第6話
紫苑の携帯が鳴った。メールが来たらしい。
メールを確認した紫苑の顔が綻んだ。
「片桐、片桐家は一条家の傘下だ」
「……っ!」
紫苑は嬉しそうに告げた。
片桐も驚きを隠せないようだ。
だが、次の瞬間片桐の目から涙が落ちた。
☆
片桐は、お別れをしようとしていた。
だが、紫苑に届いたメールに阻まれた。
メールを見た紫苑が、嬉しそうな表情を浮かべた。
ーーもしかしたら
そんな期待が頭をよぎる。
「片桐は一条家の傘下だ」
頭が真っ白になる。理解が追いつかない。
一条家の傘下?
ということはーーまた紫苑様の側にいられる!
やっと理解できたとき、無意識に涙を流していた。
「……紫苑様っ……」
この涙は、悲しみからでない。歓喜だ。
ーー紫苑様についていこう
そう決心した。
☆
よかった。片桐は喜んでくれているようだ。
「紫苑、上手くいってよかったわね」
千冬も安心したように言う。
「はい。叔母上に感謝です」
紫苑は九条家に、片桐家が一条の傘下に入ることを交渉していたのだ。千冬はそれを知っていた。
「……ですが姉さん、もし叔母上から許しがもらえなかったら片桐家は、完全に孤立してました。除名は、危なかったのでは?」
「……どちらにしろ、片桐を除名せざるをえなかったわ。
結果的によかったのだから、これで良しとしましょう」
「そうですね」
紫苑は、まだ泣いている片桐の前に座った。
「片桐、これからも俺を支えてくれるか?」
答えは、聞かなくてもわかる。だが、紫苑は笑顔で聞いた。
「もちろんです」
片桐も笑顔で頷く。
「よし、これからは俺とこい」
紫苑が片桐に手を伸ばす。
「はい!」
片桐もその手を強く握り返した。
◆◇◆◇◆
その後、姉さんは東京へ帰った。今は片桐と紫苑の二人きり。
「片桐、前にも言ったけど俺はお前の笑顔が好きだ。これからは、それをもっと見せてほしい」
「はい。それを貴方が望むなら」
片桐は、少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「それと、一年間申し訳ありませんでした。紫苑様に失礼な態度をとっていました」
「気にするな。もう過去のことだしね。これからのことを考えよう」
「はい。私は紫苑様を一番近くでお支えします」
「片桐、俺はお前とならどんなことでも乗り越えられる気がする。なにせ、お前は凄く優秀だからな」
片桐は、嬉しそうに笑う。
「俺たちは、これから良い関係を築いていこう。それこそ、組織の中で有名になるくらいに」
「望むところです!」
◆◇◆◇◆
そして二年後、その言葉は事実となった。今や組織の中で、紫苑と片桐の仲の良さを知らない者はいないだろう。
〜続く〜
片桐メインの過去編でした!
次は、鷹司姉妹メインです。
これから、投稿が遅くなるかもしれません。ご承知ください。