は、白雪の両親を見たことがない。
ーーどこか遠くで仕事をしているのかもしれない。きっと会えない事情があるのだ。
最初のうちはそう考えていたが、連絡の一つもないのはおかしい。
ーーもしかして白雪の両親はすでに……
考えるのが怖い。そんなこと考えてはいけない。
当然、それを白雪に聞く勇気などなかった。
本当なら、白雪も自分の親に可愛がってほしかったに違いない。
でも、今の自分にはどうすることもできない。
今は白雪と楽しく過ごすことが、彼女のためになる。
千冬は、これ以上考えることを止めた。
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そして、白雪が来て最初の夏休み。毎年この時期になると、鷹司家ではある場所に行く。
そこは、山梨のとある避暑地。そこの別荘で、一ヶ月ほど過ごすのだ。
だが、そこに来るのは千冬たちだけではない。鷹司家と好意にしている家も招かれる。一条家もその一つだった。
☆
千冬は毎年楽しみにしていた。自分より四つ下の紫苑に会うことだった。そのため、学校の宿題などさっさと終わらせた。思い切り遊ぶのだ。
千冬は、紫苑に白雪を会わせようと思っていた。白雪は、相変わらずの人見知りだが、紫苑なら大丈夫だろう。
「白雪、山梨にはね私の大好きな人がいるの。白雪にも紹介するね」
「……私やお父さん、お母さんより?」
すでに白雪は、千冬の両親をお父さん、お母さんと呼んでいた。
「う〜ん、同じくらいかな。白雪もきっと仲良くなれるよ!」
「……男の子?」
「そうよ」
「……男の子は乱暴で嫌」
「大丈夫よ。その子は、そんな子じゃないから。この際、男の子のお友達も作りなさい」
「……うん。頑張る」
口ではそう言っているが、とても不安そうだ。そんな白雪の髪を千冬は、撫でた。
そうして、千冬たちは山梨に向け出発した。
道中、千冬は白雪に紫苑のことを話した。白雪より一つ上のこと。千冬がとても可愛がってること。随分前のファーストコンタクトの話もした。
白雪には紫苑のことを話す千冬は、輝いて見えた。とても楽しみにしているようだ。
話を聞いているうちに、白雪もだんだん紫苑に興味が出てきた。
これまで以上に、夏の日々が楽しみになってきた。
〜続く〜
次は、紫苑も登場します。




