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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
5章 爆誕!!私の○○○○
82/264

第76話 ゴーレム娘、謎スキル考察

70 ~ 81話を連投中。


4/30(火) 14:50 ~ 19:10くらいまで。(前回実績:1話/21分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

最終的に赤巣箱20ヶ所、黄巣箱35ヶ所、ハチミツ200kgの大成功となりました。


予想通り遠いところの巣箱はみんな敬遠しがちなのか200%超えの巣箱もあったので、一ヶ所で三箱分採取出来たところすらあった。

昇格ポイントは、155ポイント。

ノルマに対して、黄巣箱+1ヶ所、ハチミツ+1kgに付き1ポイントである。意外に美味しいので、またやろう。


このクエストは特典として、精製前のハチミツを割安で購入することも出来るので、せっかくなので1kg分程購入しておいた。

オズが料理するなら、丁度良いからね。ちなみに巣ごとなので蜜蝋も手に入る。


「「「ただいま~」」」


『今日はもう帰る』と言った、ギルド長とセレスと共に帰宅した。

オズの手料理が食べたくて、早めに切り上げたんじゃなかろうか?気持ちは分かるけど。

とはいえ、私としてはオズの料理の腕は、果たして良い方なのか悪い方なのかが気になるところ。

期待と不安が半々といった感じだ。


『せめて普通以上であって欲しいなぁ』と思いつつ玄関を開けると、まだ食堂まで距離があるにも関わらず、美味しそうな匂いが漂ってきた。


「おぉ!!」


「美味しそう!!」


子供のように顔を輝かせてギルド長とセレスが食堂へ走っていった。


『行かないのか?』


「まぁ、無くなることはないでしょ。それにアレを見ると逆に落ち着かざるを得ないよね……」


私も多少はワクワクしてたのだが。


『いや、そうではなく。ルーシアナが来ると思ったらギルド長だと、また泣き出さんか?』


「さすがにそれは無いと思うけど急ぐわ」


ナビの中では、オズはそういうキャラで落ち着いたらしい。私は円筒の時のキビキビ話す印象がまだ強いのだが。


足早に廊下を進み食堂へ足を踏み入れると、まずタチアナさんに抱き付いて震えるオズが目に入り、続いて楽しそうに笑いながらオズを撫でるタチアナさんが目に入った。


良かった。とりあえず、オズはタチアナさんには慣れたらしい。一緒に住む相手に慣れないのでは、色々と大変だからね。


次にオズの視線を追って手前を見ると、セレスが腰に手を当てて仁王立ちしており、その足元には股間を押さえたギルド長が沈んでいた。


……………………何が起きたか想像が容易すぎる……


とはいえ、ギルド長がオズを怖がらせたことは想像に難くないので、とりあえず放置。いつものことだし。


食堂の中へ進むと、こちらに気付いたオズが嬉しそうな表情をしてこちらに飛んできた。タチアナさんが不満そうな視線を向けてくるが、この子は私の妹なのだから(いわ)れのない視線と言わざるを得ない。


元気に私の胸に飛び込んできたオズをしっかりと抱き止める。


「お姉ちゃん!!おかえりなさい!!」


「ただいま、オズ。何か問題はなかった?タチアナさんは良くしてくれた?」


「はい。大丈夫です。色々教えてくれました。料理も楽しかったですよ。いっぱい作っちゃいました」


「そのようだね……」


食卓だけでなく厨房の方にも溢れんばかりに料理が並んでいた。


何人前を作ったつもりなのかな……


「今日はバイキング形式よ。余ったら保存よろしくね」


「どれも美味しいよ~。私は味見でお腹いっぱいだけど~」


と、言うことらしい。


それにしても作りすぎだろう。別れてからずっと作り続けてたのではなかろうか?


