第88話 回想中⑥ (ゴーレム娘の家族団欒)
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さて、牛の解体にそれなりの時間を費やしたため、外はそろそろ暗くなってきました。つまり、いい加減 料理を作り始めないと、[アイテムボックス]から出来合いの物が出てくることになります。
さすがにそれはいけない。『私も作ります』って言った手前、ちゃんと作り立てを食べてもらいたい。
厨房に入ると、言われるままに材料を取り出し、
「《統括指揮》」
オズの《統括指揮》の効果で、全員にオズの料理関連スキルを借り受ける。
「…………改めて思うけど、便利なスキルよね、コレ」
「同感です」
隣に立つお義母さんから上がった 呆れたような声に同意を示す。
《統括指揮》の効果は、『己の指揮下の者に対して、己のスキルの使用権限を与える』である。
『オズの指揮下に入る』の条件があるが、本来使用できないスキルを使用できるようになるのだ。さすがに特殊スキルや《地脈直結》のような特別なスキルは使用できないが、料理関連スキルは問題なく使用できる。
なお、条件である『オズの指揮下に入る』については、『口頭での宣言』と『叛意を持たないこと』が絶対条件である。
なので…………
「それじゃ、お義母さまは予定通りローストビーフを、お姉ちゃんはパンと副菜を、私はスープを作ります。ローストビーフの味が濃いので、副菜はマッシュポテト、スープはカボチャのポタージュ。あっさり目でいきましょう」
「「はい!!」」
と、このように態度でも従属感を出すと効果的です。
オズも初めの頃は慣れなくて、指示もしどろもどろだったけど、最近は板に付いてきた。……………………諦めたとも言う。
さて、私の担当のうち、パンは[アイテムボックス]内に大量に保管されているのであるが、先程言った通りこれをそのまま出すわけにも
「お姉ちゃん。パンは作っておいたものを使ってくださいね」
「…………………………………………はい」
オズに先手を打たれてしまった……
こうなると私の担当は実質、マッシュポテトだけになるのだが、実はというかなんというか、やはりすでに保管されている。だが、パンは作っておいたものを使うとなると、こちらはちゃんとジャガイモから作ら
「お姉ちゃん。マッシュポテトも作っておいたものを使ってくださいね」
「オズーーーー!?お姉ちゃんの料理そんなにダメ!?」
料理させてもらえない…………しくしくしくしく……
確かにこのメンバーだと、私が一番料理の腕が低いのだが、練習しないと上手にならないよ……
ほら見て。オズなんか既に煮込みの段階に入ってるし、お義母さんも丁度 下処理した牛肉をオーブンに入れたところだ。
何も出来てないの、私だけ!!
「え~と……ルーシアナ、なるべく傷付けないように言おうと思うんだけど…………………………………………あ、ダメだ。どう言っても傷付く」
『シンプルに『足手まとい』でいいんじゃないか?』
「…………………………………………」
『……………………言い過ぎました……』
絶対泣かす。
もう、最近は朝食も盛り付けくらいしかさせてもらってないし、スイーツなんかも二人が大量生産するので、私の価値、完全に倉庫ですよね。
調理台の下に潜り込んでいじけていると、お義母さんがやってきて、両手で抱えて持ち上げられた。
「ほらほら、いじけてないの。パンだって、そのまま出さないで一手間加えていいし、マッシュポテトだって野菜と組み合わせればいいでしょ」
「どっちも料理と言えるのかなぁ……」
「盛り付けも料理の一部よ (キリッ)」
「誤魔化しにかかってますよね!?」
……………………誤魔化されることにしました。
だって、もうそろそろ帰ってくるし。
あ、ちなみにパンはガーリックトーストにして、マッシュポテトはポテトサラダ風にしました。
出来た料理を食卓に並べ、『冷めないように保温するべきか……?』と考え始めたところで、丁度ギルド長とセレスが帰ってきた。
狙ったかのようなタイミング…………まさか料理を並べ終わるのを待っていたわけでもないと思うが、ちょっと怪しい…………と思ったけど、息が上がっているのを見て『単純に急いで帰ってきただけだな』と、思い直す。
「「「「おかえりなさ~い」」」」
「「ただいま」」
挨拶を返す頃には、すでに呼吸は整っていたし、よく見れば汗のひとつもかいていなかった。
元Sランクと元Aランクの実力が垣間見えたが、こんなとこで見せなくても……
「ローストビーフか。旨そうだな」
「わぁ~い、肉~♪」
