第12話:次の現場へ
空は、どこまでも高く、澄み渡っていた。
かつての「ゴミ溜めの離宮」があった場所には、
今や大陸最新鋭の魔導演算センターがそびえ立っている。
私はその屋上テラスで、セバスチャンが淹れた
最後のアールグレイを楽しんでいた。
「……お嬢様。出発の準備が整いました」
セバスチャンが、いつもの慇懃な態度で一礼する。
「お父様への挨拶は済んだの?」
「はい。大公閣下は『娘が世界を買い取るというなら、
私はその物流網の荷受け人になろう』と、大変意気込んでおられました。」
私は、手元の魔導端末を開いた。
スライド第12枚目。
これが、この物語の「最終決算」だ。
**【ブルーム王国・清算結了報告書】**
●旧王族・貴族の再就職率:100%(※主に最北端の採掘場)
●国家負債:**完済**
●国民満足度(ホワイト経営導入後):88%
(※残り12%は改善課題として次期計画に組み込み済み)
私は、端末を閉じた。
すると、背後から聞き慣れた、情けない絶叫が響いてきた。
「ま、待て! エリス! 私を置いていくな!
この藁だらけの生活はもう嫌だぁぁ!」
ボロボロの作業着を着たルカス氏が、
衛兵に引きずられながら叫んでいる。
かつての婚約者の姿に、私は一度だけ振り返った。
「ルカス氏。
貴方の現在の『資産価値』、まだマイナスのままですわよ。
まずはその藁を運んで、1G分の付加価値を生み出すことから
始めてくださいませ。」
「ひ、ひぃぃぃ……!」
彼はそのまま、地平線の彼方へと消えていった。
清算は、これですべて完了だ。
「……さて。セバスチャン。次のターゲットは決まっている?」
「もちろんでございます、お嬢様。
西の大陸の帝国が、過剰な軍拡による財政難らしく。
非常にやりがいのある状況になっております。」
セバスチャンの瞳に、凶悪なまでの有能さが宿る。
「素晴らしいわ。……じゃあ、行きましょうか」
数字は、嘘をつかない。
世界がどれほど不条理でも、帳簿の前ではすべてが暴かれる。
そして私は、その数字という名の刃を手に、
この世界のすべてを正しく「最適化」し続ける。
それが、私の仕事だ。
空は、どこまでも青かった。
**【完】**
最後までご覧頂き、本当にありがとうございました。
楽しんで頂けたでしょうか?
また、次のお話しでお会いしましょう(*^-^*)