頑張ったオズに労いの意味も込めて、頭を撫でてやる。他の意味は『私が撫でたい』ですよ。


「そっか。頑張ったんだね。えらいえらい」


「えへ~……ところで、お姉ちゃん。なんか甘い匂いがするね」


ずいぶんと自然な表情で笑えるようになったオズに一安心していると、そんなことを言われた。まぁ、原因など明らかなのだが。


「今日のクエストは『ハチミツの採取』だったからね。その匂いでしょ。お土産にハチミツ買ってきたから、あげるわ。はい」


帰宅中に《どこでも錬金》で精製しておいたハチミツを取り出し、オズに渡す。受け取ったオズは、透き通るような琥珀色の液体を興味深そうに見ている。


「ありがとうございます。これでまた料理を作りますね。スイーツもありますから」


「あ、うん。ありがとう。えーと、お土産のつもりだから、好きに使っていいからね?」


「はい。好きに使いますよ。美味しく作りますから期待しててくださいね」


「……………………まぁ、いいか。よろしくね」


『好きなこと=料理を作ること』で、対象が私なら喜んで受け取るまでだ。


オズと話し込んでいると、『ごほん』という咳払いが聞こえたので、はっと我に返る。

タチアナさんとセレスがニヤニヤと、ギルド長が気不味そうにこちらを見ていた。


「あ、すみません」


「いや、構わん。『そろそろ食事にしたい』というのは、こちらの都合だしな」


「あ、ギルド長。ごめんなさい。まだ急に声を掛けられるとビックリしちゃって……」


「構わん。こういう扱いは慣れている」


「そうそう。殴っても蹴っても壊れないから大丈夫よね」


「……………………お前の大声にも驚いていたのに、俺だけ蹴られるのは些か納得できないのだが……」


「納得すればいいの。それだけよ」


「…………………………………………」


「……………………あ、後でお詫びの品をお持ちします……」


「なんだ。肩叩きでも構わんのだぞ?」


仲が良いよね、この二人も。


「さぁ!!今日はオズちゃんの手料理バイキングよ~♪でも、食べる前に手を洗ってきなさいね」


「「「は~い」」」


名残惜しくオズを抱き締めると、手洗いのために一時退室した。





「ふぅ……お腹いっぱい、胸いっぱい」


「え?……………………よかった~。いつも通りだよ?」


「……………………怒って良いよね?」


「えっとぉ~……」


ベッドの上で『ふぅ』と一息ついてお腹を撫でながらそんなことを言ったら、ナツナツが驚愕の表情を浮かべて私の胸を触り、心底ホッとした様子で私の胸を撫で下ろした。


……………………やっぱり怒って良いよね?


夕食を終え、五人でお風呂に入り、『後は眠るだけ』の状態になったので、ベッドの上でおしゃべりタイムです。

ちなみに『五人』とは、私、ナツナツ、オズ、セレス、タチアナさんだ。

いつもは私とナツナツが基本で、セレスが加わったりタチアナさんが加わったりしているが、今日からは私とナツナツとオズが基本となる。

そこにセレスが『私もオズと仲良くなりたい!!』と言って加わり、タチアナさんが『じゃあルーシアナちゃんとナツナツちゃんはもらうわね♪』といつの間にか仲間に入ってきた。

まぁ、結局は五人でごちゃ混ぜになりながら、お互いを洗いっこしてたのだが。


長湯を終えて出たら、ギルド長が寂しくお酒を飲んでいたのは申し訳ない。先に入ってもらえば良か『ダメよ』 (セレス談) ダメらしいです。


年頃のお嬢さんは難しいですね。いくつなのかは知りませんが。


まぁ、起きておしゃべりするのではなく夢茶会でもいいのですが、オズの精神的疲労を考慮して今日はおしゃべりです。夢だからと油断して長引く傾向にあるのですよ。

なお、ナビは寝た。今日はナツナツの分まで私のフォローをしてくれたので、疲れたのだろう。存分に休んで欲しい。


現在オズは、昼間離れていた時間を取り戻すかのように、ベッドに座る私の膝の中に納まり、ナツナツを抱えている。

とても安心した様子なので、今日はこのまま眠るまでこうしていようか……


「眠る前にお知らせしたいことが」


「はい。オズさん。なんでしょう?」


「ナツナツ?」


「はいよ~」


気の抜けた様子でオズに抱かれるナツナツが両手を上げると、私の前にオズの現ステータスが投影された。



名前:オズ

性別:―

年齢:5,013歳

種族:情報生命体

レベル:12

HP:1,098 (+588)