食卓の上を見てさっそく席に着こうとする二人を、お義母さんが差し止める。
「まずは手を洗ってきなさい」
「「え~……」」
「『え~』じゃない」
「「ぶーぶー」」
「ルーシアナちゃん。豚が二匹いるから首落として」
「食前の運動にはなりますかねぇ……」
「「洗ってきます!!」」
[アイテムボックス]から所々錆び付いた極厚の鉈を取り出して言うと、二人とも慌てて食堂を出ていった。
どうせ洗わなきゃ食べさせてもらえないのに、何故ゴネるのか。
「え、え~と…………お姉ちゃん。それ、何ですか?」
「これ?薪とか固いものを割るための鉈」
「…………………………………………ソーナンダー…………」
どこか悟ったような目をして、視線を逸らすオズ。
いえ、オズは勘違いしているようですが、コレはホントに薪くらいしか割ってませんよ?薪『とか』の『とか』は、枝とかそういうものですし。
『見た目のインパクトがな……』
そのために出したのだから仕方無い。
実はコレおじいちゃんの創った魔道具で、植物以外に攻撃力を発揮しない、安全な鉈だったりしますが、まぁ分からないよね。子供の薪割りに最適です。…………『子供に薪割りさすな』という意見は聞きません。
[アイテムボックス]に鉈を仕舞い、席に着いて待とうとすると、
「ルーシアナちゃんも手を洗って来てね?」
「…………………………………………」
「鉈、屋外用でしょう?汚かったものね」
「…………………………………………了解です」
ギルド長たちのバカ……
途中で二人とすれ違って、不思議そうな顔をされたよ。
「「いただきますぅまい!!!!」」
「早いよ!!ちゃんと味わった!?」
「『食事中に騒ぐな』とは言わないけど、限度は見極めてね?」
「オズ~。ちょっとパン小さくしてくれない?」
「はい。…………こんなもんでどうでしょう?」
騒がしい夕食が始まった。
ギルド長とセレスはガーリックトーストにローストビーフや付け合わせを乗せて、サンドイッチのようにして、一口食べては大仰に騒いでいる。すごい勢いです。もうひとつめが無くなりました。
お義母さんはそれを見て少し窘めつつ、まずはカボチャのポタージュから手をつけ、満足そうに頷いている。オズの料理の腕はすでにお義母さんに匹敵します。ちなみにお義母さんの料理の腕は、グレイス君並にあると思っているので、つまりこの家 料理のレベルが高いんです。
ナツナツはまずガーリックトーストをそのまま頬張ろうとして、しかし一口かじったところで断念し、オズに小さくするようお願いしていた。言ってはなんだが、ナツナツの顔と同じくらいの大きさがあるのだから、見ただけで分かりそうなものなんだけど、ナツナツは必ず一度はそのままいこうとします。何故でしょうね?
オズは甲斐甲斐しくも、ナツナツに丁度良いサイズに切り分けると、続いてローストビーフやマッシュポテトを乗せて、カナッペように並べてあげていた。テーブルナイフにも問題なく《前行程》の《包丁技》は発動しており、断面もスパッと綺麗です。
そして私は…………なんというか、二人の反応が気になって、リスのようにガーリックトーストを齧っています。
う~ん…………改めて思うが、やっぱり『ガーリックバターを塗って焼いただけ』と『マッシュポテトに野菜を混ぜただけ』で、『私も作りましたよ』と言うには、年齢的にちょっと厳しいものがある。これが一桁歳の子供なら十分許容範囲というか、『よく頑張ったね~』って言えるのだけど。
それに二人に用意された料理は、その…………
ま、まぁ出来れば『誰が何を作ったんだ?』みたいな話になる前に、終わってくれると助かりますね……
「どうかしら?美味しい?」
「当然だな」
「妹たちが作ってくれたとなれば、美味しさ倍増しよね~♪」
…………………………………………え~と…………ですね…………
「そうね~♪今日は二人とも手伝ってくれたから」
「うむ。今日は楽しみで仕事が捗った。万一にも残業などしたくなかったからな」
「それはいつもしろ。ビーフの味がしっかりしてて、とっても美味しいし、ポタージュもあっさりしてていくらでも入りそう」
「なるほど、なるほど」
お義母さんは満足そうに頷くと、妙に真面目くさった表情になり言った。
「ではここで問題です」
「ジャジャン♪」
「「は?」」
お義母さんの唐突な発言に、申し合わせていたようにオズが効果音を付けた。
ギルド長とセレスは、突然のことに目を丸くしている。私もびっくりしている。
「ルーシアナちゃんとオズちゃんが作った料理はどれでしょう?正解しないと、悲しみます。二人が」
お・義・母・さ・ん!?
