東京旅行記⑤
シバは走り出した。
今回は人間の姿で。
「シバ、、、俺は、、、」
家を飛び越してレンのもとへ向かう。
蓮矢はあのあと車から降り途方もなくさまよっていた。
ふと、近くにあった公園のベンチで腰を掛けていた。
そこに夏祭りの時に現れた客が向かってきている。
「やっほレン君、会いに来ちゃった♡」
蓮矢は顔を上げる。
そこには茶髪で、ゆるふわな雰囲気の女性がいた。
「やっほ茉莉姫、ご機嫌麗しくて?」
蓮矢は自分の客だと気づいて、笑顔で返事をする。
「こんにちは」
光の元客の知佳もいた。
「やっほ、知佳ちゃん。ライトならいないぞ?」
「そうね。残念だわ。」
そう言って蓮矢を見つめる。
長い黒髪に赤みがかった瞳。そして黒いワンピース。
どれも妖艶な雰囲気を醸し出してる。
「俺に何か用か?」
「ちょっとレン君にきやすく話しかけないで!」
そう言って茉莉が知佳を遠ざける。
「ねぇレン君私とずっと一緒にいてくれるよね?」
「ん?急にどうしたの?」
鞄からナイフを取り出した。
「えっ、は?」
(もしかして、刺される?まぁ、それでも、、、)
ちらっと知佳の方を見る。
そこには白い紙が握られている。
「ねぇいてくれるよね?ねぇねぇ!ねェ、、」
黒い靄が茉莉の周りを包むように大きくなっている。
「まつり!!!」
手を伸ばしてて茉莉を掴もうとしたが握ったところにはナイフしかなかった。
「いっ、、」
手から血がぼたぼたと噴き出る。
「へぇーかっこいいじゃん」
知佳はその行動に感心したように声を上げた。
「おいお前、何をした!?」
「私?私はなんもしてないよ」
その瞬間知佳は斜め上を向いた。
そして小さく舌打ちをした。
「また面倒なのが増えやがった」
「は?」
「さっさと止血しなさい。死ぬわよ?」
そういってハンカチを投げた。
蓮矢がそれを受けとった。
すると上からどでかい影が現れた。
「え?」振り返った蓮矢の前に砂埃が舞う。
「お出ましね」知佳がめんどくさそうな顔をした。
「お主、何をしておるのじゃ」
「なんもしてないよ」
知佳の目が赤く光った。
「やる気であるか?」
「ねぇレンいっショにイテクれるよね、、、」
そういって茉莉は大きな黒い塊になった。そこから蜘蛛のようになって蓮矢の方に襲い掛かってきた。
「もうどうにでもなれよ」
そう言って蓮矢はすべてを受け入れるように目をつぶった。
「悪いがお主にはまだ生きててもらう」
シバが手を前に出して、目をつぶる。
「必要ないわ」
知佳がさっきまで手でひらひらしていた札をその塊に張った。
「鎮まれ」
黒い塊がその紙に吸い込まれていった。そしてその紙もまた灰となって消えていった。
「ほぉ、すまんかった」
「全くよ。早とちりよ。」
「されど、お主はわしを祓おうとしておったではないか?」
シバは目を青く光らせる。
「あら?だってあなた、怨霊じゃない」
「なっ」
「いい加減、選択しなさいよ」
「余計なお世話じゃ」
「あとそいつもライト君もそのままじゃ。憑りつかれるんじゃない?」
「そしたらわしがなんとかする」
「そう。まぁ好きにすればいいわ。」
そう言い残し、知佳は茉莉を持ち上げ去っていった。
「、、、、、よ」
「なんじゃ?」蓮矢が小さな声で何かを言っている。
「なんで俺を生かしたんだよ!」
蓮矢はそう言ってシバの胸倉をつかむ。
シバは冷たい目をしていった。
「加害者のくせしてよう簡単に死のうとするんじゃな」
そういって冷ややかな目をしていった。
「俺は!おれはn、、」
「何をしたというのじゃ」
そう言って詰め寄る。
「何百年見ていて毎度のように思うのじゃ。加害者のくせに何かを被害者からやり返されると、なぜか悲劇が起こったかのように振舞ういったい何がしたいのかのぉ」
蓮矢が何も言えずにいる。さらに畳みかけるように。
「あやつが実家に帰って一週間もたたずに東京へ逃げた意味わからんのか?お主が5年もの間、助けることを拒んだ。その間あいつはどんだけ苦しんだと思っとるんじゃ」
「それを言いに俺に会いに来たのか?」
蓮矢はシバを睨んだ。
「優しい奴ほど一気に感情があふれ出して収集がつかんくなるのじゃ。今のあいつはわしにはどうにもできぬ」
そう言ってふっと息を吐いたシバは。冷静な目でじっと蓮矢を見た。
「お主にしかできぬことがあるであろう」
シバは目を閉じて先ほどの記憶を思い出す。
「シバ、、、俺は、行かないよ」
そう言って光は笑った。
「なぜじゃ?」
「俺はあいつの正体知ってた。仲良くしようと思った。これからも。それは嘘じゃない」
「うむ。ならば行けばよいではないか」
「過去は思い出さなければ仲良くいられたのに。でも、思い出しちゃった。俺はずっとあいつが羨ましかった。楽しそうで、周りに人が集まって。俺をこんな風にした分際で。だから俺はあいつと仲良くした。だって、、」
シバは目を疑った。光の体から悪意のもやが大量に出てきた。
* * * * *
「俺はレン!よろしくな!」
好奇心で近づいてきたような目。
楽しそうな目。闇なんてなさそうな目
「初めまして。僕は蒼葉と言います。」
そう言って言って幸せそうで誠実な人間を演じた。
こいつと仲良くしようと思った。
めちゃめちゃ仲良くなってから本音をぶつけて関係を終わらせようとした。
だって、、
* * * * *
「地獄に落ちてほしいから」
シバが蓮矢を助けに行った後、光はボソッと呟いた。
「ごめん。母さん父さん。俺やっぱいい子向いてないや」
街頭一つない道をただ一人。闇夜に染まっていくようだった。




