第1話
前の小説「私の愛する使い魔さん」(シリーズ「気が付かない内に運命急上昇中その5)の続きです。
作者の癖的小説の書き方である、段々題名から遠くなって行き始める件が始まり、「シリーズその5」の次「シリーズその6」となります。題名も変更しました。念のためエピソードの少し先の方からつけております。
『今まで側に居たのに、何処にも居ないっていう事ある?』
『さっきまで居たのに消えてしまう事ってある?』
『あなたは利口なんでしょう。教えてよ』
「ごめんなさい、分からないし、知らないし、見当もつかないし」
キャシーは涙ながらにベルメリに訴えて、ベルメリはキャシーは知らないんだと分かった。
部屋で騒いでいると、ルーナおばさんが気の毒そうにやって来て、
「困ったわね、取りあえず夕食食べてね、お腹がすいていては良い知恵も浮かばないでしょ」
『お腹いっぱいだと知恵が湧くって、誰が言ったのかな。眠くなるんじゃないの』
ベルメリは思ったが、口には出さず。キャシーは泣きまねだったのか、涙が出ていない。チー、ラーは、べネルさんちに着いたと思ったら、すぐに消えた。何処へ行ったのか、ベルメリは、『どいつもこいつも、行先言わずに消えて行ってしまう。何処に行く気か言ったって良いんじゃない。言ったら何か減る訳』
「そうねぇ、何も食べずに居なくなって、お腹すかないのかしら」
ルーナおばさんも相槌を打つので、思った事が口をついてしゃべっていたと分かったベルメリだ。
「あたしは食べる。それから当てもない捜索に行くの」
「でももう夜だし、眠くならないかしら」
ルーナおばさんの意見は、意見として拝聴したものの、言う事を聞くつもりはないベルメリ。こういう時、瞬間移動が出来無い事は、はなはだしく不便と思う。今まで皆に連れられて移動していた件、無駄に皆を使っていたと反省してしまう。さしたる急ぎの件が無いのにである。
「そもそも、あたしに察せられないという事が、普通とは言えない状況だし、何処に行くべきかも、見当もつかないし。只、ヤコ君がニールに向かっていたのは確かだから、取りあえず今日の最終便のニール行きに乗るのよ、キャシー」
「分かっているわ」
「そのスピードで大丈夫なの、キャシーは」
「これが精一杯なの。ベルメリちゃんの準備に合わせて、食事は止めるわ」
「ホントにベルメリちゃんの最近の行動の速い事。おばさんも驚きなのよ。前のおっとりした雰囲気、何処に行ってしまったのかしら」
「さあねー、出るわよキャシー」
べネルさんが気を利かせて、
「車で送ろうかベルメリちゃん」
「そうねー、走っても間に合う時間だけど、体力は温存した方が良いかしら」
「そりゃそうだよ、ベルメリちゃんの闘争能力はここぞというときに使うんだよ」
「そうね」
ベルメリとキャシーはニール行きの最終便の船で出発した。直通なので、明日早朝に獣人国の港を経て、ニールの港に停泊するが、考えてみるとニールの隣、獣人国方面が行先だったという可能性はどうだろうか。そう感じたベルメリだか、取りあえずニールの館で相談すべきだと決めた。
ニールの港に着くと、例の公爵の車並の速さで走り館に着いた。キャシーの手を引いて走ったのは間違いだったようだ。キャシーを見ると、引きずってしまったようで、倒れて服は泥だらけだ。ノックもせず玄関のドアを開けたが、誰も咎める者は居なかった。
言い換えると、執事さんは居ないし、居るのは少人数のヘキジョウさんっ子だけだ。『他の子は?』ベルメリが訊くと、『お家の皆は、ヤコやヤッヤモを探しているの』
ギョッとしたベルメリ、『ヤコとヤッヤモは何処へ行ったの』『それを探しているの、昨日から』
「キャー」
ベルメリは叫んだ。どうする?今から。
時は遡って、昨日のハイスクール。
ヤコは食堂から一人抜け出すと、午前中自分に喧嘩を売って来たクラスメイトを探すことにした。ずいぶん生きの良い奴だったが、言い草と言うか考え方が気に食わなかった。思い出しても腹が立つ。