MP:∞

力:58 (+40)

体力:68 (+110)

魔力:2,122 (+312)

敏捷:173 (+104)

運:Best

特殊スキル

・地脈の出自

・機械仕掛けの可能性

・情報生命体の心得

・シェフ Lv.10

取得スキル

・地脈直結

・限界突破

・絶対精神防御

・前行程

・本行程

・潜在効果

・統括指揮


※( )内の数値は、現憑依対象の性能です。


特殊スキル

・シェフ:料理人の長たるシェフへと至る可能性。調理に関するスキルを取得する。


取得スキル

・前行程:料理の前処理に関するスキル。《洗浄》《調味》《包丁技》を統合。


・本行程:料理の本行程に関するスキル。《焼く》《炒める》《揚げる》《煮る》を統合。


・潜在効果:調理した料理に秘められた潜在効果を覚醒させる。効果はシェフレベルに比例する。《五感向上》《劣化軽減》を統合。


・統括指揮:己の指揮下の者に対して、己のスキルの使用権限を与える。



「…………………………………………見なかったことにして寝ていい?」


「ダメです。私と一緒に頭を抱えてください」


「今は貴女を抱えてるけどね」


「そですねー」


「ごめん。確かに意味分からないけど、棒読みやめて。私も頑張ったの」


「いいから見て。…………それとも、ホントに見たくないですか?」


「いや見るよ。でもなに?貴女 料理人の頂点目指すの?」


「そういうことなんですかねー…………」


オズの口調から、途方に暮れてる気配が漂ってきたので、そろそろ真面目に考えることにする。


「どんな感じで修得したの?これ」


「料理してたら、不意に。


▽特殊スキル:シェフ Lv.1を修得しました!!

▽特殊スキル:シェフのレベルが上がりました!!

▽料理技:包丁技を取得しました!!

▽ステータスを確認してください。


特殊スキル

・シェフ Lv.1 → 2


取得スキル

・包丁技:包丁を使った成形動作を補整する。(常時発動)


って感じに修得しました」


「やっぱり野菜か何かを切ってるときに?」


「『はい』というかなんというか……魚を三枚に卸してました」


「…………いきなりレベルが高いよね?」


「ルーシアナもそう思う?私もそう思った~」


初心者に初日に教えることじゃないと思う。まずはサンドイッチとかから始めない?


「でも、猪とか鹿とかの解体から始めるよりもいいと思います」


「普通、解体は調理行程に入らないからね?」


「そうなんですか?」


「そうなんですよ?」


「でも、タチアナさん的には入ってるみたいだから、その内 包丁一本で解体することになると思う。『ルーシアナちゃんに狩ってきてもらわないとね』って言ってたよ~」


「…………頑張れ」


「えっと……はい」


話が逸れた。


「それで料理を進めてたら次々レベルアップして、取得スキルが増えていった感じ?」


「そうですね。いくつか取得した段階で《前行程》《本行程》《潜在効果》に統合・変化して、新しく覚えたスキルはこのどれかに統合されました。例えば、《煮る》は取得と同時に《本行程》に統合されました」


「なんとなく人為的に整理されてる気配を感じるよね~」


「オズのお母さんからの注釈みたいなのは聞こえなかったの?」


「ありませんでしたね……聞こえてきた声も、普通に自分の声でしたし。

まぁ、システムボイスなんで、しゃべらせる内容を母が決めてる可能性もありますが……内容がキッチリカッチリしていたので、母が介在していたとしてもシステムを作成したところだけでしょう。母がリアルタイムで内容を決めていたなら、一文毎に言い回しが変わるくらいはあるはずです。

