表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

初恋


皆さんの初恋は、いつですか?


私の初恋は……一歳の時でした。


そんな訳ない、と思うかもしれません。

でも、本当なんです。


相手は、私の兄。

いいえ、お兄ちゃんでした。


初めてお兄ちゃんを「意識して」見たのが、一歳の時。

姿を目にした瞬間、心臓の鼓動が耳元で鳴り響いたのを、今でもはっきり覚えています。


ええ、その通り。

皆さんの想像通り、耳元に心臓があったんです。


それからのお兄ちゃんとの生活は、私の寿命を半分ほど縮めたと言っても過言ではありません。

とにかく、身体がおかしくなってしまったんです。


お兄ちゃんの顔を見るだけで心拍数は常に百八十オーバー。

言葉を交わせば熱が出て。

ベッドで寝込めば、看病に来てくれる優しいお兄ちゃん。


濡れたタオルを替えられるたびに心拍は跳ね上がり、

おでこに乗せられたタオルは、砂漠の様に水分蒸発させすぐ干からびていました。


幸せ地獄。

矛盾した言葉かもしれないけど、私にはこれ以上ないほどしっくりきます。


お兄ちゃんと一緒にいられて幸せ。

でも、毎日高熱で頭はクラクラ。

一歳の私の身体には、あまりにも荷が重すぎました。


――そして、三歳になった私は考えます。


いっそ、お兄ちゃんと結婚してキスをすればいいんじゃないか、と。


それは人としての絶頂。

人生における最高潮の瞬間。

そこまで辿り着けば、この身体に起きている異常も止まるはず!お兄ちゃんとも結婚できる。


一石二鳥。

今になって思えば、実に合理的な発想でした。


私は勇気を振り絞り、お兄ちゃんの前に立ち小さな手を握り締め真っ直ぐな瞳で見つめた。


「朔お兄ちゃん!! 凛のこと、好き?」


本当はプロポーズして、結婚して、キスまでする予定でした。

でも恥ずかしくて、言葉が喉でつっかえてしまったんです。


「ああ! もちろん、お兄ちゃんは凛のことが大好きだよ」


言葉は刃物だ、と誰かが言っていました。

全くその通りです。


お兄ちゃんの優しくて、耳に透き通る声。

目は柔らかく全てを包み込み、そして頭に乗せられた手の温もり。


すべてが私の急所を正確に抉る、凶器でした。


その瞬間、私は頭から湯気と鼻血を噴き出し、三日間寝込みます。


「凛!!!」


倒れる寸前に見たお兄ちゃんの顔はさっきまでとは一変して心配するお兄ちゃんの声が、心地よく感じられるほど、私はすっかり侵されていました。


三日後、熱が下がり――

久しぶりにお兄ちゃんの顔を見た瞬間、胸が波打つように跳ねました。


髪を切って、前よりずっと格好いい。

元々さらさらだった髪が綺麗に揃えられ、耳元がはっきり見えて、顔全体が輝いているようでした。


言葉より先に、身体が動きました。

私はお兄ちゃんの手を握り、自分の部屋へ引っ張ります。


「どうしたの、凛。急に手を引っ張ったりして」


「あのね……朔お兄ちゃん……私と、結婚してください!!」


勇気を振り絞って出た言葉と眼差しは静まり返った部屋に、私の声が反響してぐるぐる巡る。


お兄ちゃんの顔は、恥ずかしくて見られ無くて

 

目を閉じて、返事を待つことしかできなかった。


だって――以前、お兄ちゃんは言ってくれたんです。

 

凛のことが大好きだって。


だから、返事はきっと「いいよ」だと信じていました。


「凛……」


「ごめんね。僕たちは、結婚はできないんだよ。血の繋がった兄妹だから」


お兄ちゃんは少し困った様に優しい顔をして言葉を紡いだ。


“兄妹だから”。


その言葉が、脳裏で何度も何度も再生される。


そして私は、三歳にして――

人生のどん底へと、真っ逆さまに堕ちていきました。

読んでくださりありがとうございます。この作品は不意に浮かんだお話です。一話一話がそんなに長くなく凄く読みやすいと思います!コメント、ブックマーク登録して下さると励みになります✨️

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