まさかのどストレート危険球。急所狙いの一投だ。
「「…………………………………………」」
「先生!!その質問は徒に悲劇を生むだけです!!」
「先生じゃないのでスルーします」
「お義母さん!!お義母さま!!ママぁ!!」
「良き♪…………では、回答は?」
「鬼か!!!!」
ダメだ。見るからに楽しそうな顔をしていて、撤回してくれる気配がない。
「「………………………………………… (だらだらだらだら)」」
あと、二人の冷や汗すごい。
「いやー、タチアナぁ。二人を侮りすぎだよぉ~。『何を作ったか』どころか、『どの行程を手伝ったか』くらい分かるってぇ~ (ニヤニヤニヤニヤ)」
ナツナツの煽りがえげつない……
「(もぐもぐもぐもぐ……) 教わったレシピ通りに作ったはずですけど、そういうの分かるものなんですか?同じ味になると思いますけど」
オズが援護のためか、それとも単純に疑問に思ったのか、助け舟を出す。
「そ」
「当然よ~♪同じレシピでも、人によって個性が出るものなの。作り手の嗜好とかその日の体調とか。オズちゃんは、レシピ通りキッチリ作るからそういう変化が少ない代わりに、食材の善し悪しがハッキリ出るわよね。食材に合わせてレシピを調整出来れば、さらに上手になれるわよ」
「なるほど」
助け舟は沈没した……危険球が船首から船尾に一直線 (イメージ) の貫通軌道だった。
ギルド長が口を『そ』の形にしたまま固まっている。どうすることも出来ない早技でした。
こ、こうなったら……
「ギル」
「ルーシアナ~♪オズが作ってくれた~♪食べて♡」
「むぐっ」
最終手段というか、ルールブレイク的に正解をバラしてしまおうと口を開くと、私にとっては一口大になった マッシュポテト オン ザ ガーリックトースト が押し込められた。
ナツナツ~~~~~~~~!!!!
もちろん偶然ではないことは、お義母さん以上に『楽しそう』と書かれた表情から容易に想像できる…………
「あら、ダメよ、ルーシアナちゃん。答えを教えるのはルール違反だわ。ナツナツちゃんとゆっくり食べててね」
「ほらほら、ルーシアナ~。こっちも美味しいよ♪」
「お姉ちゃんが食べるなら、野菜を多目にしましょうか」
椀子蕎麦の如く、飲み込む度に次の料理が押し込まれるのは、『ゆっくり』ではない…………
あと、オズも二人が正解出来るか興味があるご様子。つまり二人とも頑張れ。
諦めて二人に『任せた』の意味を込めて手をヒラヒラと振り、食事に専念することにした。
いよいよ追い詰められたギルド長たちが、僅かでもヒントを得ようと質問を繰り返すが、『そうね。素晴らしい包丁捌きよ。解体の』とか『基礎がしっかりしてるから、目分量でも大丈夫なのよ。セレスちゃんと違って』とか、明らかに質問の意図からズレた回答を続け翻弄している。
さすがにウソは言わないが、『正解をバラすのはルール違反』と言ったように、何かしらルールがあるのだろう。『ルールを共有しないのはルール違反じゃないの?』とは思うけど。
ところで、なんとなく流れ的にギルド長から回答する感じになってるけど、セレスはまた上手いこと逃げたね……
「ねぇ、ルーシアナ」
「ふご?」
「うん。食べてからでいいわ。パンが無くなったから追加が欲しいんだけど」
「ふ?…………………… (もぐもぐ) ふはぁ。いいよ。また同じので良い?いくつ?」
「同じでお願い。四つね」
「……………………まぁ、良いけど」
太っても知らんぜよ……
セレスからのリクエストに応えて、ガーリックトーストの追加を用意する。
ガーリックバターはまだ残っているので、新しくパンを取り出し、適当なサイズに切って塗る。
通常はオーブンかフライパンで焼くらしいのだが、私は面倒なので網に乗せて《ヒート・ウェブ》である。
忘れてるかも知れないが、対象範囲内の気温を上げるスキルだ。要するにオーブンの代わりになる。料理に最適。揚げ物にこれを使うと、油を使わないのであっさり美味しく出来上がります。
ものの数秒で表面が焦げ付き始め、ガーリックバターの香ばしい薫りが周囲に広がった。頭に乗ってやって来たナツナツからも、じゅるり……と可愛らしくない音が鳴ったので、ナツナツの分も追加してあげることにする。
いえ、私に椀子パンしたせいで、自分の分が少なくなったせいであって、余計に食べてる訳では…………あれ?だとすると、私がいつもより余分に食べることになるのでは?
