第48話 ゴーレム娘 VS. 夢魔
33 ~ 57話を連投中。
3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)
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真っ暗闇の、上も下も分からない空間を、しかし『落ちている』ことだけははっきりと認識しながら、落ちて墜ちていく。
右を見るとナツナツが肩に座って足をプラプラさせていて、左を見るとナビが左手を握ってこちらを見つめていた。
「……………………久し振りね。こうして会うのは」
「そうだな。以前会ったときは10分と経たずにクビにされてしまったからな」
「…………ごめんてば」
「ふふ……冗談だ。今は楽しくサポートさせてもらっているしな」
「頼りにしてます」
「任せろ」
力強く頷くと、空いた左手で頭を撫でてくる。存外に優しい手付きで、なんとなくナツナツをイメージしてしまうのは、やはり根本的に同じ存在だからだろうか?
「あ~、いいなぁ。私も撫でる」
「いつもしてるじゃない」
それを見ていたナツナツから、謎の抗議の声が上がる。
呆れて右を見ると、
「…………………………………………」
「はろはろ~」
「……………………でかい」
そこには、ナビと同程度の大きさに成長したナツナツがいた。
いや成長とは言わないか?でも、単純に大きくなった訳じゃないしな…………
ナビが20歳手前の18歳くらいの年齢なら、今のナツナツは16歳か17歳かといったところ。
長い銀の髪を背中に流し、清楚な見た目の大人しげな美人さんだった。ただその赤眼からは、見た目の印象を裏切る活発で溌剌とした本質がありありと溢れている。
体形は私と違い、立派に成長した背丈とオパイをしている…………嫌味か。
「それは身長のことを言ってるの?それともガン見してるお胸のことを言ってるの?」
「胸だろう……」
「ナビ、そういうことを言うから『デリカシーが無い』って言われるのよ?」
「さーせん」
「それはともかく」
「むぎゅぅ?」
ナツナツは徐に背中に腕を回すと、私の頭に自分の頭を乗せて力強く抱き締めてきた。抱き締めるナツナツの体からは、ほのかにお花の薫りがする。
「夢の中みたいなものだけど、いいね~、ここ。こうしてルーシアナのことを抱き締めてあげられるんだもん」
「うんうん、ありがとうナツナツ。でも、分かる?元気も出るけど、押し付けられるオパイの感触に私の精神はゴリゴリ削られているのよ?」
「え~~いいじゃん。なんやかんや言いつつも好きでしょう?羨ましそうにセレスのを眺めてるし」
「それは自分に欲しいという視線なのでは?」
「ん?私はルーシアナのものだよ?」
「まぁ、その通りだが」
「セリフだけ聞くとアウトだね」
まぁ、いいか。セレス以上に親しい間柄だし、気にせず私も両腕を回して日頃の感謝を込めて抱き締める。
こんなこと、妖精状態のナツナツには出来ないからね。
左手は気を効かせたナビが離してくれた。
「……………………男性型であることをこんなに恨んだことはないな……」
「へへ~♪さすがの貴方も女の子に抱き付かない常識はあるみたいね」
「……………………オネェナビゲーターならOKなんだったか?」
「待とうか、ナビさん」
禁断の扉を開け放ちそうなナビに待ったを掛ける。
私のせいでオネェ化したナビと、今後ともやっていく自信はないです。
「え~と、ほら。ナツナツとは逆に小さくなるのはどう?」
「あ、そうね。子供なら許されることってあるよね」
「こうか?」
「「はやい!?」」
ナビさん、そんなに私と触れ合いたいですか珍獣じゃないですよ?
ナツナツを離してナビの方を向くと、精々5歳程度の小さな男の子が……男の子が…………
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「だ、ダメか?もっと小さくないとダメ?」
「いや、うん。なんていうか……」
「そういえば、私がアクセサリってか、オプションつけたんだった……」
「?」
そこには、銀の短髪につぶらな赤眼をうるうるさせる、犬耳美少年がいた。首に巻かれた仔犬用の首輪が背徳感をこれでもかと煽る……
思わず膝を落として抱き締め、頭を優しく撫でてしまった。
だって泣きそうだったし。
途端に『パァ!!』と明るい表情になると、嬉しそうに両腕を回して同じように抱き付いてきた。
尻尾でもあったらブンブン振ってそう……ってか、ある!!種類とかは分からないけど、ふっさふさな銀の尻尾がブンブン振られております~~~~!!!!
