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「番いなんていらないし、関わりたくない……」 と言われました。そんな、抱き締められながら言われても……  作者: HARUHANA


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29/29

29.番いの印 第一幕*完*


「——リゼ」


 この姿を見ても、リゼは僕だと気付いてくれた。それが何よりも嬉しくて、ベッドに倒れ込むリゼの名前を呼んだ。


「この姿でも、お話しが出来るんですね」

「あぁ。リゼに気付いてもらえて嬉しかった」

「最初はビックリしましたけど……でも、その瞳は変わりませんから」


 仕事を置いてでも、ここに来れて良かった。


「あの……エイキ様の姿は、豹ですよね?」

「黒豹だ。王家は代々、豹の家系に属している。普段、この姿になることはないけど」

「どんな時に変わるんですか?」

「……して欲しい時」

「え?」

「毛繕い……して欲しい時とか……」


 当たり前のことが、今更恥ずかしい。番いだけに許す特別な行為であると共に、番いとのスキンシップでもある。


「私だけ……?」

「……リゼだけ」

「それじゃ、して欲しい時はいつでも言ってくださいね」

「それなら……リゼがしてほしい事は、隠さず言ってくれ。お互いに遠慮はなしだ」


 すると、何故かリゼの頬が急に赤らんだ。


「……リゼ? 何かあるなら言って」

「……キス……して欲しい、です」


 両手で顔を覆って、恥ずかしそうに言った。その姿とその願いを聞いて、ムズムズした僕は「リゼ、布団を僕に掛けて」とお願いした。


 言われるがまま僕の背中に布団を掛けた瞬間——


「これなら、キス出来るよ」


 黒豹から人の姿に戻ってみせた。布団を掛けてもらった理由は一つ。裸の姿で人に戻ってしまうから。布団を羽織って、手を伸ばした。


「リゼ、おいで」


 重ねた手をそっと引き寄せ、抱き締めた。僕だけじゃなく、リゼも布団越しに腰元へ手を回してくれてるのを感じる。あぁ……不本意だけど、ソイルが言う通り、発情なんて待たずもっと早くこうしていれば良かった。


 頬に触れ、柔らかな唇に指を這わせ……キスをする。


 発情の時の息苦しさなんてなくて、時々漏れるリゼの小さな声を拾いながら、ただひたすら唇を重ねた。


 熱に抗うこともせず……増していく香りに酔って、今まで埋められなかった隙間を少しずつ埋めるように……ゆっくり重なり合っていく——



 ***



「……っ、」


 少し痛みが残る下腹部を摩りながら、隣で寝息を立てるエイキ様を見つめた。整った王子様の寝顔を、こんな間近で……しかも互いに裸の状況じゃ、随分心臓に悪い。


 それでも、目元にかかる前髪を直そうと触れてみる。


「お疲れだったのに……」


 夜も遅くまでお仕事されてたのも知っている。こんなに気持ち良さそうに寝てしまうくらい疲れていたのに、会いにきてくれたことが今更ながら嬉しくなった。


 その時、下腹部にツキッとした違和感を感じて手を当てた。初めての行為なら痛みもあるだろうと、摩っていると、不意にエイキ様の温かい手が同じ場所に触れた。


「エイキ様?」

「……ごめん、寝てた」

「もう少し休んでも——」

「いや、愛しい番いについた印を見るのをすっかり忘れてた。痛む?」

「……少しだけ。印って、何のことですか?」


 すると、まだ明るい部屋で布団を剥がされ、慌てて隠せる場所を隠しながら「エイキ様!?」と叫んだ。


「……ここ、見てみて」


 座り込んで手で隠してた下腹部を、指差している。少しずつ手をズラして行くと、そこには黒豹のシルエットとその周囲を囲うように模様が浮かび上がっていた。


「リゼが僕の番で、僕以外を受け入れる事が出来なくなった証だ。王家に迎え入れられる番いには、より強固な守りとして印が刻まれることになってる」

「私の……印」

「そんなに大きなものではないけど……嫌だった?」


 ふるふると首を横に振った。嫌なわけない。それどころか、時々ツキッと感じるこの痛みさえ嬉しくて、エイキ様に抱きついた。


「嫌どころか、嬉しくて幸せで……ありがとうございます」

「誰に見られることもない、二人だけの印だ。痛みがあれば教えてくれ。すぐに痛み止めを処方するから」

「はい」

「身体も、大丈夫?」

「……大丈夫です。それより……」

「それより?」

「恥ずかしいので、そろそろ服を着ても良いですか?」

「…………そうだな」


 改めて、陽が高い日中の出来事に苦笑いしながら服を着た。もちろん、黒豹の姿でここに来たエイキ様の服はなくて……私が着替えた後に、また黒豹の姿で窓から帰って行った。


「この痛みが……嬉しい……」


 最初の出会いは、最悪だった。私を番いだと認識しても、その手を離して「番いはいらない」と言った。


 番いが存在するせいで苦しんでたと知った時は、私なんていない方が良い……そう落ち込んだ日もあった。

 

 生い立ちに踏み込んだせいで、もしかしたら彼の心を抉ってしまったことも、きっとある。そんな私を責めるでもなく、正しい道だったと感謝した。


 様々な思いが交差して、互いに心を開くまでにだいぶ時間が掛かったけど、今こうして笑い合って一緒に歩んでいけるのが何よりも幸せだ。


「エイキ様を幸せにしたいな……」


 きっと、私たちなら大丈夫。二人なら、困難も越えていけるはず……そうでしょ? まだ始まったばかりの私たちの物語は、こんなところで終わらない——


ーENDー


第一幕完結となります。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!気分次第にはなりますが、第二章が準備でき次第、更新させて頂きます。

お気に召した方は、ぜひブックマークを宜しくお願いします!

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