……………………よくよく思い出してみると、ナツナツの分を私に椀子パンしながら、私の分はナツナツが食べてたので、やっぱり余計に食べてることになりますね。太らないらしいから、まぁいいけど。
出来立てのガーリックトーストをお皿に重ねてセレスに渡すと、何故かギルド長が半分持っていった。
セレスが気にしてないようなので、特に言うことはないが、行儀が悪いですよ?
二人は出来立てのガーリックトーストと冷め始めたそれを交互に口にすると、ニヤリ……と擬音が付きそうな笑みを浮かべる。
「ふっふっふっ…………分かったぞ……」
「えぇ……そうね……」
「いいから、ほれ。はよ 言いなさい」
自分から問題を起こしておいて、早くも飽き始めている……三方一両損ならぬ、三方無駄骨……この試練を越えても、得られるものは何もないのだ……
だが、ギルド長はそれにメゲずに口を開く。
「この料理を作ったのは……」
ごくり……
「ダラララララララララ……」
…………オズさん、さっきから楽器の口マネ上手だね……弥が上にも 盛り上がって参ります。二人にとって良いことかどうかは分かりませんが。
「ジャン♪」
「ローストビーフがタチアナ、ポタージュがオズリア、残りがルーシアナだ。そうだろ!?」
「ふむ。その根拠は?」
不安を誤魔化すように力一杯答えたギルド長に対し、お義母さんはどこぞのフィクサーのように顔の前に手を組んで根拠を問うた。
「ふっ…………愛だ」
「なるほど。つまり、外した場合 愛はなかった、と」
「……………………では説明しよう」
あ、無かったことにした。
「まず前提の確認だが、今日の夕食は大きく分けて、『ローストビーフ』『カボチャのポタージュ』『ガーリックトースト』『マッシュポテト』の四つだ。
この内『ローストビーフ』と『カボチャのポタージュ』は、作業行程から考えても一人一品だろう。となると、残りの『ガーリックトーストとマッシュポテト』がまとめてもう一人の担当と考えるのが普通だな。
次に注目するのは、ルーシアナがこの話題を嫌がったことだ。
嫌がる理由としては、まぁ恥ずかしいからだろうが、しっかり一品作っていれば、失敗したとしてもこのような反応はしないだろう。となれば、考えられるのは、大部分を出来合いのものなどで省略したか、大部分を手伝ってもらったか。
そこで先程、追加でガーリックトーストを作ってもらったが、それと最初に用意されていたものは同じ味、同じ食感だった。
ルーシアナは料理をする際、調理行程を魔法で代用する方法を多用するから、同じ料理でも特徴が出る。今回のガーリックトーストは、魔法で一気に加熱して焼き上げているため、外側はサクッとしており、中からは染み込んだガーリックバターがじゅわっと溢れる食感に仕上がっている。
故にルーシアナの担当は、『ガーリックトーストとマッシュポテト』だ。
続いてオズリアだが、全体的な料理の腕はすでにルーシアナを大きく上回っているが、先程タチアナに言われた通り、食材の状態に合わせてレシピを調整するのは、まだ未熟だ。
となれば、理想とする料理の味に対しズレの大きい味付けをしている方が、オズリアが作った料理、と言える。
ローストビーフは、肉の旨みが強く、味付けもそれを邪魔せず、かつ 引き立てるようなものとなっていた。
カボチャのポタージュは、ローストビーフの味が濃いのであっさりめに仕上げているが、それにしてもあっさりし過ぎているきらいがあった。
恐らく、タチアナがレシピを考えた際に想定したカボチャよりも品質が良くないのだろう。そのせいで、本来カボチャが担うべき味が足りないのだ。
よって、『カボチャのポタージュ』を作ったのは、オズリアだ。
タチアナは『ローストビーフ』だな」
一息に喋ったギルド長は、『どうだ』という風に満足そうに胸を張った。
「あら…………私の作った料理は、消去法じゃないと分からなかった?」
「いや、最初に当たりを付けたのは逆の順だ。いつも通りの食材で、いつも通りの調理法で作っていれば、タチアナの料理を間違えるはずもあるまい」
……………………惚気やがった!!
