実戦
ゼロの大陸
ムーンブルク軍基地から2キロ程離れた寂れた草原。
「コホン…前にも言ったが今日は実戦じゃ、餓者軍と戦ってもらうぞい。」
ぽん爺が杖をゆき達に向けて説明をする。
「はい!!??あの…僕はまだ小人交響楽団しか呼べないって前に言ったのに…」
コーリーは泣きそうになる。
「ぽん爺さん、春香は悪魔と契約したけど私とコーリー君は何も教わってないです!実戦なんて無理よ!」
ゆきも必死で訴える。
「ふぇふぇふぇふぇ!甘ったれるではない。まずは肌で感じるのじゃ。」
ぽん爺は意地悪そうに笑った。
「鬼!パワハラ!」
「死んだら化けて出ますからね!ポンモール セビロさん!」
「ふぇふぇふぇふぇ!!いくぞドルテイン!!」
ぽん爺の杖が光って四方の地面から骸骨兵がボコボコと4体出てくる。
「うわあ!!本物の餓者軍だあ!!」
コーリーが悲鳴をあげる。
「ふぇふぇふぇ、ワシの魔力を骸骨兵に変化させたのじゃ。強さは本物と同じ、さあ!3人で何とかしてみい!」
骸骨兵はそれぞれ大きな剣を持ち、ジリジリと3人に近づいてくる。
「ぽん爺さん!お願い!こんなの無理よ!」
ゆきは涙目になりながらコーリーと春香の前に出て手を広げて守ろうとする。
コーリーはガタガタと震えてしゃがみこんでしまう。
「餓者軍の中でも一番の下っ端兵じゃ、何かせんと殺られてしまうぞい!」
ぽん爺の容赦ない激が飛ぶ。
ぽん爺の作り出した骸骨兵はドルテインによって作り出された偽物とはいえ攻撃は本物である。まともに攻撃を受ければ死んでしまう。ぽん爺の目的は言葉通り「実戦」の空気を3人に肌で感じてもらうことであり、餓者軍との戦いにおいて必須科目。勝敗を目的としていない。なので確実な保険をかけてあった。
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ぽん爺達の居る草原から100メートル程離れた木の上に銃を構える人影が1つ、網走 瞬である。瞬の任務は「3人がヤバそうになったら助ける」という言葉ではとても軽いが、とんでもなく難易度の高いミッションであり責任は重大だった。
(ったく!結構無茶苦茶言うよな!あの爺さん!)
心で虚しく叫ぶ瞬は集中力を高めて骸骨兵をロックオンしている。
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骸骨兵達はゆき達を取り囲む様にジリジリと近づいてくる。
(このままじゃ3人共殺られちゃう!)
「春香!コーリー君!私が隙を作るから2人で逃げて!ソッピー!」
半泣きのゆきの前に光の渦が現れ、中から草鳥のソッピーが飛び出してくる。
キュー!キュー!
ゆきは指で軌道を描く、それに合わせてソッピーが骸骨兵の顔スレスレを飛び回る。
骸骨兵は思わずソッピーに剣を振るうが高速で飛び回るソッピーはヒラリと躱す。骸骨兵は飛び回るソッピーに攻撃を繰り返す。
「今!!」
ゆきが春香とコーリーに声を掛ける。
「うわあああ!!」
コーリーはソッピーに夢中になる骸骨兵の間を走り抜ける。
「春香も早く!」
ゆきはソッピーの操作で必死だ。
しかし春香はボーッと立ったまま動かない。
「春香っ!!」
ゆきが叫ぶ。
「…酷い…」
「えっ!?」
春香の言葉が理解出来ないゆきは思わずソッピーの指示を間違える。
「あっ!!」
ソッピーは混乱し骸骨兵からはなれてしまう。すぐさまに骸骨兵がゆきと春香に襲いかかる。
骸骨兵が剣を振り上げる。
ゆきは、春香の前に出て手を広げ目をつぶる。
「ここまでかな…」
瞬が骸骨兵に銃を撃とうとしたその時だった。
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(あれ?私死んじゃったのかな?春香は大丈夫だったかな?)
静寂の中、目を閉じていたゆきはゆっくりと目を開く。
「!?」
ゆきは驚愕した。目の前に骸骨兵が剣を振りかぶったまま時が止まった様に固まっている。他の3体の骸骨兵も同様に固まって動いていないのだ。
キュー!キュー!
ゆきはソッピーの鳴き声に我に返る、後ろには怒りをあらわにした春香が右手を挙げて立っていた。
「これは、一体…」
一番驚いていたのはポンモール セビロだった。瞬の攻撃が飛んできて骸骨兵が吹き飛ぶと想定していた矢先に骸骨兵が突然固められたのだ。
驚いて居たのはもう1人。
「どーなってんだ?」
瞬も遠くから骸骨兵の様子に首を傾げる。
「春香??」
ゆきが春香に声を掛ける。
春香がゆきの肩に優しく手をあて、入れ替わる様に前に出る。
「私、怒ったからね…ぽん爺さん。」




