片割れの宝②
「私、、」
翠がゆっくりと目を開けた。
「気が付いたのね♡」
愛漸が横に立っていた。
「すみません。取り乱してしまいました。」
翠は頭を押さえた。
「ストレスは体に良くないわ。もう少し寝てなさい♡」
「い、、、え」
翠は立ち上がった。
「翠!寝てなさい!」
「いいんですよ!」
「いいわけないでしょ!」
愛漸が声を荒げた。
「今じゃなきゃいけないんです」
「後継者争いのことかしら?」
翠はじっと愛漸を見た。
「そうですね。」
「別に、あれは始まってるわけでは、、」
「決着をつけるなら早いうちなんですよ」
「だとしても、倒れるわよ?」
「興味ないですね」
冷笑交じりの笑みを浮かべた。
愛漸は止めきれず翠は扉に手をかけた。
いつのまにか朝日がさしていたベッドの光から逃げるように、翠は部屋から出ようとした。
「翡呂、レンちゃんに怒ってたわよ?」
「そうですか。嬉しいです」
「貴方は愛されている。それだけは忘れないでね」
「邪魔ですね」
愛漸は耳を疑った。
「翠!」
パタンッ
愛漸の声は翠の耳には届かなかったのだろう。
居間を見ると狼雅が座っているのが分かった。
そそくさと通り抜けようとした。
「翠」
そう呼ばれて振り返る。
「なんでしょうか?」
「期待してるぞ」
「ありがとうございます」
そう言って外に出た。
それから、自分のもともとも家に戻った。
机に座り書き物を始めた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あぁ、やってもうたぁ」
ぼーっと天井を見上げる。
「誰もおらんし」
翡呂は少し膨れた。ベッドわきには誰もおらず一人だったっからだ。
「はぁ、結局一人か」
起き上がるとタオルみたいなものが落ちた。
「西武はんか、、?」
ガラガラ
誠が桶に水を溜めて帰ってきた。
「誠はん!」
「うわっ」
抱きついてきそうな勢いの翡呂から逃げるように後ろに下がった。
「ひどない?」
「ごめんって」
誠は笑った。
「もうちょい寝てろ」
そう言って翡呂をベッドに横にさせる。
誠はせっせとタオルを変えた。
「飯食えそうか?」
誠は立ち上がり聞いた。
「やーや」
翡呂が誠の袖をつかむ。
「一人も暗い部屋も嫌いや」
「わかった」
誠は椅子を出して座った。
手を出してきたから。握っておいた。
「ごめんな。翡呂」
「なにがや?」
「絶対にお前に言われる前に言うべきだった」
「そんなことないで。誰もどうしていいかわからへん状況だった」
それは翡呂も理解していた。
だから、翡呂もあの瞬間まで動かなかった。
「あいつは頭がええ。だから、多分、俺相手でも当主争い勝ってまう」
握ってた手に力が入る。
「監視しておくレベルしないと、またとんでもないことおこるで」
長い前髪の置くから睨むような視線が飛んでくる。
「大丈夫だ。いったん寝てろ」
「誠はん」
翡呂が握っている手を引っ張った。
「うわっ」
誠が翡呂の上に倒れこんだ。
「わっ大丈夫か、、、?」
そう言って顔を上げると、翡呂がじっと誠の顔を見ていた。
「やっぱり、誠はんやさしいから、寝ずに看病してくれたんや」
そう言って嬉しそうに笑った。
「誠はん、見てくれるゆうたから俺もちゃんとみるんや」
「わがままゆうて、ごめんな。それに付き合ってくれてありがとう。戻ってちゃんと寝てきーや」
ガラガラ
扉が開いた。
「oh、、、」
ガラガラ
扉が閉まった。
「ちょっまて!南野はん!というか、若干隙間開けて覗き見るのやめへんか!」
「あら、バレた♡」
「誠はん。俺は大丈夫やで」
そう言って誠を立たせた。
「愛漸さん来たし大丈夫か。じゃあ少し寝てくるよ」
そう言って誠は去っていった。
「お加減はいかが?」
愛漸が誠のいた席に座った。
「ごっつええで」
翡呂は起き上がった。
「ちょっ横になってなさいよ」
「寝すぎたんや。座らせてくれや」
「あーほら、南野はんも寝てない」
翡呂は起き上がって、ムスッとした。
「さすがね♡可愛い二人そろってダウンしてたらそれは心配よ」
「翠は?」
「朝から出てっちゃった」
残念そうに愛漸は笑った。
(止めても止まらへんかったか)
それを聞いて翡呂はため息をつく。
「そらそうやな。南野はん、、、」
「何かしら」
「断定はできひん。やけど」
「もう一波あいつは起こすぞ」
「そうだと思う。けど、あの子は全体的にが能力高すぎて、どうにもなんないのよね」
「そこが問題なんよな」
「まぁ、今は難しいこと考えないの」
「無理あるんよ」
「ほんとに、”妹”思いね」
「知っておったんか」
翡呂はニヤけた。
「当たり前よ。私が学校系の書類全部用意したり、いろいろ頑張ったんだから」
「まぁ、ほぼ俺らの親やもんな。南野はんと誌乃はん」
「あら♡嬉しいこと言ってくれるじゃない」
愛漸は嬉しそうに笑った。
「蓮矢はんの馬鹿は翠の部屋いったんかな」
「言ってないわ」
「あのくそ馬鹿が、あんときやっぱスタンガン当てとくべきやったな」
翡呂が口をとがらせる。
「そんなこと言わないの」
「あれ?俺のスタンガンは?」
「廻ちゃんが没収だってさ」
翡呂は口を開けて固まった。
「えっ?まじで?」
「まじね♡」
「俺あれないと、この家で最弱になるで?」
「大丈夫♡元からよ♡」
笑顔で愛漸は翡呂に言う。
「それは言わんといてや~」
翠は家での用事が終わり屋敷に戻った。
「おう!翠やん!元気かぁ?」
翡呂が飛び上がってきた。
「まぁ、何とか」
「俺は嬉しいで!ついにクマが薄くなった!」
そう言って翡呂は翠の顔をじっと顔を見た。
「怒ってくれたんだね」
「何の話や」
翡呂はすっとぼける。
「ありがとう」
「ようわからんが、どういたしましてやな」
「あと、スタンガンの件は、、、」
「すみませんでした」
翡呂はとんでもない速さで土下座した。
「それでチャラね」
「それは感謝するで」
そのまま通り過ぎ阿響斗の部屋についた。
コンッコンッ
「阿響斗?」
ガラガラ
「翠、どうしたの?」
阿響斗が出てきた。
「シュークリーム買ってきたのどう?」
「えっいいの!?」
阿響斗は嬉しそうに部屋にいれた。
にこにこでシュークリームを食べた。
「おいしいねぇ」
「そうだね」
阿響斗の部屋を見回す。
そして目の端に何かを見つけた。
「お返事書いたんですね」
「んー上手く書けてるかわかんないけど」
「仲直りできそう?」
「わかんない。僕の事、本当に好きなのかな。」
そう言って視線を落とす阿響斗を横目に、翠の計画は着々と進みだす。




