第30話首輪
黒地に紫色の宝石が埋め込まれ、ラメが散りばめられた首輪。いい意味で首輪っぽくない。チョーカーやアクセサリーのようにも見える。
リードを取り付けるリングさえなければ、だが。
「エレミア。本当にいいの?」
「はい。本望です。これでやっとイリス様の証をいただける」
うっとりと目を細めるエレミア。筋金入りのドMだ。
白い首に首輪をあてがう。
高揚する胸は好意か、興奮か。
エレミアの細い首に――
「良く似合うね」
「えっ……あ、う、嬉しい、です……」
つい本音が漏れ、口元を抑えてしまうのは己の本来の性を隠し続けてきた影響だろう。
しかしエレミアは悦んでくれた。
本当の俺を見て、好きだと言ってくれる。ありがたいことだな。今まで人に見せちゃいけない、ダメな性癖だって思ってきたけど受け止めてくれるやつもいるんだな……
「イリス殿」
「あ、はい」
「もし式をあげるのならば、是非我が王宮で盛大にお祝い致しましょうぞ」
「へっ?!し、式?!いや、俺は結婚とかしませ」
「ありがとうございます!イリス様には最高級のタキシードをあしらってください!そして入場の際は私が四つん這いでイリス様に引っ張っていただくのです……」
「どんな式だ?!エレミア落ち着け!」
「あぁそれはいい考えよねぇ。イリスに似合うタキシードは私が一番知ってるもの。"私"が選ぶわ。それで誓いのキスの代わりに噛み痕の交換を……」
「するか!!痴女が!」
「美味いものをとにかく並べてくれ!アタシはド派手な衣装がいいぞ!イリスとお揃いのな!」
「うぅ……シュリがまともに聞こえてくる。すみません、後でキツく叱っときますので」
王様の前でなんたる無礼だ。娘を助けた恩があるとはいえ首を跳ねられかねない。しかし予想に反して王は豪快に笑った。
「皆、イリス殿のことが好きなのですなぁ。羨ましい限りですぞ」
王様に背中を叩かれる。気さくな人でよかった。
◇◇◇
「はぁ、なんか疲れた……」
「イリス様、次はいかがしますか?現在到達点の最下層までずばーんっと私の魔剣で貫きましょうか?」
「う、うん。59階から70階までがふきぬけになる訳だ。天変地異だよ正に」
「てかなんでこの女にだけ首輪あげてんのよ?!私はここに予約の印だってあるのよ!」
アヤは首筋に残る歯型を見せつけてきた。
「予約じゃねぇから……やむを得ないやつだからソレ」
「アタシもイリスからなにか欲しい!」
やいのやいの、モメはじめる女たち。俺はため息をこぼすと新しい銀色の鞭を手に取る。
軽く振ってエレミアの体を捕まえ、引き寄せる。
「きゃっ」
エレミアの腰を抱くと意地悪くアヤとシュリへと視線をやる。
「今回はエレミアへのご褒美。アヤもシュリもご褒美が欲しかったらいい子に頑張るんだぞ?」
エレミアは頬を赤らめ有頂天。アヤとシュリは悔しくて唇を噛み締めながらもどこか悦んでいる。
俺のありのままを好いてくれた女たち。俺もありのままの姿を見て、暴いて、愛でてやりたい。
SM配信者の冒険はまだ始まったばかり――




