プロローグ
あの日、二つの星が輝く空に向って伸ばした手は届いているだろうか。
あの時から数年の時がたっても、結局の所その問いの答えは出ない。あの時とは違い、肉体的にも精神的にも成長したのにも拘らず、解答は白紙だ。
思わず笑ってしまう。
あの日から自分は、何も成長していないのではと思ってしまったからだ。肉体の成長も――精神的な成長も、それは見かけだけであって、可笑しなことを言うかもしれないが自分の中にある自分と言うのは、結局の所一ミリも成長していないのかもしれない。
まあ、別にそれはどうでも良かった。
成長していようがいまいが、自分がこうしてあの日の約束を果たせれば十分成長していると思えるからだ。多分、そうなっていればあの星に――あの二つの星に指の先でも届いていると確信できる。そう確かに思える。
この世界にはどうしようもないことが星の数ほどある。
どんなに頑張っても、報われなかったり。
どんなに働いても、認められなかったり。
周りの幸福を願っても、自分は幸せにはなれなかったり。
友達との取り戻したい絆を、取り戻せなかったり。
泣いていても、誰も手を差し伸べてくれなかったり。
そんなことばかりだ。
だから、人は願うのだ。
あの輝く二つの星に。