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オマエの本性を暴いてやる!  作者: うちよう
我部香凜の本性を暴いてやる!
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第61話 不審な動き

 結論からいうと、美彩みさが予想した展開になった。


 一夜明けた翌日の朝、何の前触れもなくソイツは正面玄関に現れた。

 

 「——————久山ひさやま、ちょっといいか?」


 そう言って爽やかな笑顔で話かけてきたのは、クラスの陽キャ男子——————榊健斗さかき けんとだった。

 確か、花音かのん我部がべの一件で絶縁状態だったはずだけど、今更何の用だというのか。

 花音と我部に謝罪しろ……っていう雰囲気でもなさそうだし、コイツの考えていることがまるで分からない。

 分からないと言えば、この展開を予想していた美彩のこともだ。

 今回の答えも多分分かったと言っていたし、アイツは……どこまでのことを知っているのだろうか。

 妹ながら、少し恐ろしかった。

 

 「……久山? どうした、大丈夫か?」

 

 これまでのことが全部夢だったかのように、榊が普通に話しかけてくる。

 ……少し、探ってみるか。


 「いや、何でもない。てかお前、俺に怒ってたんじゃないのかよ」

 「……そうだな」

 「じゃあ、何で話しかけてくるんだよ。それを我慢してまで、お前は俺に何を言うつもりにしてんだ?」

 

 その問いかけに対して、榊は黙って俯いたままだ。

 マジで何しに来たんだ、コイツ。

 しばらくの沈黙の後に、彼は重い口をゆっくりと開いた。


 「…………昼休み、時間をくれないか?」

 「なんで?」

 「久山に、伝えたいことがあるからだ」

 「今ここで話せば良くないか?」

 「ここでは……話せない」

 「話にならないな。なんで貴重な昼休みをお前のために割かなきゃいけないんだよ。俺に何のメリットもない」


 それだけ言って、俺は榊をその場に置いて一人教室へと向かう。

 その背中に語りかけるように、榊は真剣な眼差しを向けながら言葉を綴った。


 「メリットならある。久山にとってのメリットだ。だから、昼休みに校舎裏で待ってる。待ってるからな」

 「……気持ち悪いお願い、してんじゃねぇよ」


 いつの間にか止まっていた足を、俺は再び動かす。

 榊が口にした俺にとってのメリットとは、一体なんだ?

 そもそも、メリットの基準はアイツ視点? それとも俺視点?

 第一、あの投稿の存在を陽キャであるアイツが知らないわけがない。

 それに、美彩はアイツが接触してくるこの展開を予想しているのだ。

 だとすれば、彼の言うメリットというのは投稿関係の線が極めて高いわけで……。


 ……そう、今の俺にはこれが限界なのだ。

 なんせ、情報が全く足りていない。

 だから、次に取るべき行動が立てられない。

 改めて外道げどう先生の言っていたことを痛感した。

 俺は、彼の言葉を思い出す。


 〝結論を急げば、その刃は必ず自分に向く〟


 この言葉を念頭に、まずは情報の量と質を上げるところから始めるとするか。

 会話術云々(うんぬん)の話はその後だ。


 そんなことを考えながら歩いていたら、いつの間にか教室の前を通り過ぎていた。

 考えすぎも、ほどほどにしないとな。


 「——————およ? 今日は後ろから入ってきたんだね? どこか行ってたの?」

 