つまり、お姉ちゃんのシステムボイスと同じですね」


…………思い付きで動き出す母親と、それに振り回される(オズ)の関係が浮かんでくる。


「システムボイス的なものについては、汎用スキルを習得すると簡単なのは聞こえるようになるらしいし、まぁ特別なものではないよね。

一応聞くけど、《シェフ》を修得した原因についてオズの見解は?普通、特殊スキルっていうのは、進化したときとか既存の特殊スキルの影響でもないと、修得しないはずだけど」


「お姉ちゃんの想像と同じだと思います。《機械仕掛けの可能性》の効果ですよ、絶対」


「だよね」


ここで《機械仕掛けの可能性》の効果を再確認。



・機械仕掛けの可能性:いずれ神へと至る可能性。あらゆる経験を糧として、進化し続ける。



『特殊スキルの詳細効果は、持ち主には分かる』と何時だったか言ったが、《機械仕掛けの可能性》も私の《龍王の系譜》と同様、イレギュラーな修得をしているので、よく分からないらしい。


私としてはこのスキルの効果を、『経験値の自動取得』と『進化時の方向制御』だと思っていた。


『経験値の自動取得』というのは、特定の動作を行うことでも経験値が得られるスキルのことだ。

通常 経験値というのは、他の生物を倒した際に得られるものだが、これ系のスキルを持っていると、生物を倒す以外でも経験値が得られる。

例えばオズの場合は、『新しい知識・経験を得る』で、この二日間だけでも、義体での動作や料理経験等を通じて経験値を得ており、レベルもいつの間にか12になっていた。


『進化時の方向制御』というのは、まぁそのものズバリ、進化する際に特定の方向に進化しやすくなるというもの。

魔獣なんかで『大型』などのスキルを持っていると、進化する際に体格が大きくなる種族へ進化しやすくなる。

オズの場合は…………まぁ、具体的な種族名は思い付かないが、神に近い種族へ進化しやすくなるのではないかと思っていた。


……………………なのに『シェフ』?思いっきり人間の職業名なのだが。

いや、それよりも『進化時の方向制御』は、進化時に影響するスキルであって、特殊スキルを修得する類のものではなかったはずだが…………


「『シェフ』のレベルを上げると、料理の神になるとか?」


「信仰はそこそこ集めそうだよね~」


ナツナツの意見には同意する。

料理人とかパティシエとかコックとか新妻とか。料理が上手くなりたい人は多いだろう。


「それなんですが…………ひとつ思い違いをしていまして…………」


「思い違い?」


「えぇ。《機械仕掛けの可能性》の効果は、『いずれ神へと至る可能性』ですが、『可能性』としか言ってないんですよね」


「……………………あら」


そういえば、私にくっついた《龍王の系譜》は、『いずれ龍王へと至る『運命』』だったな。つまり……


「『神に至れない可能性もある』?」


「そうですね。まぁ、そもそも『神ってなんぞや?』って話もあるんですが」


「『なんぞや?』って…………なんだろうね?」


そういえば、私は『神』というものを漠然としか捉えていない。


「『神』か…………『神』と言えば、やっぱり宗教だけど」


「一神教だと『全智全能』とか『創造主』とか~?」


「多神教だと『山の神』とか『水の神』とか、ある要素のみの全能者、といったところしょうか」


「《シェフ》を極めて『神』に至るとしたら、多神教ver.かな?」


しかしオズは少し難しい顔をして、


「ただこの《機械仕掛けの可能性》というスキル、『私の夢を追う助けになる』って言って渡されたモノなんですよね」


「夢?…………オズの夢ってなぁ~に?」


「あ」


優し~~い笑顔を心掛け、オズの顔を上から覗き込むように上半身を曲げて問うと、明らかに『口が滑った!!』という顔をして、左右に視線をさ迷わせた。

私からは特に催促もせず、表情も変えずに じっ……と見つめ続ける。


何も言ってないから、プレッシャーをかけてる訳じゃないよ?ねぇ?


