第51話 なんでカノジョがここに!?
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変なおっさんと出会った後、今度は家の前で可憐な美少女と出会った。
夕日に照らされるダークブルーの長髪とモデル顔負けの抜群の均整。
平凡な男子高校生の俺の目に焼き付くのに、そう時間はかからなかった。
というか、なんで彼女がここに?
疑問を投げかけるよりも先に、俺の帰宅に気が付いた彼女が歩み寄ってくる。
「こんばんは、お兄さん。今日も一日お疲れ様です」
「あぁ、えっと……水瀬さん、だっけ?」
「はい! 水無川水瀬です!」
これがエンジェルスマイルとでもいうのだろうか。
全身に溜まっていた疲れが嘘のように浄化されていく。
分かる、俺には分かるぞ。
美彩の見せるエンジェルスマイルは表面だけを取り繕った偽物感がするけど、水瀬の見せるエンジェルスマイルこそが本物であると……。
「お兄さん? どうかされましたか?」
下から覗き込むように、水瀬が様子を伺ってくる。
コイツ、無意識でやっているならマジで男の理性破壊兵器だな。
お嬢様学校って、こんな奴がいっぱいいるのだろうか。
もしかして美彩も……うっ、想像するだけで吐き気がしてきたわ。
「い、いや、何でもない。それより、どうしてここにいるんだ? また美彩にでも呼び出されたか?」
「いえ、今日はお兄さんに用事があって来ました」
「俺に用事?」
無意識に鼓動が早くなる。全身が火照る。
俺に用事って、一体どんな用事が……。
色々と思考を巡らせている俺の前で、水瀬は深々と頭を下げた。
「昨日は本当にすみませんでした。家に上がる前に表札とか色々と確認するべきでした」
「……あ、あぁ、その件ね。別に水瀬さんが悪いわけじゃないから気にしなくていいよ」
あ、あぁ、その件か。
変に期待してた自分が恥ずかしすぎる。
これは、モテない男子の悪癖だな。マジで気を付けよう……。
「いえ、気にするなという方が難しいですよ。高そうな紅茶もいただいてしまったし……」
「昨日も言ったと思うけど、本当に紅茶飲めないから。それに、水瀬さんたちが飲むまで存在すら知らなかったんだから無いも同然だよ」
「で、でも! 粗相してしまったのには変わりありません。ですから、私に何かお詫びさせてください!」
「いや、お詫びなら昨日してもらったと思うけど……」
どんだけお詫びしたいんだよ、この子は。
というか、これ以上はこっちが罪悪感を抱いてしまいそうになるからマジでやめて欲しい。
「元々はアイツが悪いんだから、これ以上は気にすることはないよ」
「あ、そうです! お兄さん、明日の予定って何かありますか?」
「えっと……、明日って何曜日だっけか」
「土曜日です!」
「なら、午前中だけ学校行って、午後は寝るっていう用事があるかなー」
「はい?」
キョトン顔をしながら首を傾げる水瀬。
どうやら、冗談というのは仲の良い人にしか使えないらしい。
今度、花音と桜花に試してみよう。
「悪い、さっきのは忘れてくれ。午前中は学校で、午後は予定空いてる」
「なるほど、それは良いこと聞きました!」
「良いこと?」
そして水瀬は、無防備だった俺の手を取って言葉を放った。
「お兄さん! 明日私と一緒にお買い物行きませんか?」
「……なんで?」
素朴な疑問である。
いくら美彩の兄だからとはいえ、いきなりその距離感はおかしくないか?
だって、昨日の今日だよ?
もしかして、何か……あるのか?
大事な妹の友達だから、あまり疑いたくはないんだけど……。
不信感が募りかけたが、その感情は数秒後には完全に消え失せていた。
「来週、美彩さんの誕生日ですよね! だから、お兄さんから色々とアドバイスが貰いたくて……」
「あぁ、そういうことか。そういうことなら別に構わないぞ。妹とはいえ、アイツには色々と迷惑かけてることだし、俺もプレゼント選びするわ」
「いいです! それ、絶対美彩さん喜びますよ!!」
俺の両手を握ったまま、水瀬がグイッと顔を近づけてくる。
コイツの危機管理能力低すぎだろ。
将来悪い男に捕まらないか心配だ。
そうならないためにも、美彩から厳重注意してもらうとしよう。
「それじゃあ、お兄さん。また明日お願いしますね!」
「あぁ、気をつけて帰れよ」
「はい! お気遣いありがとうございます!!」
そう言って天使は、夕日に向かうように軽い足取りで帰って行った。
それから気がついた。
そういえば俺、水瀬の連絡先知らないわ。
集合時間も場所も決めてないのに、明日大丈夫だろうか……。
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