悲翠色の宝石③
「私達は下がっておきますね」
翠と阿響斗が一礼をして戻ろうとした。
「待ちなさい。そっちの背の高い人は残って」
「僕は?」
「あなたは、、、」
知佳がじっと阿響斗を見た。
「あなたはハーフ?」
その言葉で阿響斗は知佳を睨んだ。
「純潔の日本人だけど?」
「そうじゃないわよ。」
知佳がニコリと笑った。
「おねーさん何者?」
「さぁね。名乗るほどじゃないわ」
「ふーん。ねぇ誠様」
「なに?」
「僕もここいていいですか?」
「いいよ」
誠は穏やかに笑った。
「で?話ってなに?蓮矢」
誠が蓮矢に聞いた。
「誠、誌乃ってやつに会ったか?」
「あーあの女の人か。うん、会ったよ」
「そうか。お前、そいつに操られてるぞ?」
「アハハ」
誠は笑った。
「何がおかしい」
「馬鹿だね。本当に。もし、操られていたら、愛漸も解かれた時に君らの方へつくはずじゃん」
「確かにな。だけど、だったらなんで戻ってきた?」
誠はその言葉に少しだけ固まった。
「しかたないじゃん。こんな家で育ったんだよ。正義のヒーローになんてなれないよ」
「知佳ちゃん、糸切れそうか」
「無理ね。愛漸と違って、縛られている憎悪がより多くなってる」
「、、、っ」
誠の後ろにはっきりと鎖のようなものが見えた。
そして、誠の後ろにいる翠も同じように糸が見えた。
「なぁ、知佳ちゃん。翠の方は?」
「あれは、、、」
翠はすたすた知佳の方へ近づいた。
そして、口元に人差し指を置いた。
翠は蓮矢の方を向いて、ニコッと笑った。
「諦めた方がいいですよ。」
「翠、、?」
「私は誠様の味方です。だから、貴方を守るつもりはありません。」
「それは知ってる」
「だから、、、」
短剣を引っ張り出す。
「とっとと出てってください。邪魔なんですよ。」
* * * * *
「誠様。なんで帰ってきたんですか?」
「アハハ」
誠はいつも通りに笑う。
そして悲しそうな顔をした。
「俺はこんなところに生まれた人間だ。偉そうに正義を語っていいわけがない。誌乃って女にそう諭された時、すごく心揺らいじゃってさ」
「でも、それじゃ」
「わかってる。俺はここで俺の正義を振るう。だから」
まっすぐ翠を見た。
「協力してくれないか?」
「、、、!」
* * * * *
「翠!お前誠についたとしても誠がおかしくなったままでいいのか?」
そう言って翠を睨んだ。
「本当に失礼だなぁ」
誠は穏やかに言った。翠は蓮矢の視線にまっすぐ見返した。
「信用できてないのは蓮矢様でしょ」
「、、、っ」
蓮矢は何も言えなかった。
「正義面して偉そうに、自分の立場わかってるの?」
「俺は、ただお前らを」
「だからさ、私を奴隷だと思って生きてたんだろ?調子乗ってんなよ」
翠の糸もやがて鎖のような形になっている。
「まぁまぁ、落ち着いて」
そう言って誠が仲介に入る。
「ねぇ、言ってやってよ。誌乃」
誠はそう言って指を噛んで手を上にあげた。
そこから空中に文様のようなものが浮かび上がった。
そして、その場にいた全員を呑み込んだ。
「ここは?」
蓮矢はあたりを見渡す。
「ここは私の結界よ」
そう言って誌乃が現れた。
空は真っ黒く覆われて、枯れた草や木が生えていて、どこまでも続く空間。
「いきなりごめんなさい」
知佳が作り出した刀で誌乃を切ろうとした。
「あら、こちらこそ♡」
そう言って愛漸が現れた。
刀は誌乃には届かなかった。
「なんで、受け止めれるの」
人は貫通するようになっているはず。霊力を持たずに憑りつかれた状態の人間も例外ではない。
「憑りつかれてるんじゃないわよ♡」
そう言って立ち上がって構えをした。
「これは私達と誌乃様の愛の証よ♡」
「違うわけど、、」
誌乃が突っ込みを入れる。
「話し合いましょう。全て救われるために」
誌乃後ろに一人の霊が見えた。
「あれは、、、?」
「あれはあの女が契約した怨霊ね」
「その通りよ。私の大親友の霊よ」
そう言って、誌乃は嬉しそうに笑う。
「穂乃、、、?」
愛漸が驚いたように声を出した。
「愛漸、今まで黙っててごめんなさいね」
「いいえ。愛は貴方について来て心からよかったと思えてるわ♡」
そう言って愛漸は笑った。
「逆らうものは全員、愛が殺してあげる♡」
「頼もしいわ」
「誠、翠こっちにこい」
誌乃のすぐ近くにいる二人に声をかけた。
「俺らはこっち側だよ。蓮矢」
穏やかな顔で誠は笑った。
「ごもっともです」
翠はそう言った。
「話し合い始めていいかしら?」
そう言って誌乃が聞く。
「ごめんなさいね。私、あなたの話興味ないわ」
そう言って知佳が刀をもう一度振るった。愛漸が足で受けた。
「ほんとに下品な女だこと♡私が躾てあげるわ♡」
「ここでは死んでも大丈夫そうだから。遠慮なく相手できるわね」
そう言って知佳は刀をしまった。
「なにをする気なの?♡」
「あなたにじゃないわ。元のご主人に返そうかと。おいで」
そう言うと知佳の足元に文様が現れて猫が出てきた。
「ナー!」
そう言うと猫は蓮矢の方へ向かった。
「これで心置きなく戦えるわ」
「人の心配とは余裕そうで、愛、悲しいわ♡」
「蓮矢様は?話合う気はありますか?」
蓮矢は誌乃の方を向いた。
「いいぜ、聞いてやるよ」
「あら、嬉しい」




