第2話 如月さん、勝負してくれるかな?
【Aパート:沙良&舞&莉子】
昼休み。
私は練習ノートを開いて、じっと考えていた。
(……如月さんに、どうやって勝負を申し込もう)
種目は100メートル。
日時は来週の水曜日。
練習後なら、迷惑もかからないはず。
計測は手動で十分かな。
(……あとは、伝えるだけなんだけど)
「沙良、何書いてんの?」
舞が横からノートを覗き込んだ。
「あ、如月さんとの勝負のこと。どうやって誘おうかなって」
「え、もう決めたんじゃないの?」
「うん。でも、いきなり勝負してくださいって言うのも失礼かなと思って」
莉子もノートを覗き込む。
「……日時、種目、計測方法?」
「うん。条件を明確にしておいた方がいいかなって」
「それじゃ、果たし状じゃん」
「……え?」
舞が吹き出した。
「『如月遥! 来週水曜、100メートルで勝負だ!』って?」
「そ、そんなつもりじゃないよ!」
「普通に聞けばいいじゃん」
莉子が笑う。
「……でも、断られたら?」
「そりゃ仕方ないっしょ」
舞はあっさり答えた。
「勝負するかどうかは、如月さんが決めることだし」
「……そっか」
確かに、その通りだ。
こちらが決められるのは、申し込むところまで。
その先は、相手の返事を聞かないとわからない。
(……よし)
ノートを閉じる。
「今日、話してみる!」
「おー! 頑張れ!頑張れ!」
「で、果たし状は?」
「書かないってば!」
三人で笑った。
「……でも、日時くらいはメモして渡してもいいかな?」
「だから、それじゃ果たし状だって!」
***
【Bパート:???視点】
放課後のグラウンド。
ストレッチをしていると、誰かが近づいてきた。
佐伯沙良だった。
(ああ)
昨日の、あれか。
何か用があるらしい。
(面倒な話じゃなきゃいいけど)
何でもない顔でストレッチを続ける。
足音が近づいてくる。
顔を上げると、佐伯さんはまっすぐこちらを見ていた。
(何見てんだよ)
……まぁ、用があるんだろうけど。
視線が強い。
嫌な感じではない。
ただ、落ち着かない。
(早く言ってくんないかな)
私はストレッチをやめ、ゆっくり立ち上がった。
佐伯さんが目の前で足を止める。
(……来た来た)
普通にしよう。
変な顔しなきゃいい。
佐伯さんが、大きく息を吸った。
(そんな気合い入れなくても)
……何言われるんだろ。




