第44話_子供武闘大会に参加
昼食を早めに取ってから、プレシャスと一緒にハンターギルドへ向かった。子供武闘大会の場所はハンターギルドの裏手にある訓練場だった。早めの時間に着いたけれど、すでに何名かの子供たちは青色のローブを着ていた。
「子供たちが並んでいる場所が受付みたいで、マイリンさんが担当しているのね」
最後尾にいる子供の後ろへ並んでいると、すぐに順番が回ってきた。
「こんにちは、アイさん。子供武闘大会への参加ですね」
「本当に私が参加しても平気なの?」
周囲の子供たちは、ハンターとは無関係な何処にでもいる子供にみえた。私はハンターになったばかりだけれど魔物討伐の経験がある。
「平気よ。この青いローブを着て待っていてください。順番になりましたら名前を呼びますので、試合エリアに上がってください」
「ありがとう。怪我しない程度に頑張るね」
「アイさんの魔法を楽しみにしています」
受付をあとにしてローブを着てから周囲を見渡すと、リリスールさんの姿を発見した。まだ時間はありそうだったので、リリスールさんの元へ向かった。
「リリスールさんは見学に来たの?」
「アイちゃんかい、たしか参加するようだけれど楽しみにしているさ。あたいは見学よりも回復要員として待機しているよ」
「リリスールさんは回復魔法を使えたから頼まれたのね」
「その通りさ。審判は副ギルドマスターがするから、危険になる前で試合を止めるけれど、何が起こるか分からないからだよ」
リリスールさんの話を聞きながら視線を移動させると、副ギルドマスターであるサンサヌさんの姿があった。サンサヌさんの近くには神殿の服装を着ている人たちもいたので、回復ができるハンター以外に神官へも回復役をお願いしたみたい。
しばらくリリスールさんと話していると、サンサヌさんが地面よりも少し高くなっている試合エリアへと上がった。
「お待たせした。これより子供武闘大会を始める。試合は勝ち抜き戦で行って、勝敗は相手が着ているローブの色を黄色にすれば勝ちだ。武器や魔法など攻撃手段は問わないが、子供らしく楽しく参加してほしい」
サンサヌさんの説明を聞いてから、ローブの色をリリスールさんへ質問する。
最初は青色でダメージを受けると緑色になってから黄色になる。さらにダメージを受けるとオレンジ色になって、ダメージ吸収の限界がくると赤色になるみたい。試合は安全のために限界前の黄色で止めていた。
サンサヌさんの説明が終わると同時に、マイリンさんが試合する子供たちの名前を呼んだ。ふたりの子供が試合エリアに上がると、サンサヌさんが試合開始の合図でふたりの子供が接近する。
剣同士がぶつかると周囲から応援の声が上がる。魔物退治を経験したからか、ふたりの動きは遅く感じた。これなら新しく作った魔法は使わずに、剣と盾の魔法で充分とも感じた。弓などの相手のみ攻撃魔法を使えばよさそう。
2試合が終わって、3試合目で名前が呼ばれた。
「アイ様、頑張ってください」
「お祭りの延長と思って、楽しんでおくれ」
プレシャスとリリスールさんが応援してくれた。
「期待していてね」
試合エリアに上がると対戦相手は、私よりも大柄な男の子で、両手で剣を持っていた。私は魔法で剣と盾を呼び出すため、この時点では何ももっていない。私が魔法を使うと知っているからか、サンサヌさんからは何の質問もなかった。
私と相手がお辞儀をすると、サンサヌさんの右手があがる。
「それでは始め」
サンサヌさんの右手がさがったので、すぐさま魔法を唱えた。
「星剣ルビー、矢車サファイア」
剣と盾を呼び出すと、周囲から驚きの声が上がった。サンサヌさんも驚いているみたいで、相手の男の子は呆然と立ち尽くしている。すぐにサンサヌさんは状況を把握して声をかける。
「試合は始まっているから、両者とも攻撃を始めてくれ」
我に返った相手が大きく剣を構えて、私へ向かってくる。上空から振りおわした剣を私は盾で防ぎながら、剣を相手の胴体へ当てた。続けざまに何度か剣を当てると相手のローブが黄色へと変わった。
「そこまでだ。勝者はアイ」
想定外の魔法と攻撃にみえたのか周囲は静まりかえっていたけれど、誰かが拍手すると会場内に拍手がわいて歓声も起こった。
私はお辞儀をしてから試合エリアを降りて、プレシャスの元へ戻る。
「アイ様、すばらしかったです」
「あたいはおどろいたよ。ライマインがすごい魔法と話した理由が分かったさ」
「初戦だから緊張したけれど、ぶじに相手の動きに合わせて対処できてよかった」
「この調子なら優勝も可能だよ」
プレシャスもリリスールさんも自分事のように喜んでくれた。
その後も剣と盾だけで順調に勝ち進んで、いよいよ決勝戦へとなった。マイリンさんに名前を呼ばれて試合エリアへ上がる。周囲の人たちも何度も私の魔法を見たからか、いまは普通に応援してくれた。
対戦相手は同じ背丈の男の子で、今までの試合を見ていると短剣の二刀流で、すばやい動きから器用に相手へ攻撃していた。受けるのも上手で、どの試合でもローブの色が青色から変わらなかった。
お辞儀が終わると、サンサヌさんの右手があがる。
「それでは始め」
相手はすばやいので、うしろに下がりながら魔法を唱える。
「星剣ルビー、矢車サファイア」
剣と盾を構えたと同時に、相手の短剣が迫ってくる。いままでの相手に比べると明らかに格上だけれど、あまり脅威には感じない。盾で防ぎながら剣を振るったけれども、相手は剣を器用に避けたので、剣を当てることができなかった。
相手が距離を取った瞬間、違う魔法を唱えた。
「紅球ルビー」
真っ赤な塊が相手に向かっていく。もちろん危険のないように炎や熱さはないと念じておいた。相手は回避しようとするが、当たるように念じた魔法は直線以外の動きを見せて、相手の胴体へとぶつかった。
一瞬で相手のローブが黄色へと変わる。
周囲からは驚きの声と賛美の声が入り交じっていた。
「そこまでだ。勝者はアイ」
相手はくやしそうにしながらもお辞儀して、私もお辞儀してから試合エリアを降りようとした。
「アイ、そのまま試合エリアに残ってくれ。特別試合を始める」
サンサヌさんの声が背後から聞こえた。