何度か口を開閉して逡巡した後、


「ひ、秘密……です」


「そっかぁ~♪」


「うぅ……い、いじわるです……」


ナツナツを顔に乗せて視線から逃れるオズは可愛い。


「ごめんごめん。でも、私が手伝えることがあれば言ってね?」


「…………はい (『貴女を護って幸せになる』。婉曲(えんきょく)的には何度か伝えましたし、行動としてもそう取れることをしているのですが、言葉にするのはどうにも恥ずかしいですよね…………)」


まぁ、なんとなく私に関わることなのは想像がついているので、ここで終わりにする。姉妹でもプライベートは大事だよね。

気が付くとズリズリと下の方に下がってしまっていたので、膝枕に移行して薄いタオルケットを掛けてやる。


「あ、ありがとうございます」


「どういたしまして。それで、オズのお母さんがそのスキルを渡してくれた理由と、スキルがもたらしてくれた結果が一致しないからおかしい、ってこと?」


「あ、そうです。まぁ、死にかけたところを助けてもらって、《地脈直結》と《限界突破》のお陰でその後の窮地も乗り越えられた訳ですから、理由はそこで終わってるのかもしれないですけど」


「ふぅん……オズのお母さんがスキルを渡してくれた理由って?」


「貴女を護って幸せになれとぅおわああぁあぁぁあぁ!?!!!?!!」


……………………ごめん。そんなつもりは無かったの…………ホントに。


本当に何の気も無しに漏れた言葉だったため、オズも何の警戒もなく秘密を吐露してしまったようだ。

私の膝枕から勢いよく跳ね起きると、背を向けて丸くなりタオルケットの中に潜り込んでしまった。


「……………………ルーシアナ、今のは無いわ……」


「いや、ごめん。ホントに引っ掛けようとかそんなことは全く考えてなかったの…………ホントに……」


オズが慌てた拍子に天井付近に投げ飛ばされたナツナツが、非難めいた口調で下りてきた。いや、ホントにごめんなさい。

どうしたものかと考えながら、タオルケットに(くる)まるオズの背中を撫で、謝罪を繰り返す。


……………………五分くらいで復帰した…………ものの、恨みがましそうな目で見てきます。どうしたら良いでしょうか、オズのお母さん。


『慎重に当たって砕けろ!!』と意味不明な神託が降ってきた気がしますが、ソレは深い意味があってのセリフですかそれとも途中で意見が変わっただけですか。


とりあえず後半の意見を採用することにして、当たってみることにする。


「どーーん♪」


「うひゃあ!?」


いえ、体当たりでベッドから押し出した訳ではありません。包まるタオルケットごとオズを抱き締めただけです。

タオルケットでオズをグルグル巻きの袋状にし、仰向けにして抱きかかえる。


「ごめんてば。許して?」


「謝罪する相手にすることじゃないですよね!?」


「それとこれとは話が別」


「どれとどれ!?」


「謝罪することと包むこと」


「その通りだけどそういうことじゃな~~~~い!!!!」


なお騒いでも大丈夫なように、《ジャミング》は発動中ですのでご心配なさらず。

赤ん坊をあやすように揺らしていると、ようやく落ち着い(あきらめ)てくれた。


「もぅいいです……」


「何度も言うようだけど、本当にごめんね?代わりに私の秘密を……………………と、思ったけど、特に思い付かないや。ベタに何でもお願いを聞いてあげるとかはどうでしょう?」


