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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十二章:社会貢献

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747:スノーオウルの枕とその効能 ~効き過ぎ感はある~

 良い時間になったので布団の山本に連絡を入れ、今から行くと伝える。ダーククロウの羽根がおよそ十キログラムの納品もあることを伝えると、非常に助かるとの感想が届いた。細かい事は現地で話せばいいのでここではあくまで必要だということだけを聞いておいた。


 スノーオウルの羽根についても在庫はあるがどうするか確認を取ったが、念のため預からせてほしいとの事なので、また二キログラム用意しておく。


 車に羽根をそれぞれ詰め込むといつもの周りの車を刺激しない程度の安全運転で布団の山本に到着。早速入口で声をかけてまずダーククロウの羽根の納品を済ませる。スノーオウルは今日の出来上がり次第、というところか。


「今日もお疲れ様です。すっかり寒くなりましたね」

「急に冬が来た、という感じがいたします。おかげで通常の羽毛布団のほうも売れ行きは好調でして、今年になって初めて羽毛布団を使う、という高齢者の方も増えてまいりました。やはり年を取ると綿の布団では重すぎる、という感じで腰が辛いそうですよ」


 近況報告とお互いの売り上げの話、そしていつも通り七三にわけてもらってあるダーククロウの羽根の納品代金を受け取ると、まずは一段落、商売の話に戻る。


「ダーククロウのほうは順調ですか。電話口で聞いた感じだと材料不足というイメージが付きますが」

「実は、ここ寒くなり始めてから本当に気持ちよく眠れるなら買ってみたい、というお客様がにわかに増えまして。サンプルとして置いてある布団を試しに短時間使ってみた所疲れも取れて心地よいとお気に入りになり、そのまま製造待ちの行列に名前を連ねていく方が多くございまして。おかげで……正直に申しますと倍ぐらいの納品が有っても良いぐらいになってきまして」


 山本店長は困り顔になりつつも、しっかり金が稼げて嬉しいという気持ちは隠しきれない様で、目はキッチリ大きなシノギの匂いがすると語っている。


「うーん、丸一日張り込んでかき集め続けるというのは難しくはないんですが、結構体に来るんですよね。モンスターが湧く度に寝起きしてそこまで行って、帰ってきてまた眠る……という結構なハードスケジュールにはなります。正直なところ、同じレベルで羽根を回収できる手伝いが一パーティー欲しい所ですね」

「だとすると、お客様には待ってもらうしかないですね。素材が入荷できないならどうしようもないですからね」


 山本店長はそう言いながらゆっくり熱い茶を啜る。どうやら無理にでも納品しに来い、とは言わないらしい。


「頑張って十日に一度、ぐらいのペースで納品できるように努力はしてみますよ」

「御無理は言いませんので、どうか探索のついでぐらいで気楽にやってください。お客様にはいつ布団が出来上がるか保証できないというのも込みで納得してもらってますので、どうぞご遠慮は無いようにお願いいたします。安村様の実力とは乖離した階層で作業していただいている事は承知しておりますので、どうかいつも通りに探索していってくださいませ」


 そこまで言われると逆に頑張ってしまいたくなるのが性ではあるが、確かに丸一日張り付いてダーククロウだけを倒し続けるのはもうやったし、あれは相当に神経をすり減らす作業であることが解っている。この手はもう使えないだろうな。


「それで、レインで頂いた枕の件ですが」

「はい、完成してございます。ご注文通り同じお品を二つ。枕カバーは当方で通気性の良い香りを存分に楽しめるものを選ばせていただきました。是非実際に使ってみて感想を聞かせていただければと思っております。実際に使ったスタッフの感想だと、二徹三徹しなくてもこれさえあれば短時間睡眠でほぼ同じことが出来ると大好評でして」

「そのスタッフさん大丈夫なんですか? 無理してません? 」

「なんでも、趣味のゲームを夜通しやり続けて明け方に寝て起きてもゲームをやり続けた時間分の睡眠が確保できると太鼓判を押しています。元々夜中に遊びすぎて仕事中に意識が散漫になりやすい店員だったのですが、その枕を使いだしてから明らかに仕事中の集中力や熱意が上がりました。サンプルだったのでそのままその店員に使い続けてもらってますが、今のところ中毒性等の症状は見られていませんね。ただ、返せと言ったら全力でお断りされたのですが」