「なるほど」
スルーはやめたげて。
「セレスちゃんは?」
ギルド長の惚気を無表情でスルーしたお義母さんは、そのままセレスに問い掛ける。
「答えるまでもないわね」
……………………………………………………………………………………あれ?どっち!?
目を瞑って頷くものの、明確な答えを口にしないセレス…………
石橋は他人を渡らせて 自分は渡らない女、セレス・グランディア。
「答えなさい?」
「…………………………………………おんなじです」
それを渡らせる女、タチアナ・グランディア。
なお、ギルド長はとりあえず渡る。石橋が崩れてもその場の閃きで生き残るからだ。ケガをしないとは言わない。
それはさておき、
「結っ果 発表~~~~」
「ジャジャン♪」
「さぁ、ついにやって来ました、運命の時。果たしてギルド長たちは見事正解して『お義父さん♡』の栄誉は得られるのでしょうか!?ルーシアナさんが先程から顔を覆っているのは、惚気に赤面したためか、答えを聞いて嘆いたためか!?」
両方だよ……
「さぁ、運命や如何に!!」
ナツナツがパーティーの司会者の如く場を盛り上げるが、結果を知る私は閉じた視界の中で時を待つしかない。賽は投げられてしまったのだ。
…………
……………………
………………………………
…………………………………………
長く続く沈黙が胃に痛い……
ギルド長は変わらず自信満々のようだが、セレスは不安にオロオロし始めている…………普段の経験の差が出ますね。
「正解は……」
お義母さんが『グググ…………ッ!!』とタメてクライマックスを引っ張る。早くして。
「残念!!!!外れで~~す!!」
「…………………………………………」
「ウソだーーーー!!!!」
うん。私の反応から予想してたかもしれませんが、外れなんです……
お義母さんの答えを聞いてセレスが絶叫しながら勢いよく立ち上がり、ギルド長は
「…………………………………………」
燃え尽きていた。真っ白にね……
『おい、心音が小さくなっていくが、これもネタか?』
「わーーーー!!!!ギルド長起きろーーーー!!!!」
「はっ!?……ルーシアナたちの料理を当てられず、冷めた目で『カスが……』と言われる夢を見た……」
「「「「カスが……」」」」
「ぐふ……」
「やめんかあんたらーーーー!!!!」
ギルド長の言葉を聞いたナツナツ、オズ、お義母さん、セレスが申し合わせたように言葉のナイフを放った。心の臓に四方からグッサリだよ。
隣のセレスが全くフォローする気配が見られないので、私が頬を叩いて目覚めさせた。
一気に憔悴したギルド長が、なんとか口を開く。
「せ、正解を聞こうか……」
「全部私」
「おふ」
「バ、バカな……確かにルーシアナの調理法の特徴が出ていたし、味付けも微妙におかしかったぞ……」
「そうでしょうね」
そうです。ギルド長とセレス『の』料理は、お義母さんが作ったものなのでした……
「どういうことなの……」
「ルーシアナちゃんともっと仲良くなりたいのは、貴方たちだけではないのよ?」
「だから料理を一緒にしたのだろう?」
「だってルーシアナちゃん、料理へ……………………独特なんだもの」
「下手って言おうとしたでしょ今!!余計傷付くわ!!」
飛び火した!!!!『あんたらのレベルが高過ぎるんだよ!!』と言いたい。
「いえ、確かに『下手』というより『独特』なのよね。普通の調理器具があるのに、わざわざ魔法で調理するし」
「だってその方が楽ですし」
「普通は逆なんだけどね」
「タチアナ。それは言っても仕方ない。そもそもじいさんが、なんでもかんでも魔法でなんとかしようとするタイプだったから、それ用の術式でも造ってあるんだろう」
まぁ、確かにその通り。
あの家は道具の類が極端に少ない。『物を買う前に、別のもので代用できないか、よく考えなさい』的なことはよく言われた。
そして魔法は術式を造るまでは面倒だが、造ってしまえば使う時はルーティーンだし、汎用性は高い。
