エンディング
あたしはそっと目を開ける。いつの間にか中庭はオレンジ色に染まっていた。冷たくなった空気が肌を撫でる。その感触に、あたしはぶるりと体を揺らした。
「こんな時間に外にいると体に障る。……今は、あまり体を冷やさないほうがいいだろう」
心地いい低音が鼓膜を揺らす。それと同時に、ふわりとあたしの肩を温かい空気が覆った。
「ヘンリー! いつの間に帰ってきたんだ?」
肩にかけられたヘンリーのコートをゆらしながら、あたしは椅子から立ち上がる。
「今さっき帰ったところだ。遅くなってすまない」
「別に構わねぇよ、忙しいのは知ってるしな。……お前が帰ってきてくれるだけで嬉しいしな」
「ジュリ……」
ヘンリーは甘い声であたしの名前を呼ぶと、ぐいとあたしを抱き寄せた。
「お前に会いたくて、帰りたくて仕方がなかった。……可能なら、片時もお前と離れたくない」
「……お前、結構はっきり言うようになったよな」
出会った時には考えられないほど、すらすらと愛を囁くヘンリー。
嬉しいが、いつまで経ってもこれには慣れねぇな。
「ジュリが俺に愛しかたを教えてくれたからな。それを返しているだけだ」
ヘンリーは熱っぽい目でじっとあたしを見つめている。その夕日に照らされわずかに赤みを帯びたその瞳に、どきりと鼓動が跳ねた気がした。
「……じゃあいくら返してもたりねぇぐらい、会えなかった分も含めて愛してやるよ」
ヘンリーは静かに息をのみ小さくこくりと頷いた。赤く染まった頬がひどく可愛らしい。
あたしを抱きしめる腕の力強さが、温かさ心地いい。まるで体の境界線が溶けていくようなその感覚が、あたしをじわりと温める。
今日もあたしだけの王子様の瞳には、優しく微笑むあたしの姿だけが映っていた。