 そら睡眠時間が短くて済み、その短くした分でやる事があるならお断りもするわな。製作費を考えたらさすがに気が引けると返してくる可能性はあるが、ボーナス払いで買い取らせてくださいと言い出す可能性もある。世間ではそろそろその時期だ。自己投資としてはそう悪い話ではないだろう。


「せっかくですからそのまま使い続けてもらって、どのくらいの期間効果があるのか、性格や体調、その他もろもろに副作用が無いか、という点についてモルモットになってもらった方が前向きな考えかもしれませんね。後は原価だけこっそり教えて買い取りにさせるのが店の儲けにはなると思いますね。今年は売り上げも好調なようですし、こっちのほうもそれなりに出してあげられるんでしょう?」


 指で銭のマークを見せて山本店長にサインを送る。店長も同じサインを送り、バッチリ稼いでいるというお互いの利益を確かめ合う。ここ一年で俺が持ち込んだダーククロウの羽根の金額は溜まり溜まって結構な金額になっている。それだけでも充分に稼いでいる事は把握済みのはずだ。今まで何回ぐらいここに来たっけな。


「そこはまぁ、従業員の頑張りがあってこそですし、ダーククロウの布団は御存じの通り、当店オリジナルということで結構お値段のほうを張らしていただいております。その分の利益も積ませてもらっておりますし、従業員に還元する形で太っ腹な所を見せて更にやる気を出してもらおうかと思います」


 聞いたか従業員諸君、ボーナスは期待して良いそうだぞ。チラッと他の従業員の方へ目をやると、話を聞いていたのか小さくガッツポーズしている。これからも励んでくれることを祈る。


「では、サンプルのほうは受け取っていこうと思います。枕以外にはどういう感じですかね? 」

「今のところ手元に来ている返事ですが、クッション素材にするには少々柔らかさが過ぎるという話でした。こっちで解っている特性はサンプルに添付して送ってはいるんですが、やはり睡眠用の道具、という第一印象を拭えないという感じでしょうか。また、化学的に分析して香りの成分がどういう分子構造をしているか、等はお願いして結果を待っているところです。そちらの方は後日結果が出るかと思いますので、次回のお取引の際にお話しできればいいかなと思っております」

「では今のところ見通しが立つのはキャンプ用品方面、ということになりますかね」

「そうですね。割と多めにサンプルを渡しておいたので混ぜ物はするかもしれませんがその状態でも効果が有るか……要は香りの密度の問題ですね。どのぐらいまで薄めても効果があるのか、というのがあちらにお任せしている分析点になります。安村様から教えていただいた通りお高い材料ですので、効果がある範囲でどれぐらいまでなら効果を維持しつつコストを下げて商品として提供できるか、そのあたりを探っていこうと思っています」


 そうか、混ぜ物をしても問題ないのか。混ぜ物という視点が抜けていたな。


「つまり、ダーククロウの羽根とスノーオウルの羽根を混ぜて両方の特性を持った寝具を作るという可能性もあるわけですか」

「そうなります。その場合枕だけでなく布団にも応用を利かせることが出来ますし、お求めやすい価格で布団を作ることも出来ますので商品を提供する側としてもその、儲けの糸口を見つけ出すことも悪くないかと。その点は本来当社でやるほうが直接効果が確認できて良いんだとは思いますが、事業規模の問題で複数サンプルを作ってそれぞれ比べる、という点におきましてはサンプルを送らせてもらった企業様のほうが大きい会社ですので、あちらの研究結果を参照するほうが確実だと考えています」


 なるほど。専門は専門家に、とちゃんと投げてるんだな。なら俺もお店にお任せするほうが良さそうだ。


「で、今日もサンプルは積んできてあるんですが、どうします? 要ります? 」

「そうですね、念のため預からせてもらってよろしいでしょうか。後日サンプルの件や報告もかねて、使用量やサンプルとしてお渡しした枕、それと他所の企業様にサンプルとして渡した物を製品化した場合のこちらの取り分等を整理した上で、安村様にはお支払いをさせていただきたく存じます」

