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番外編 副団長の“弱点”として崇められる僕

 翌朝。僕が差し入れの菓子を持って騎士団に顔を出すと、なぜか空気が違った。やたら視線を感じる。


(――え……今日、僕なんか変かな?)


 そう思った瞬間。


「真琴様だ!!」

「出たぞ……副団長の生命線!!」

「気をつけろ、扱いを間違えると副団長ごと死ぬぞ!!」


(……は?)


 僕が固まる間に、団員たちがぞろぞろ集まってきた。


「真琴様っ、本日も大変ご機嫌麗しく!」

「いや、“様”って……僕そんな偉くないです」

「何をおっしゃるんですか!! 副団長が生きる力は真琴様から供給されているんです!!」

「昨日なんか、副団長が真琴様の前で死にかけてましたからね!」


(あ……あれか!!)


 この間の“団長の爆弾発言”。あれが団員全員に筒抜けになっているらしい。


「副団長は……真琴様の一言で生死が揺らぐんですよね」

「“隣にいたら嬉しい”で致命傷」

「“ずっと傍にいるよ”で完全に落命」

「もう真琴様は、回復魔法どころか“蘇生魔法”を使える人扱いですよ!!」

「そんな大それた!!」


 僕が必死で否定するも、団員たちは首を横に振る。


「真琴様! 我々は確信しております!」

「副団長があれほど脆く、あれほど幸せそうになれるのは、世界で真琴様だけです!」

「“弱点”であり“心臓”であり“最大の守護神”!!」


(――うわぁ、なんか肩書きが増えてる!)


「よし、もう決めよう!」

「副団長が倒れたときに、真琴様を呼ぶための正式名称が必要だ!」


(――待って待って待って!)


「“副団長の精神安定剤”はどうだ?」

「いやいや、不敬すぎるだろ!」

「では、“副団長の生命維持装置”!」

「医療器具じゃん!!」

「じゃあ……“副団長の聖域サンクチュアリ”」

「それだあああ!!」

「格がすごい!!」


(――どれもイヤだよ!!)


「……真琴?」


 廊下の奥からリオンが現れた。団員たちの視線が一斉にそちらを見る。


(あっ……これは……)


「副団長!!」

「“聖域”がお迎えに来られました!!」

「やめろ貴様らぁぁ!!」


 リオンが本気で怒鳴ったら、騎士団本部が震えた。


「真琴は、そんな変な呼び方をされる存在では――」

「あ、でも……リオンにとっては聖域……なんだよね?」


 ぽつりと、言ってしまった。だって、昨日そう言ってたし。僕がそばにいれば安心するって。


 その瞬間――。


「っ…………」


 リオンの顔が真っ赤になり、団員全員が震え、目を見開く。


「ほらーーー!!」

「言った!!」

「今の一言で、副団長のHPがゼロになりました!!」

「だれか回復魔法ーーー!!」

「いや聖域本人がここにいるから十分だ!!」


(やだ、もう……僕のせいでリオンのHPが!)


 リオンは顔を真っ赤にしたまま、僕の腕を掴んだ。


「ま、真琴!! 団員どもに余計な誤解を――いや誤解じゃない……ああもう!!」


 完全に混乱してる。団員たちは、もはや崇め始めた。


「真琴様ああああ!!」

「今日も副団長を救ってあげてください!!」

「お願いします聖域!!!」

「呼ばないでぇぇ!!」


 叫ぶ僕をリオンが引きずるように、廊下の奥へ連れていった。


「真琴頼むから……ああいう破壊力のある言葉を平然と言うな」

「えっ、だって本当のことだから?」

「っ……!」


 リオンは胸元を押さえて、目の前でしゃがみ込む。


「ほら!! 副団長が苦しんでる!!」

「真琴様早く!!」

「癒しの言葉を!!」

「やめろーーーー!!」


 廊下が地獄みたいになっていく。でもリオンの手は、僕の服の端をぎゅっと掴んだままだった。


「……真琴」

「うん」

「今日は……帰ったら……離れるな」


 小声だけど聞き取れる。昨日の夜の続きみたいな表情で。


「弱点でも……聖域でも何でもいい……君が……そばにいれば……それで……いい」


 その言葉に、団員たちの歓声が上がった。


「うぉぉぉおおお!!!」

「副団長が素直になったーー!!」

「奇跡だ!!!」

「真琴様ーー!! どうかこれからも、副団長をよろしくお願いしますーー!!」


(もう、やだぁ!!)


 顔を真っ赤にしながら、僕も小さく頷いた。


「……うん。ずっとそばにいるよ」


 その瞬間、リオンは完全に固まってしまった。


(……あ、またHPゼロになった)

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