結果としてあの家には、自作の道具と術式が溢れることになる。
「でもそれがなに?ルーシアナが料理下手だからお母さんが教えたんじゃないの?」
……………………セレス きさま。独特と言って。
「それはたまにやってるから。今日は私がルーシアナちゃんに調理法を教えてもらってたのよ」
「「…………………………………………ずるい」」
そうです。ギルド長とセレスのガーリックトーストとマッシュポテトは、私が教えた魔法でお義母さんが作ったものです。私と同じような特徴が出るのは当然ですね。
「だ、だがポタージュの方は……」
「ちょっと味付けがおかしかったわよ!?」
「でしょうね。ルーシアナちゃんの調理法を使ったのと、食糧庫から発掘した保存食用のカボチャを使ったからでしょうね」
「「在庫処分!!」」
《フル・スキャン》で調べた結果、『品質:悪い。食用可』と出たのが運の尽きだった。カボチャは保存に向くとはいえ、長過ぎたね。流石に。
ちなみに作ったはいいものの あんまり美味しくなかったので、二人の分を除きリメイク用に[アイテムボックス]に保管しました。その内グラタンか何かにリメイクされます。
二人ともガックリと力無く項垂れている……
「くそぅ…………無駄に書類の山を片付けてしまった……何のために頑張ったのだ…………」
仕事だからだと思います。
「ポタージュ、『いくらでも入りそう』とか言っちゃった…………死ねる……」
聞いてたこっちも恥ずかしかったと言いたい。
そんな二人を見兼ねたのか、オズが自分の作ったカボチャのポタージュを装い直して出してあげた。やさし
「どうぞ。味付けがおかしいポタージュですが」
オズの好感度が落ちてるーーーー!!!!
慌てて重ねる二人の言い訳をオズが淡々と聞き流し、お義母さんとナツナツがしてやったりと大笑いしていた。ひでぇ。
なお、オズもホントに怒っているわけでも気を悪くしているわけでもなく、悪ノリしているだけですので、お気になさらず。
「お姉ちゃん。私はそろそろ眠いです。お風呂に行きましょう」
「あ、うん。そうね。ごちそうさまでした」
「「「ごちそうさまでした~」」」
「「うおぉーーい!!!?」」
ギルド長とセレスは置いて、さっさと食事を終わらせる私たち。
「パンとポタージュのお代りは置いとくので、余ったら布を被せておいてください」
「「う~~い……」」
三人ともさっさと浴場へ向かってしまったので、私がフォローするハメになる。
[アイテムボックス]から、ワインとツマミを追加してあげた。
「オズも本気で怒ったわけではないので、気を落とさないでください」
「うむ…………分かっている」
「でもお母さんの悪巫山戯のせいで、無駄に疲れた…………このポタージュはホントにオズが作ったやつ?」
「えぇ。お義母さんがローストビーフ、オズがカボチャのポタージュ、私がガーリックトーストとマッシュポテトを作りました。といっても、パンは焼いただけですし、マッシュポテトは野菜と混ぜただけですが」
「「…………………………………………」」
「?どうしました?」
『焼いただけ?』とか『混ぜただけ?』とか言われるかと思ったんだけど、何故か二人とも呆気に取られたような表情をしている。
「??」
「え~と……だな。今、タチアナのこと……」
「お義母さんって言った?」
「あ」
しまった。脳内では完全にお義母さん呼びしてたから、無意識に口からも出てしまった…………
二人とも からかう様子はなく、ホントに確認しているだけなのが分かり、逆にこっちが無駄に照れてしまう。
「う、あ、えと……!!……………………お風呂行ってきます!!」
「あっ!!待て!!」
「私たちはぁ!?」
セレスの言葉に一度扉から出た身を、顔だけ戻し、
「……………………お義父さん、義姉さん。おやすみ…………」
反応は確認せずに浴場へ向かった。
ただ、背後からはパーン!!というハイタッチの音が聞こえたので、喜んでくれたらしいことは分かりました。
……………………超絶恥ずかしい……