図書室からの帰り道、偶然と思ったが他の奴は先に行っているか遅れているのかで、奴と廊下に二人きりになる瞬間があった。すると、
「おい、恥知らずな奴。人間なんかの使い魔になって、俺達魔界一の強者の汚点じゃないか。不愉快だな。くたばりやがれ」
そう言って、魔力で破壊圧を送って来た。他の人間に当たればおそらく大怪我では済まされない、死んでしまいそうな危険な圧だった。
ヤコはトラブルを避けて、奴を連れて体育館裏まで瞬間移動した。
「ずいぶんと俺をなめた言い草じゃないか」
ヤコが奴の胸ぐらをつかんで、詰め寄ると、何故かキャシーが何処からかやって来て、ヤコを止めにかかってくる。大きなお世話と言うものだ。騒ぎになるのも不味い気がして、『後でな、覚えとけ』とコンタクトしたが、どうやら聞こえてはいない。気配は同族のようだったのに。
それから、もう一度訊いておきたい事が有った。『お前、何処の生まれの奴なんだ?今迄どこに居たって?』と。
ベルメリが中庭の方を見ながら、『きゅんと来た』とか言っていたので、おそらく中庭に居ると思い行ってみると、ベンチに座る奴と目が合う。
『お前んち、分かった。ニールに居ると噂だったからな。大きな館のどれかだろうと思ったら、仲間が先に行ってやがったからな、女王の計画で打ちのめす相手になっている所だった。仲間に俺も加わると言ってみたら来いって言うから行ってくらぁ、あの館がどうなるか、楽しみに待って居ろ。お前は行かない方が良いぞ。仲間は俺なんかよりずっと魔力があるし、死ぬよ』
ヤコはかっとなり飛び掛かったが、ほんの一瞬で取り逃がしてしまった。瞬間移動しようとする前、奴の様子を窺うと、分かった。スピードは有ったがドラゴンになって飛んでいた。瞬間移動は出来ないようだった。ヤコも飛んで追いかける事にした。行先はニールの館で間違いないかどうかは、不明と言えるだろう。奴の話をうのみには出来ない。
いくら早く飛べたとしても、瞬間移動にはかなわない、ヤコはあいつを追いかける事に決めたが、仲間って言うのが先にニキ爺さんの館を攻撃している可能性もあるのでは、等と考えると迷いはある。『どうしようかな』ヤコが困っていると、横にヤッヤモが表れた。瞬間移動で追いかけて来たのだ。『何だあいつ、ちんたら飛んでいやがるけど、このテンポでOKかな?』
「それは今考え中だった」
ヤコはたまらなくなって叫ぶ。
「そうなのか、先に行ってみようよ。仲間も居るんだろう」
ヤッヤモの意見により、2人で先に館に潜むやつの攻撃決定をした。舘の上空に瞬間移動でたどり着くと何故かヤモさんが表れた。
そうして、何やら分からない人より幾分か大きめの代物を出しながら、ヤモさんはため息をつき、
「ここの守備はお前らか、せいぜい頑張れや。この結界に奴らを入れて戦え、お前らも入ったら出られなくなるからな。結界の中は魔力は出せない。お前らもだからな、お前らが入る必要は無いからな。だから小さくしているんだからな。入ってしまえば大きくなっていくぞ。入るなよ」
しつこくヤモに念を押されて、カクカク頷くうちに、ヤモは別の場所に瞬間移動で行ってしまった。
ヤッヤモ、
「えーと、どこかに居ないかな。見慣れない奴ってとこでー、居た、あいつかな」
「そうだろな」
それじゃあとばかりに、『左右から攻撃したら、後ろに下がるんじゃないか』と安易に計画した二人、襲い掛かると生憎前に翻った。
『勘付いているとか』ヤッヤモはコンタクトしながら、攻撃の角度を変える、『次も避けたら、気付いていやがるだろな』ヤコが言うので、ヤッヤモ『誘って自分から入るなよ。どうせ感付いていたら奴は入らないし』『浮かせた結界とか、目立ったんじゃないか。庭の雑草の中に置いておくべきだったかも』『今更だな』
どうしたものかと思いながら、戦うが。2対1でも何だか危ない感じがして来た。魔力の圧が強い。