「解りました。ではこれで合計六キログラム分お渡しした……ということになりますがそれでお願いします」

「また二キログラムもお持ち込みくださったのですか。ありがとうございます」


 車へ荷物を取りに行く。ついでだ、年末のお歳暮の代わりということでドウラクの身を三つほど渡しておくか。保管庫からこっそりと出し、これも袋に入れて店内に戻ってくる。


「持ってきました。それとこれは普段お付き合いしていただいているお礼としてお歳暮代わりにお納めください」


 ドウラクの身を渡す。店長は袋から出した後、不思議そうに見つめている。


「カニに見えますが、これもダンジョンの物ですか? 」

「ドウラク、というモンスターのドロップ品です。まだ値段の決まってない食材で市場には出回っていない最深層でのドロップ品です。是非ご賞味ください。例によってダンジョンドロップなので。刺身でも塩茹ででも美味しく食べられますよ」

「なるほど、パッケージを開けるまでは新鮮そのものということですか。これは貴重な機会ですね。ではせっかくですし仕事納めの日にでもみんなにふるまう事に致します。こんなものまでありがとうございます」


 店長も素直に受け取ってくれた。とりあえずメモに「布団の山本 スノーオウル六キログラム 三百万円」と書き込んでおく。いずれまとめて請求しなきゃいけない金額だ、今の内に忘れずに書き記しておこう。年末や年始になって後からアレいくらだっけ? とならないために必要な措置だ。決して老化ではない。


「では、私はこのままダンジョンに潜るのでそろそろお暇致します。作っていただいたサンプルは早速使ってみて効果のほどを確かめようかとも思います。まだまだ実験データは欲しいでしょうし」

「正直に言いますとおっしゃる通りですね。ぜひ感想をお願いいたします」


 一つ四百グラムほどの枕を二つ受け取り、店を出る。店長は入り口を出て見送ってくれた。ドウラクの身が気に入ったのだろうか。カニ好きならまた欲しいと言われかねないが、これ結局いくらで落ち着くんだろうな。生のカニがどこでも食えるとなれば相当な高値になりそうだな。精々ダンジョンに通ってカニの足を折っている間に決めてほしいものだ。


 車を走らせ安全運転で帰り、家に車を停めるとそのままダンジョンへ。正直なところ、そろそろ俺専用の共用駐車場があっても良い気はする。家に帰ってまた電車とバスで出かけるというのは面倒くさい。ぜいたくを言えば布団の山本を出てそのままダンジョンに来たかった。使うかどうかわからないけど駐車場一カ所都合できないかどうか、ギルマスに一応進言しておくか。


 さて、午後の飯には……まだちょっと早いな。ダンジョンへ行って茂君してちょうどいい感じか。なら七層で飯休憩して、仮眠のついでに早速スノーオウルの枕の性能テストと行こう。この枕一つで二十万円プラス製作費がかかっている中々の代物だが、テスターの意見と店長の感想を聞く限りかなりのスペックを有していることは間違いない。使ってみて俺なりの感想を感じてみよう。


 そうと決まれば出発だ。家を出る前に装備はチェックしたからな。保管庫周りは問題なし、装備は……


 万能熊手、二つ、ヨシ!

 柄、ヨシ!

 メモ帳、ヨシ!


 指さし確認は大事である。とりあえずこいつらが居れば通常のダンジョンなら問題ないだろう。そろそろ指さし確認する内容も変化させていくべきかな。面倒くさくなった時に考えよう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 睡眠障害の人にはよさそうですねぇ ホテルとかでもこの枕ありまぁぁすで客よべそう
[一言] あー医療用は想像もしなかったわ 全身麻酔よりもリラックスした睡眠状態で局所麻酔かけたほうが負担は少なそう 術後にポーション投与で負担はさらに軽くなるから 高齢者の手術の成功率も上がりそうよ…
[一言] 開封するまで賞味期限を気にしないでいいってのはお中元とかお歳暮の贈り物に良さそうですねえドウラクの身
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