第7話
◆◇◆◇◆
〜鷹司家〜
「お姉様! 今日の分のトレーニング終わりました!」
白雪が千冬に報告する。声からはわからないが、表情から疲労感が伝わってきた。
「ご苦労様。この生活、辛くない? 貴女は強くならなくてもいいのよ?」
鷹司家の次期当主は千冬だ。白雪が組織に入る必要はない。それに、例え入るとしても女性の白雪に力仕事は、回ってこないはずだ。
内心、千冬は白雪に、組織に入ってほしくないと思っている。
裏社会を見てきたからだ。ドロドロの世界。自分の利益の為なら、手段を選ばない人間を多く見てきた。
まだ純粋な少女にそれを体験させたくない。危険も多く伴う。白雪には、「普通」の女性として生きてほしい。それが、千冬の望みだった。
「お姉様、辛くなどありません。私は、お兄様やお姉様と同じくらい強くなりたいのです」
白雪の目には、決して揺るがない覚悟があった、
「……」
千冬は、苦笑いを浮かべた。
ーー相変わらずね
千冬は、白雪がこの家にきたときのことを思い出した。
◆◇◆◇◆
〜8年前〜
当時、千冬11歳、白雪6歳だった。
千冬は小学5年生、白雪は小学校に入学したばかりだ。
突然、家に白雪がきた。どうやら、とある事情で引き取ったらしい。
今となっては組織絡みだと、推測可能だが当時はまだ小学生。深い事情があることなど知る由もなかった。
鷹司家に来た白雪は、酷い悲しみを負っていた。原因はわからない。ただ、彼女がとても悲しそうに見えた。
ーー辛いことがあったのかな?
千冬は他人事のように考えていたが、そんなことより義妹ができたことが嬉しかった。
千冬は、一人っ子だ。兄妹や姉妹に憧れがあった。
「私、鷹司千冬。お姉ちゃんって呼んで!」
「……わ、私は白雪……です」
少し緊張しているのか、声が小さかった。だが、躾がしっかりしていたのだろう、彼女には気品があった。
「白雪って呼んでいい?」
千冬は、明るく笑顔で話す。
それに、白雪もコクリと頷いた。
「白雪、可愛いね! お人形さんみたい!」
そんなことを言いながら、部屋へ案内した。
「そういえば、どこから来たの?」
何気なく千冬は聞いてみた。
すると、白雪の顔が曇る。今にも泣きそうだ。
「あ、話したくなければいいからね。ゴメンね」
「いえ……お姉ちゃんは悪くない」
そう言って、俯く彼女を千冬は可愛いと思った。
「本当に可愛いわ! ねぇ、ドレス着てみない? いえ、着なさい。これは、お姉ちゃん命令よ」
そう言って、千冬は自分の部屋からドレスを何着か持ってきた。家柄の関係でドレスをいくつか持っているのだ。
「全部私のお下がりだけどね。
う〜ん、これもいいかな〜」
完全に白雪は、着せ替え人形にされていた。
結局、「白雪」だから白が似合うということで白のドレスを着せた。
「よく似合ってる! 自分で見てどう?」
「……すごい、こんなドレス初めて……」
家に来て初めて、白雪が目を輝かせた。どうやら、ドレス作成は成功のようだ。
「白雪にあげる。他にも欲しいのあったら、あげるよ」
「……ありがとう、お姉ちゃん」
白雪は、喜んでくれたが何か違う。
彼女の心には、闇がまだある。
それを、これからゆっくりと克服できるように支えてあげるのが私の使命だ、と千冬は思った。
「白雪、悩んでることとかあったら何でも言ってね! 私は、もう白雪のお姉ちゃんなんだから」
「……うん」
この日二人は、一緒に眠った。
〜続く〜
これからは、2日に一話のペースになりそうです。




