第41話
その、いつもは温和な本っ子ちゃんの台詞におののく四人に、にやりと笑った当の本っ子ちゃん。いきなり窓から外に飛び出す。
驚く四人が見ていると、窓枠を蹴った後はあっという間も無く、古のドラゴンに変化し、同時にものすごい咆哮をあげた。それを合図にかどうかは分からないが、二階のヘキジョウさんっ子部屋から次々に咆哮をあげながら、ドラゴン状態で外に飛び出しているヘキジョウさんっ子達だ。
そこへキャシーがお供えのベルメリさんの好物だったスイーツを持ってきて、ベルメリさんのお顔近くに置くと、『迂闊なあたしを後でしかって』と涙ぐみ、『ありがとうニーユー、あなた達、後をお願いね』と、ニーセンユーセンに微笑み、本っ子と同じ行動になった。舘の外は物凄い戦いになったようだ。
「俺らも行こうぜ。すかし」
スカイが誘うとすかしもヘラリと笑った。そこへチーラさんを連れたヤーモさんが部屋に来て、
「ここで待っていてくださいね」
と言っている。抜き身の刀を左手に持っていて、何だか刀が危なげ。既に血のりがある。
スカイは思わず、
「もう、セーン似やったの、ヤーモ」
「ああ、チーラさんまで危ないとこだったけどな」
「あら、あたしは最初から分かっていたわ。調子を合わせていただけよ。他の皆は何時気付くかしらと思っていたわ。ニーユー良く感付いたわね」
ニーセンユーセン、
「あんなの、パパを愚弄しているよ。でも、敵が少ない方が良いし様子見さ」
そんな親子を見て、スカイは気が代わり、『すかし、皆を殺されないようにしてね』とすかしに頼んで外に出た。すかしは『んー』と考えていたけど、きっとスカイの頼みは聞いてくれると思う。
スカイはキャシーさん達と同じルートで外に出たものの、辺りの勝負はついていた。
只、ヤコ似の相手は、皆てこずっている、まだ若いヘキジョウさんっ子達である。
スカイは体から何時に無いパワーが、あふれ出て来ているのが分かった。思わず大声で叫ぶ。すると磁気パワーが、ヤコ似目掛けて走って行くのが分かった。
ヤコ似はスカイに炎の応酬をした。磁気パワーとぶつかると、空に突き上げるような火柱が立った。スカイは、度肝を抜かれた。半分は自分でやった事の筈だ。戦い慣れていないとも言える。ヤコ似は、驚いたスカイの隙をついて、また炎の攻撃に出るつもりのようだ。素早く、大きく口を開けて構えた。
そんなところに、何か大きくて長いものが、ものすごい速さで風を切って動いたようだ。というのも、スカイには何がなんだか、見えなかったのだが、見えた時には、大蛇がヤコ似の首を食いちぎったようで、首のないドラゴンがどっと倒れるし、すかしである大蛇はドラゴンの頭を食い難そうに咥えている。
「すかし、食うな。のどに詰まったらどうするんだ」
止めておくスカイ。すかしはドラゴンの頭をポロリと放した。そこへ、今朝のと、似たような乗り物に乗って、ヤッヤモ似、ヤモ似、そして、ベルメリ似の登場だった。
まさにグッドタイミングと言えるだろう。
「きゃー、ヤコッ」
ベルメリ似、大いに叫ぶが、そこをまた、すかしはタイミング良くベルメリの頭を食いちぎる。ヤッヤモ似、ヤモ似。古のドラゴンになろうとするが、本物よりイマイチ鈍いと言えた。
あっという間に、次々にすかしが頭を食いちぎっている。二つも同時に口にくわえているので、スカイは思わず、
「そんなもの食えるものか。すかし、止めとけ。顎が外れそうだぞ」
すかしに注意しておく。すかし、また、ぽろっと口から出した。何と三つも口に入れて居て、最後はえづきそうになっていた。
「無理すんなよ、すかし。あ、すかし。チーラさん達の護衛はどうした」
すかしは、人型になって不機嫌そうに、
「スカイが、困っていそうだったから来てやったのに。五月蝿く言いすぎるな、スカイは」
と文句を言って、館の中に戻って行った。
「お前ら、見ていておもしれーな。レンが何時もおもしろがるから気になっていたんだが」
ヤーモが、刀を鞘に入れながら笑う。
「ちぇ」
スカイは、くさくさしながら辺りの惨状を見回した。敵方は片付いたが、ヘキジョウさんっ子にも被害が出ているのが分かった。
「わわっ、大変だ。えーと癒しパワーは誰が持っていたっけ」
スカイが狼狽えていると、ヤーモは、
「磁気パワー持ちは、癒しパワーもあるだろ」
と言い出す。
そういう話、記憶にあったが、やった事の無いスカイだ。
「えーとー」
狼狽しながら側にいるセブンの四番目に手を伸ばす。とはいえ、いつも7人くっついて居るのだが、一人しかいないセブンに、
「他はどうした」
と聞いてみた。
「分からない。窓から出る時もあの部屋には居なかった。俺探すから、怪我は大した事無いし。キャシーさんからにして」
と、言われた。驚いたスカイ、
「えーと、キャシーさんは何処に……」
皆が指さす所には倒れたドラゴンが、
「キャシーさんしっかりして」
セブン達の居所は気になったが、スカイはキャシーさんが怪我と分かり慌てて駆け付け、傷をさすってみる。怪我は見る見るうちに癒えていっているが、
