第1話放送事故。俺のドS癖がリスナーにバレた
「つまんない。別れましょ」
「えっ」
ダンジョン内でいきなり振られた。
幼馴染で、三年も一緒にカップルパーティを組んできた恋人のアヤ。
桃色のショートカットを靡かせ、垂れた大人しげな目元を、冷たく尖らせる。
「なっなんで?俺たちこれまで喧嘩もした事ないし、毎日一緒に食事して添い寝もして……」
「だから、つまんないの。ちょっと顔がタイプで冒険者としても強かったから付き合ってただけ。いつまで経ってもキスもしてこないしダンジョンも中層階止まり。カップル配信も登録者数1000人から全然動かないし」
「えぇ……や、俺は、ダンジョンとか配信人気とかより、アヤと居れたらそれで」
「はぁ〜……それがつまんねぇつってんだよ。それに私、もう新しい男見つけたから。アンタは用済み」
アヤから放たれた言葉はあまりにショックで俺は何も言い返せなかった。
「じゃぁね。底辺冒険者のイリス君」
アヤが去り、俺は膝を着く。現実が受け止められなかった。
嘘だろ……?!アヤの本性ってあんな感じだったのか?!いつもはホワホワしてて小さなことで喜んで笑ってくれるような可愛い女の子だったのに……
悲しみと同時に湧き上がってくるのは、怒り。
「俺をコケにしやがって……クソ女ァ!」
岩壁が続くダンジョン内に、俺の怒号が響き渡った。
◇◇◇
「クッソォ……料理も魔物退治も野営準備も全部俺がやってたっつーのに、アイツは経験値と世話係としてしか俺を見てなかったのかよ」
ダンジョンではパーティメンバーが倒した魔物の経験値が、メンバー全員に付与される仕組み。最大四人のパーティを組めば効率よくレベルアップできるというものだ。
「元々一人みたいなもんだったけど、余計攻略難しくなるよなぁ……それに」
ポケットからドローンを取り出し起動させる。「LIVE」の赤ボタンを押せば配信が始まるのだ。
"カップルパーティイリアヤ"も今日で終わりだな……視聴者だって殆どがアヤの見た目に惹かれた輩ばっか。益々登録者数も減って、収益もあがらねぇときた
「ドン底だ……とりあえず配信はするか。今日はアヤは体調不良ってことにして……」
剣を腰に携え、セーフティエリアから魔物ゾーンへと足を踏み入れる。同時にLIVEのスイッチをオンにした。
456:あれ?アヤちゃんは?
457:体調不良だって乙。実は別れてたりして
配信中はコメントを空中のウィンドウに示すことができる。
察しのいいリスナーだな。別れたつったら視聴者半分以下……いや、もっと酷いことになるかもな
戦いは俺、リスナーを掴むのはアヤ。いい感じに分担していたはずだ。確かに視聴者は最近伸び悩んでいるが1000人を超える配信者は上位30%。上出来である。
アヤには物足りなかったのかもしれない。何もかも。でも俺の本当の欲望を目にしたら絶対嫌われてたしなぁ。抑え込もうとアヤに触れて来なかったのも逆効果って、付き合う前から終わってた?
458:あれ図星?マジでイリスぼっちになっちゃった?
459:アヤ出せアヤ出せアヤ出せ
「あー、今日はアヤは体調不良で……」
460:朗報。アヤちゃんアルベルトと配信してるw
461:NTR乙wそっち見に行くわ
462:イリス君可哀想
はぁあああ?!アイツさっきの今でもう別の男とカップル配信してるってことか?!俺と別れる前から浮気してんじゃねぇか!
俺は剣を強く握りしめると半ばヤケクソに言い放った。
「今日から一人でこのダンジョンをぶっ壊すんで、見たいやつだけ見ていけやクソォ!」
463:ヤケクソイリス、恨みのダンジョン攻略w
464:ダサすぎて笑える。チャンネル登録外しまーすwww
怒りに任せ、エリアに出現したゴブリンを切って切って切りまくる。
多少のストレス発散にはなったが、苛立ちや恨み、悲しみ。ドス黒い感情が消えない。
「はぁ、はぁ……今日の、配信ここまで、です……また明日」
小さく呟くのがやっとだった。項垂れながらLIVEを切断。
あーダメだ。全然スッキリしねぇ……久しぶりに、アレ、やるか
カメラ外に動けなくしたゴブリンを一体残しておいた。俺はアイテムボックスの隅から鞭を取り出す。
鞭を慣れた手つきで振り回し、最後に地面に叩きつけるとゴブリンが引きつった声を上げた。
「そんなビビんなよ……興奮しちまうだろうが……」
封印していた俺の性が顔を出す。
バチンッ
ゴブリンが死なない程度に鞭でしばく。ちなみにダンジョン生物はダンジョンが生み出すプログラムみたいなもの。だって流石の俺も生身の人間にこんなこと出来るほどイカれちゃいないから。
「ははぁっ逃げろ逃げろォ……テメェの汚ぇ叫び声を聞かせてくれよクソ雑魚モンスタァ?」
逃げられなくして、怯える相手を痛めつけて従わせる。
「ほらぁ、命が惜しけりゃ土下座しろォ?」
ペコペコ、ゴブリンが土下座してきたので頭を踏みつける。
「上手上手ゥ……いい子だなァ……俺のために、死ね」
最後は大振りの鞭に魔力を込め、首を刎ねる。
「あー!スッキリした!アヤと付き合ってた時は封印してたけど、やっぱ堪んねぇな〜!」
ヤバい性癖だと自覚はある。だから隠してきた。
こうやってたまーにプログラム相手に発散するので充分だからな〜。一人で気楽になったし、気ままにダンジョン攻略、続けますか!
しかし俺は気づいていなかったのだ。切ったはずの配信が、着きっぱなしだったことを――
◇◇◇
465:ドSイリス!性癖エグすぎ!大人しい男ほど隠れた性癖を持つ!
466:キモ、アヤちゃん別れて正解
467:私も踏んで欲しい
468:カッコイイ罵られたい支配されたい鞭で打って〜〜〜〜ん
469:ドM量産してて草。放送事故だろw
470:イリス様……どうか私を貴方のお傍に置いてください
◇◇◇
俺はまだ知らなかった。この放送事故を機に、ドM女が押し寄せてくることを――