「や、ヤバイわ、仔犬ナビ。可愛すぎる……」
「いや~予想外ね~♪大人バージョンに可愛い犬オプションは失笑しか浮かばないけど、ちっこくなると破壊的に似合うわね~♪」
ナツナツも隣に回って頭や尻尾を撫で回している。
「仔犬?…………あ!!ナツナツにやられたオプションか!!隠してたのに!?」
「……………………ね、ナビ。もっとこう……子供っぽい話し方して?」
「あ、いいかも」
「……………………まぁ、ルーシアナが気に入ってくれたなら、それでいいけど。ねぇ、夢の中でこんな風に会える術式創ってみたらどう?」
「いいよ!!いい!!ナビちゃん!!可愛くていいし、術式も頑張ってみようか!!」
「ね、ねぇ。『お姉ちゃん』って呼んでみない?」
「……………………ルーシーお姉ちゃん、ナツ姉」
「「ぐはっ!!!!」」
ナツナツと二人で吐血して倒れた。…………ナビの方に。離れたら勿体無い。
一頻りナビで……ゲフン!!ナビと遊んだら、そろそろ夢魔のところに着くというので、二人には元に戻ってもらった。…………残念。
「絶対、夢で会う術式創る」
『ほどほどにな』
「オズに聞けばヒントくらいあるんじゃない?」
ナビにはいつも通り私の中でのサポート役に戻ってもらった。
正面を見ると、ポツンと白い点があるのが見える。
光っている訳ではなく、モヤモヤとした白い塊が暗闇に埋もれず存在を主張しているようだった。
徐々に白い点が大きくなっていく。
と、
「おっと?」
突然、視界が開けた。
重力が戻り上下がはっきりすると、落下の感覚が消えいつも通りに床に立った。
そこは中枢システム区画に似た円形ホール。ただし柱はなく、とても広い。
「…………?なんでわざわざ空間を創ってるの?」
「どういうこと?」
『ここは中枢システム内に存在する精神世界だ。物質があるように見えても、その本質は精神体。ここに存在する夢魔にとって、現実世界準拠の空間を創造する意味はない。何もない、先程の世界の方が動きやすいはずだ』
「もしかしたら普通の夢魔とは違うのかも……」
「……………………」
ナツナツとナビのセリフに、警戒を強める。
硬質な反力を返す床を確かめるように爪先で叩くと、薄暗闇の中 中央の白い塊に向かって足を進める。
残り5m程まで近付いたところで、塊に変化が生じた。
四つに分かれると、徐々に収束していき細かな輪郭を形作っていく。
それは男三人、女一人の人間のように見えた。
「…………!!」
『…………!!』
ナツナツとナビが何かに気付いたように驚きの気配を放つ。
そして大剣を背負う男は偉そうに腕を組み、魔道士らしき女が嫌味な笑みを浮かべ、気障ったらしい弓使いが前髪をかき上げ、陰気そうな男魔道士がニヤニヤと気持ち悪い笑みを張り付けた。
「ひ」
「《アストラル・ブロウ》。五連」
何か言い掛けた大剣男を無視して、遠慮容赦のない精神魔法をブッ放す!!!!
四人の斜め四方向 及び 真上から、凶悪な密度の精神弾が襲い掛かる。
一先ず言葉で威圧して主導権を握ろうと悠長に考えていた夢魔四人は、無防備に上半身に精神弾を喰らうと、簡単にその身を崩して土手っ腹に風穴を開けた。
たたらを踏む四人が中心に集まると、それを狙ったタイミングで、真上から精神弾が舞い落ちる。
「ブレイク」
ルーシアナが、『パチン!!』と指を鳴らすと、中心に集まっていた五つの精神弾が弾けて、崩れかけた夢魔を衝撃波で細切れに吹き飛ばす!!!!
そして夢魔はあっさりと空間に溶けて消えてしまうのだった。
「…………………………………………」
『…………………………………………』
「倒した?」
特に何の感慨も滲ませず、警戒の強い声で問うルーシアナ。
困ったような表情でナツナツはルーシアナを見ると、
「えっと……多分。だよね?ナビ」
『あ、あぁ。《ロング・サーチ》、《スキャン》に反応なし。恐らく倒しただろう』
ナビも戸惑いながら状況を報告した。
その答えに、安堵したように緊張を解く。
「そっか~♪よかった。二人が『普通の夢魔とは違うのかも』って言うから、ちょっと緊張しちゃったよ。まぁ、私普通の夢魔知らないんだけど」
「あ、うん。まぁ、私たちも知らないけど……………………あれ?ルーシアナ、気付いてない?」
「なにが?」
『いや、あの……夢魔が形作っていた人間を見て、『お、お前たちは……!!!!』みたいな反応を予想してたのだが…………』
そう……
「あれ?二人とも知り合い?もしかして、知り合いの真似して動揺を誘う作戦だったのかな?見覚え無かったけど」
「『…………………………………………』」
ルーシアナは終わった嫌な記憶は即行で綺麗サッパリ忘れ去るタイプだったのだ!!!!
あの連中も話が長引いて、『……………………えっと、誰?』とか訊かれるよりかは、幸せだったかもしれない。どっちみち倒すし。
「…………………………………………まぁ、いいや」
『ミッションコンプリート。後は夢魔の魔力が拡散するのを待とう』
こうして夢魔の魂となっていたツギハギは、この世から綺麗サッパリ消滅した。
さすがにもう出ないと思います。




