33:その名の通り
「やめろ、ファイ! 」
ファイの目を見ながら心に響くように言う。
――――彼女から離れて。
彼女は葉月ちゃんじゃない。得体の知れないものだ。
もし彼女が名だけのカオスではなく神としての『カオス』だとしたら…。
僕たちなんて一瞬で消してしまえる。たとえ人間の姿形をしていようとも、だ。
用心に越したことはない。ここは怒らせないのが得策だよ。
通じたのか否か。それは分からないけど、ファイの彼女をつかむ力は弱まった。
「先ほどルシファーが言っておったではないか、カオス、と 」
くっくっくっ…そう笑いながらファイの腕を解き、立ち上がってこちらを見たカオスは、葉月ちゃんの顔なのに…やはりどこか掴めない偉大さをかもしだしていた。
人間の体の中に居るからだろうか?
彼女の体から魔力があふれ出ている。
その魔力はただ溢れているだけなのに、僕やファイの体の温度を下げてゆく。
人間では考えられないほどの魔力の強さ、威圧さ。
もう…神としか考えられないが、ただ単に魔力がずば抜けているだけかもしれない。
そういう意味でなら、魔王という実例もいるわけだし。
物事の道理を推測だけで判断を下すのはよくない。
ここは確認のためにも、神か否か……聞くべきだろうと口を開く。
「それは名だけのカオス? それとも神としてのカオス? 」
「そなたのような魔力ある人間は察しが良いはずじゃ。なぜそのようなことを聞く? 聞かずとも、分かっておろう 」
「一応だよ、一応。 推測だけであなたを神としてしまうのは御免こうむりたいからね 」
「往生際の悪い奴じゃのう。 では真実を言ってやろう。 お前さんの推測の通り、我は神王の1人であるカオスじゃよ 」
すると、隣にいたファイがいきなり叫んだ。
「カオス……神王であろうとも何でもいい。 さっさと葉月を返せ 」
「威勢のよい人間だな! そなたのような命知らずの輩はいつの時代も面白いものよ! 」
またもや大声で笑い出すカオス。どこがそんなに面白かったのかな…。
「そなた、葉月を愛しておるのだろう? しかし、残念じゃが、葉月はお前の所には帰っては来ぬ 」
「…どういう意味だ 」
「言葉の通りじゃよ、青年 」
…ファイを挑発して、からかっているようにしか見えない。
―――つまり、どんなことを言おうが、ファイが葉月ちゃんの体は絶対に傷つけないことをちゃんと分かって言っているのだ。
性悪な神様だね…ホントに…。
って、そうだ! 今はこんなのん気にしていられないんだった!!