「お願いは聞かなくていいから、反省してください。それはもう、私が引くくらい反省してください」


「難しいことを言うね。確かにうっかりでオズの秘密を聞き出したことは『悪いなぁ』と思ってるけど、ハッキリとオズの夢を聞けたから後悔はしてないんだよ?」


「ぬ~~~~あ~~~~!!!!」


「貴女の護りを期待してるよ♡代わりに幸せにしてあげるから、遠慮はしないでね?」


「も~~~~~~~~ばか~~~~~~~~……!!」


オズのお母さん。もっかい言うけど、絶対に幸せにします。





疲れ果てたオズを抱えたまま、脱線した話を元に戻す。


「オズの夢が『私を護る』と『オズが幸せになる』で、《機械仕掛けの可能性》がその助けになるスキルなら、確かに《シェフ》から神に至るのは微妙にズレてるよね」


「ふ、復唱しなくていいですから…………」


「料理が上手くなって、ルーシアナの私生活を護り、無事に帰宅するルーシアナを迎えて幸せを噛み締める…………《良妻》とかいうスキルだったら納得だったかな~」


「…………………………………………はっ!?べ、別に『それもいいかも』とか思ってませんよ!?」


「何も言ってないよ」


思ったけど。


そろそろ自滅で、勝手にダメージを蓄積し始めそうなので、終わりにしよう。


「《機械仕掛けの可能性》の効果がオズの夢を叶えるのに、完全に合致していると仮定した場合、その効果はつまり『オズが望んだ技能を極めやすくなる』なのでは?」


「えっ……と?」


「オズ。今日料理してたとき、何を思ってた?……あ、いや、私に『美味しい料理を作ってあげたい』とか思ってたんじゃない?」


「……………………まぁ、思ってましたが…………そう思うのは普通だと思いますし、よく自分で言えますよね」


「うぐっ…………ま、まぁ、オズの不安を取り除くためだからね」


「…………ありがとうございます。ついでにそろそろ出してください。ちょっとこの体勢は疲れます」


「はいはい」


疲れるのなら仕方ない。

風呂敷のようにオズを包んでいたタオルケットを(ほど)いて解放してやる。

抜け出したオズは、タオルケットを私の肩に掛けると、私の膝に横向きに座り、前で閉じた。


「これで暖かいですよね?」


「…………そうね」


不意打ちでそんなことされたら、顔も真っ赤になるってものでしょう。

さらにナツナツが私たちの間に潜り込んで準備完了だ。


「つまり、《シェフ》は私が『神に至る』ために修得したものではなくて、『お姉ちゃんに美味しい料理を作ってあげたい』から修得したものだってことですか?」


「結果的にはそうかなぁって。ちなみに修得条件は『私』限定ではないかも。オズの想いの強さ次第じゃない?」


「『神に至る』の方はどうなの~?説明を見る限りだと、そっちがメインっぽいでしょ?」


「いや、ね。本来のこのスキルの使用方法としては、『オズが神に至るために、足りない部分を補う』もので、その方法が『足りない部分を得たい』と強く願うものなのかな、とね。そうして少しずつ完全になっていけば、途中で進化もするだろうし、いずれ全能なりなんなりになるのかなぁ、と」


「なるほど。それなら『可能性』の部分も納得がいきますね。『自分に何が足りないのか?』という自己分析と『こうなりたい』という強い意思がなければ、神には至れない、ということですね」


『得心が行った』と言う風に頷くオズに、なんとか満足してもらえる回答が出来たようで安心する。


「そだね。そういう意味だと、悪いことしたね。料理云々は、オズが神に至るのに不要だったかもしれないのに」


「いえ、構いませんよ。元々『神に至る』は目標ではありませんし」


「でもオズのお母さんは、オズが神になることを期待するって言ったんでしょ~?」


「いえ、母は『私の元にか、隣にか。お前の可能性に期待するよ』と言いました。確かに神になることを期待しているとも取れますが、多分母は『神にすらなれるんだから、思う様に生きてこいよ』と言いたいのだと思います」


「そうなの~?」


「…………無理してない?大丈夫?」


抱えるオズの左頬に手を当て、顔をこちらに向けさせる。…………その表情に無理をしているような強張りは感じられない。多分、大丈夫かな?


「はい。それに母には話したいことが、すでにたくさんあるんです。これからも増えていきます。きっとそれが聞きたいんだと思いますから」


「そっか」


「だから……」


今度はオズの方から手を伸ばし、私の頬に当てると


「たくさん、幸せにしてくださいね?」


「…………………………………………ふと思ったけど、これって愛の告白みたいだよね?」


「ごふっ!?な、何を言ってるんですか!!!!」


「いや、だってさぁ……」


「……………………アンタら今更気付いたんかい」


「も、もう!!知りません!!」


こうして夜は更けていました。…………うん。過去形。結局夜更かししたね。


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