追放
「ユーリ、お前はパーティーから追放する」
え、何を言ってるんだ???
とりあえず、今の状況を整理しよう。俺は、今日突然パーティーリーダーのケインにパーティーで宿を取っている部屋に呼び出された。何事かと思って呼ばれた場所に行くと、追放を宣言された。うん、ここまでは間違いないな。
どうしてこうなった?俺は、これまでこのパーティーでバッファーとして活躍してきた。お飾りのタダ飯喰らいではなかったはず。戦闘の際は、いつも、ケインを含むパーティーのメンバーたちから感謝されていたはずだ。
「おい、なんでだよ!ついこないだも一緒に冒険しただろ?どうしてこんな」
俺はケインに尋ねた。すると、全く以外のことをケインは言う。
「お前のバフが弱いんだよ」
はあ??俺のバフが、弱い?頭大丈夫かこいつ。俺のかけるバフの効果は、無条件で相手の全ステータスを1.5倍にするというもの。一般的に使われるバフが1.05倍前後のものだと言えば、そのすごさが分かるだろう。
「弱いわけ無いだろ、弱いわけ。1.5倍だぞ?1.5倍を馬鹿にするな」
俺は、バカにされて機嫌を良くするようなバカではない。怒りに包まれながら、俺はそう言った。
ケインたちはバカじゃない。こんなことをするには、何かしらの理由があるはずだ。そう、例えば新しくバッファーを雇ったとか。
「新しくバッファーを雇ったんだ。お前より腕の良い、な」
おいおい、まさかと思って挙げた例がそのとおりだったのかよ。
だが、俺以上のバフを扱えるものが早々居るとは思えない。何か騙されてるんじゃないか?
「ユーリ、あんたしつこいわよ。自分の役割が奪われて悲しいのは分かるけど、潔く諦めなさい」
パーティーメンバーの一人、斥候役のアイシャが俺に向かってそう言う。
「そうだぞ、諦めて次でも探すんだな。まあ、勇者パーティーから追放されたやつに次があるかは知らないが」
アイシャの後に、戦士のガルドが追い打ちをかけてくる。こいつらは、これまで頑張ってきた俺を労るでもなく、馬鹿にするのか。もう、愛想が尽きた。
「いいぞ、来てくれ」
俺が絶望に打ち拉がれていると、ケインはどこかに手招きをして誰かを呼んだ。すると、部屋の扉が開いて一人の女性が入ってきた。
「うふふ、アイシャさん、ガルドさん、はじめまして。カルラといいます。よろしくお願いしますね」
カルラさんは、アイシャとガルドに挨拶をするとケインの横に立った。それにしても、カルラさんは妖艶な雰囲気を纏っているな。その服装は露出が多く、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでる女性的な体型をしている。ケインはそれを見て鼻の下を伸ばしているようにも見えるが、ケインは確かアイシャとも関係があったはずだ。アイシャは容認しているのか?
そう言えばと思って、俺はカルラさんに鑑定をかけた。その内容を見て、俺は目を見開く。
__ステータス__
カルラ Lv70 種族 ヒューマン
HP 200/200
VIT 60 STR 40
DEX 150 INT 170
MND 140 AGI 50
スキル
詠唱短縮
火炎魔法
狂気調律(指定した2つのステータスを2倍、それ以外を0.8倍にする)
____
狂気調律だと!? なるほど、確かにこのスキルは2倍のバフがあるが、デメリットが大きすぎる。他のステータス4つを0.8倍は動きに支障が出てバフの効果を十全に発揮出来ないほどだ。
その効果に驚いたが、俺を突然追放して馬鹿にする奴らへ教えてくれる必要はない。せいぜい頑張ってくれ。
「わかったよ。じゃあな」
そう言い残してその場を去ろうとすると、ケインが俺を引き止めた.
「ちょっと待て。このままお前を行かせたら俺達が悪いことになる。ほら、手切れ金だ」
そう言うと、ケインは金の入った巾着をこちらに投げてきた。
「要らん」
巾着は、誰の手にも渡らず俺の足元に落ちる。
俺が言い放つと、ケインは悲しそうな顔をして言う。
「そう冷たいことを言うなよ。俺は、これまでの関係を白紙にしようと提案しているんだ。お前はそれを断るのか?」
口止め料ということだろうか。こいつは、金で俺を買いたいのか。正直受け取りたくないが、そうするとどんな目に合わされるかわからない。パーティー内での暴力沙汰は処罰物だが、パーティー関係のない冒険書どうしの喧嘩は勝手にしろというのが冒険者ギルドの方針だ。今後の生活のためにも、この金は受け取るのが無難か。
「仕方ない、受け取ってやる。だが、今この瞬間から俺とお前たちは他人だ。二度と関わらないでくれ」
さっと巾着を拾い、そう言いながら俺は部屋を出た。
「おうよ、これからは|お前に関わらないよ」
去り際に、ケインはなにやら含みのある言い方をしたような気がするが、俺は気にせず宿を飛び出した。
◆◇◆◇◆◇
「うお、金貨が入ってやがる。それだけ、俺を追放したことを隠したかったのか?」
どこに行くともなく、裏路地をブラブラしながら受け取った巾着の中を検めていると、俺は巾着の中に入っている金額に驚いた。
「ひいふうみい、7枚か。贅沢しなければ5年は生きていける金額だぞ」
だが、奴らから受け取った金で生活するのは俺のなけなしのプライドが許さない。できれば強のうちに使い切ってしまいたいな。
どう使ってしまおうか。ギャンブルはあまり好きじゃないし、1度に金貨7枚なんて使ってしまったら良くない奴らに目をつけられてしまう。そんな事を考えながらそのへんをほっつき歩いていると、ひとつの奴隷商が目についた。
「奴隷を買おうかな、戦闘ができる奴を。俺はバッファーで戦闘は得意じゃないし、高めの奴隷なら金貨7枚分くらいはするだろ」
そう思い立ち、俺は奴隷商の中へ入っていった。