「キャシーさん?」
返事がない。スカイは嫌な感覚がして、顔の方に近づいてみた。
目を瞑ったままのドラゴン。お顔に触ってみると、この冷たさは不味いのではないかと思えた。
「キャシーさん、シッカリしてよ。直ぐ癒すからね」
「やめて、他の軽いけがの子を治して」
「え、そんな」
「あたし、ベルメリちゃんといつも一緒にいたいの。あたしも、もう死んでもいいと思う。ベルメリちゃんがもういないのに、何をして生きて行けばいいの」
「えーと、僕の世話は、どうなんでしょうかねー。すかしが、僕が困っているとか言い出して、チーラさん達の護衛をしないで僕を助けに来たんですけど、ぼくは護衛しているように言ったんですけどね」
「その言い方じゃ、あんたの世話よりすかしの世話よね。何だか不味い方向に行ってるでしょ」
「キャシーさんもそう思いますかー」
「まだ死ねないのか」
「直ぐ癒しますよー」
「やめてよ、自分で治すから。あんたは自分でできない子を癒してやって」
「そーですか、では」
スカイは横にいる、気になる怪我のドラゴンに取り掛かった。
『手が千切れそーなの』
「あ、千切れてもね、また生えてくるよー」
『ホント、じゃ安心だね』
機嫌良く人型になったヘキジョウさんっ子だが、手の傷はちぎった方が治りが良さそうだ。本人もそう判断したらしく、自分でちぎってみたのだが、
「ふぇーん、いだいよー」
「あらら、そりゃちぎれば痛いだろな」
なんだか、あほっぽいヘキジョウさんっ子を、泣くのでおぶって館に連れて行くと、ヤーモさん気付いて、
「あれ、まだ小さいのに戦ったのか。皆行っちまうからな。ごめんごめん、だれも止める奴居なかったんだな」
と言って頭をなでている。
『皆で、総決戦だったんだな。他所はどうだったのかな』
スカイが思っていると、ヤーモは、
「奴ら、この館を拠点にして、もう一回作戦を練り直す気でいたようだな。俺らがそれを阻止したんだから、終わったんじゃねー」
随分気楽な予想だが、スカイも『そういう事にしておこうかな、付き合いきれないし』
と、結論を言っておいた。
ヘキジョウさんっ子の部屋は、お疲れでへとへとのヘキジョウさんっ子が倒れるような睡眠状態に入った為、人型の重なっただんご状態がいくつも出来上がった。
「あれれ、下の子がつぶれちゃうよー」
スカイは一人ひとり引きはがして寝かせた。だが、ここにセブン達は居ない。
「あれ、俺ってヘキジョウさんっ子のお世話係みたいだ。暇だからお世話係しよ」
「俺も」
何かとスカイの真似をする、すかしもお世話係になると言い出すしで、どうやら平和が訪れたのをヤーモは感じた。
「後は、こいつらがでかくなるだけだな。パラレルワ-ルドの奴ら、どうやら勝ち目は無くなった様だ」
「そのようだね」
本っ子ちゃんも同意見の様で、力なく側にあった椅子に座った。
「あれっ、お前怪我しているな」
気付いたスカイ。
折れてしまった腕、ドラゴン化したらきっと翼の部分であり、キチンと癒さなければと、集中するスカイだった。
本っ子ちゃんは、
「ねー、スカイ。俺もすかしみたいにお前の使い魔になりたいんだけど、雇ってくれないかな」
「うん、いいよ。蔵書が燃えて、お前もする事無くなったんだな」『ところでセブンの内の6人見なかったか』
会話しながらコンタクトして聞いてみるスカイ。親のヤーモも居るのに、何故かヤーモにコンタクトしにくい。嫌な予感と言うものだろう。
「そうだね。俺の頭の中にほとんど入れちまっているけどな」『さっき、七分の六は、セーン似に庭でやられた。ヤーモあと一歩出遅れたな』
スカイ、ドキリとして、嫌な予感が的中して癒しをしているふりになってしまう。すると、すかしが、
「使い魔になって暴れたら、頭から本が零れ落ちるんじゃないか。静かにしていた方が良くは無いか」
スカイは、すかしが『本っ子ちゃん』と言う有名人がスカイの使い魔になる事で、自分が要らなくなりそうで、不安らしいのが分かりクスリとなった。
「なんか可笑しな事あるのか」
不安そうなすかしに、
「おれって、割と使い魔の需要多いよ。セーン達と違って強くないし、利口でも無いからね」
「ふうん」
そんな会話に、ヤーモ迄
「俺もフリーなんだけど」
と言い出した。スカイとしては大物過ぎる使い魔だが、きっとヤーモはセブン達の事で気落ちしているはずで、断れる訳も無く、
「ヤーモもフリーなんだねー。そうだね、俺の使い魔って自主的に働くって事で良いかな。だけど、すかしは違うぞ。俺の言う事聞くんだからな」
スカイの言っている意味をあまり考えていないすかし。なんだか嬉しそうで、皆、吹き出さないように、必死にうつむくのだった。
完
作者の思い付き的エピソードの数々の、この拙い小説を何とか完結させることが出来ました。最後まで読んで下さった皆様のおかげで、筆を折るようなこともなく完結できました。そして、このシリーズ名通りのニキ爺さんと、ユーリーン婆さんの玄孫、スカイとしての終わり方となったようでほっとしています。
ありがとうございました。