 席に着くなり、後ろの席の住人である花音が話しかけてきた。

 俺は身体の向きを横向きにして、彼女の問いに応じる。


 「いや、考え事してたら教室通り過ぎてた」

 「……私でいやらしいことでも考えてた?」

 「なんでお前限定なんだよ。別にいやらしいことも考えてない」

 「つまんないのー。いやらしいこと、考えてくれてたら良かったのになー」


 机に両肘をついた花音が、不貞腐れながら呟く。

 ……ツッコまない。俺は決してツッコまないぞ。

 ツッコんだら最後、確実に墓穴を掘ることになる。

 黙って聞き流していたら、握り拳を作った彼女が顔を真っ赤にしながら肩を軽く叩いてきた。


 「ちょっと、何か言ってよ。こっちが恥ずかしくなってくるじゃん……」

 「いや、何か言ったら絶対に何か言ってくるつもりだっただろ」

 「当たり前じゃん。あぁもう、何で私がこんな目に……」


 恥ずかしさを隠すように、花音は項垂れながら机に突っ伏した。

 てか、俺なら恥ずかしい思いをさせてもいいんですか、そうですか。

 だから、恥ずかしさに耐え切れずに項垂れる彼女を見ても何とも思わなかった。


 ……さて、ここからどう話を切り出すか。

 忘れてはいけない。

 彼女もまた、あの投稿に関わる容疑者の一人なのだ。

 なぜ一昨日、俺と水瀬みなせの後をけていたのか。

 その件についても、きちんと確かめなければならなかった。


 「おっはよー! ……って、ひめのんどうしたの!? 大丈夫!?」

 

 登校してきた桜花おうかが、俺たちの元へやってきた。

 ……ちょうどいい、聞くなら今しかない。

 そう思って口を開きかけた直前、遮るように花音が言葉を放った。


 「はるちゃぁん……。マサくんがセクハラしてきたぁ……」

 「……ひさるん?」

 

 ものすっごい笑顔の桜花さん。

 でも、目元が全く笑ってない。

 殺気……と似たような雰囲気を感じ取り、気がつけば俺は一生懸命になって誤解を解いていた。

 

 「待て、違う。落ち着け。俺はそんなこと言ってない。コイツが恥ずかしいことを言って、勝手に自爆しただけなんだよ。俺は何も悪くない」

 「と、言っていますけど。ひめのんさん、異論はありますか?」

 「…………間違いなく、セクハラされました」

 「はい、有罪ですね」

 

 ナンジャソレ。

 いくら何でもこの裁判、滅茶苦茶すぎるわ。

 

 「死刑人。何か言い残す事はありますか?」

 「いつの間にか死刑確定してるし……。断固として俺は無実を主張する」

 「残念でしたぁ! この裁判において女の子の権力は最強なのです!」


 完全復活を果たした花音が、俺に向かってVサインを送ってくる。

 コイツ……マジで舐めてやがる……。

 ここは本気で一発ガツンと言ってやるか、と思ったけど、どうやらその必要はないらしい。


 「……ひめのん? ちょっといいかな」

 「え? なになに?」


 そして二人は、俺を残して教室の外へと出ていく

 それから待つこと数分後……彼女たちが戻ってきた。

 桜花の様子は変わりないのだが、花音の方はというと、さっきまでのテンションがまるで嘘のようにしゅんとしていた。

 ……何か言われたんだろうな、きっと。

 

 「ごめんなさい。アタシ、一人で勝手に暴走して……」

 「別にいいよ。男が女より立場が弱いのは社会の構図でもあるからな」

 「それを言われると何も言えなくなっちゃうけど……。何かお詫びさせてくれないかな?」

 「いや、だから別にいいよって。もう気にしてないし」

 「そういうわけにもいかないよ! ……そうだ! なら今度さ——————」


 すると桜花は、頬を朱色に染めてもじもじしながら言葉を綴った。


 「——————ふ、二人だけで、お出かけしない……?」

 「……はい?」


 急に何言ってんだ、この子。

 状況を飲み込めずにいると、しゅんとしていたはずの花音が突然声を上げた。

 

 「私も! 私もマサくんとデートしたい!」

 「そ、そうだね! その方がいいね! それじゃあ日程だけど、今週の日曜日にひめのん、来週の日曜日にアタシとお出かけ。それで、どうかな……?」

 

 二人が、上目遣いで俺のことを見てくる。

 てか、なんで俺は勝手に日曜日の予定を決められてるんだ?

 予定あったらどうするんだよ。まあ、ないんだけどさ。

 ……でも、よくよく考えたらこれはこれでチャンスかもしれない。

 花音と桜花、一人ずつと話ができる機会なんて滅多にない。

 異性の俺だからこそ、話せる内容を胸の内に秘めている可能性だってある。

 つまり、日曜日という一日を使って二人から何かしらの情報が得られるかもしれないというわけだ。


 それに、()()()()()()()()()()()ということは〝何かしら〟の意味が伴うわけで——————


 「——————分かった。大したもてなしはできないが、それでもよければ」

 「分かった、決まりね! 楽しみだな〜」

 「アタシも楽しみ!」

 

 俺も楽しみだよ。

 有益な情報、期待してる。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

今後とも、よろしくお願いします!

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