第38話 ゴーレム娘の遺跡探訪
33 ~ 57話を連投中。
3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)
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申し訳ありません。
ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。
一先ずリミットは明日までにした。
短いけど仕方ない。今日帰れないだけでも、セレスたちに心配を掛けてしまうことは確実なのだから。
連絡手段でもあればいいんだけどね。
『通常、ダンジョンはその大きさに比例して探索期間が伸びる。当たり前だが。あの大きさだと、一週間は欲しいところだな』
「一先ず脱出手段だけ即行で見つけよう」
せっかくの手付かずのダンジョン、二度と探索できなくなってはもったいない。…………まぁ、おじいちゃんの手が付いてるかもだけど。
まずは来た道を引き返して、建物に向かおう。
道は真っ直ぐ続いており、建物から大きく飛び出した庇というか屋根の下に繋がっている。
屋根の下の外壁 中央付近には大きなガラス壁が埋め込まれていた。
「扉はどこだろ……」
「普通に考えたらあのガラスが開くんじゃない?道もあそこから伸びてるように見えるし」
「取っ手らしきものが見えないんですが……」
『押すんじゃないか?』
「蝶番も見えないんですよ?」
『横にスライド?』
「それこそ取っ手が必要でしょう」
開け方の見当が全くつかないが、一番それっぽいのは確かにそのガラス壁なので、とりあえず近付いてみる。
どうしようもなかったら、破壊すればいい。
せっかく買った重大剣のまさかの初仕事が、不法侵入のための破壊工作とは……憐れなり……
『待とうか』
数秒でガラス壁に到着する。
まずは押します。
開きません。
そのまま手の平の摩擦を使って横にスライドさせます。
開きまへん♪
最後に引きましょう。
掴めまへん♪
…………………………………………
「壊すか」
「待とうね」
[アイテムボックス]から重大剣 ― スティールブレイド ― を取り出すと、ナツナツからも制止されてしまった。
とりあえず二人を信じて待つことにする。
『ナツナツ。どうだ?』
「ん~~……………………あ。あの辺 怪しい」
「ん?」
ナツナツが指し示した場所に移動する。と言っても、2~3歩右にズレるだけだ。
そこはガラス壁の右側に接している通常の石壁だったが、足元に正方形の線が引かれ、私の正面より少し上に模様が描かれていた。
「ちょっとその模様に手を伸ばして魔力流してみて」
「あいよ」
言われるままに魔力を流す。と、
ピピッ…………
聞き覚えのない音がした。
何だろうと思っていると、どこからともなく声が聞こえてくる。
「いらっしゃいませ。本日は当ターミナルをご利用頂き、誠にありがとうございます。
現在、当施設は休止モードで運用中です。ヒューマノイドアシスタントは音声のみの対応となっております。また、認証システムはマニュアルモードでのみご利用可能です。お手数ですが、随時 各端末上で認証を行ってくださいますようお願い申し上げます。
現在、管理レベル1『一般開放区画』のみご利用頂けます。当施設のご利用を希望の方は、アクセスキーを所持の上、足元の白い四角形の中へお進みください。認証を開始しますか?」
「…………………………………………」
びっくりし過ぎると声が出ないという人がいるらしい。私もそうだったようだ。
ナビを再起動して以来、活動中は常時索敵系魔法が発動中である。つまり、ここ二週間ほど不意を突かれることがなかったのだ。
久し振りの『不意を突いた』声に、自分でも驚き過ぎるくらい驚いてしまった。
具体的に言うと、分かりやすく小さく飛び上がり、恐る恐る周りを見回す感じだ。
もちろん誰もいない。
途中で冷静な自分が、『いやこれ、原理は分からないけど、魔道具か何かだよね。私の魔力に反応したし』と、長々と突っ込んでいた。
その不思議な声は、常に耳元で話しているかのようにこちらに届く。
「認証を開始しますか?」
「えーと…………」
「認証開始」
「ナツナツさん!?」
思考停止中の私に構わず、ナツナツが先程の声に返答する。
「認証を開始します…………」
見た目には何か起きた様子はないが、《スキャン》を掛けられた時のような違和感が頭から下へと抜けていく。何かを調べられているのだろう。
『《天人の鍵》が発動したぞ』
「マジか」
ナビの報告にそろそろ結論を出しましょう。
天人の遺跡、確定です。
少なくとも、おじいちゃんは天人に関連する施設だと認識していたのだろう。そうでなければ、スキルにこんな名前は名付けまい。
「アクセスキー形式の分析中…………生体印刷型アクセスキーを確認。認証中…………………………………………完了しました。
貴方のアクセスキーの権限レベルは10です。当施設の全区画に立ち入りが可能です。ただし管理レベル2以上の区画をご利用の際は、操作端末から手動にて適切なモードに変更してください。
それでは、当施設をお楽しみくださいませ」
プツンッ……………………
何かが千切れるような音がして、音声が終了する。
同時にガラス壁の一部が融けるように流れ落ちると、私の身長ほどの高さの穴が開いた。形状だけ見ればアーチ門と言えなくもない。
「「『…………………………………………』」」
しばし、沈黙。
「私さぁ……」
だが長引かせる意味もないので、口を開いた。
「休止モードで、『一般開放区画』?しか利用できないって聞いて、どうやって他のところに入ろうかなって思ったのよ」
「うん」
『まぁ、正規の脱出手段を稼働させるには、そういったところに立ち入らなければならないだろうからな』
「だよね。…………でさ、入口ですら認証が必要だった訳だから、当然それ用のアクセスキーが必要かなって思ったわけよ」
「うん」
『わざわざレベル分けしているくらいだからな。それぞれのレベルに合ったアクセスキーが必要と思うな』
「ねぇ?…………どうやって手に入れようかと思ったわけよ」
「うん」
『施設内で拾える訳もないからな。そんな重要なもの』
「だよねー。……………………権限レベル10?」
「うん」
「全区画立ち入り可能?」
『恐らく権限レベル以下の管理レベル区画に立ち入りが可能と思われる』
「…………………………………………今日中に帰れるかもね」
「ちゃっちゃと終わらせよう」
『家を出すのも面倒だしな』
初めての、ダンジョン探索は、超☆イージー☆モード♡
今日中に帰れる目処が立ちました。まだ何も調べてないけど。




