表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十二章:社会貢献

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

746/1378

746:近況報告

 寒い朝だ。世相は十二月。本格的に冬の訪れを感じさせてきた。そろそろ毛布の準備でもしようかと思っている。毛布を羽毛布団の上にかければより濃密なダーククロウの香りが俺を包んでくれる事だろう。今からすでに楽しみだ、明日にでも出してしまおうかな。


 でもその前にクローゼットから出して暫く室内天日干しをして余計な水分やらクローゼットの香りやらを取り去ってやる必要があるな。水魔法が使えたら自力で洗濯乾燥も楽にできたんだろうか。そろそろそういう色気を出しても良いお年頃かもしれない。


 朝食を取り、さて昼食には何を食べようかといつもの流れになる所で布団の山本からのレインメッセージが届いた。


「サンプル枕完成しました。ご予定が合えば連絡お願いします」


 時間的にも明らかに店の宣伝目的の送信ではない。とすると山本店長から直接送られてきた個人あてのメッセージということだろう。これはレインで送り返すよりも電話で直接話した方がいいな。他人を巻き込む連絡や商談、相談は出来るだけ相手の手間を減らすために早く対応する。俺が普段から心がけている事だ。今日行って受け取って、ダンジョンで早速使ってみるとしよう。


 だとすると昼食はダンジョンでも家でも食べれるお手軽なもののほうが良い。使いまわしで申し訳ないが、今日はおじや風ウルフ肉炒めだ。ウルフ肉を細かく切り刻みネギやショウガたれと一緒に混ぜ、胡椒を利かせて一炒め。炒め終わったらパックライスを水分多めに温めた後そこに混ぜ込んでさらに煮ていく。フライパンからはネギのいい香りが漂う。そしてほのかに香るショウガと胡椒。ここにニンニクを入れて更に香りだつような一品にしたいところだがそこはちょっとだけ我慢しておく。


 出来上がったら温かいうちにタッパー容器に移してふたを閉めて保管庫へ。これでアツアツの物がどこでも食える。後は適当なサラダを散らせたものを用意して食事の準備終わりっと。サラダはひんやりしたまま、弁当はアツアツ、一緒に持ち歩いてもそれぞれをそのまま保持して食べられるのは保管庫のおかげである。ついでにダーククロウの羽根の納品分も用意しておこう。


 いつも通り十キログラム分の羽根を用意しておくと、自分はそのままダンジョンへ行けるように準備をしておく。どうせスーツで行くんだ、商談にしろ探索にしろ準備が出来上がっていることに問題は無いだろう。


 万能熊手二つ、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 インナースーツ、ヨシ!

 ワイシャツ、ヨシ! 予備もヨシ!

 サスペンダー、ペチン……ヨシ!

 チョッキ、ヨシ!

 特注スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 冷えた水、コーラ、その他飲料、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 枕、お泊まりセット、ヨシ!

 ドローン、ヨシ!

 バッテリー類、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!

 納品用のダーククロウの羽根、ヨシ!


 指さし確認は大事である。さぁ、後は時間を待つだけだ。その間に……コンビニで探索者雑誌でも探してくるか。まだ時間に余裕がある、それまでに細かな生活物資の補充やなんかを済ませてしまおう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 探索者ランクがBからB+に変わってしばらく経った。B+ランクという新しいカテゴリの増設に伴い、Bランク探索者は全ての民間ダンジョンで公式に三十層まで自由に潜ることが許可されるようになった。また、Cランクのカテゴリの確実な昇級が約束された事で急いでCランク試験を受けに行った者。Bランクになったので……と早速二十二層に乗り込みゴキに震え上がって帰ってきた者。二十四層のクイーンスパイダーはどのダンジョンにもあるらしく、それを見に行って見惚れている間に襲撃を受けて撤退してくる者と探索者は新しい地域の開放にそれぞれ一喜一憂している。


 またダンジョン庁は、Bランクまでの昇級基準を明確にすることで高レベル探索者を広く受け入れるという姿勢を取り、その為に三十層までの情報を機密指定から解除して一般に開放した。いわゆるCランクネットワークの開示である。今までBランクだった探索者については、ダンジョンマスター周りの情報の機密指定はそのままだが、三十層までの情報や階層の地図、モンスターの特徴など様々な情報の開示が公式的に許可され、一般探索者だけでなく探索者ではない一般人にもそれらにアクセスできる環境を整えた。


 海外の探索者間でも日本の情報開示は予想外で、国際ダンジョン機構からは一方的な情報開示は各国協調路線を取っていることに対して混乱をきたすのではないかといくつかの国から指摘が入ったが、一番肝心な情報であるダンジョンマスター周りの情報を開示しなかったことで機密性は保たれているし、そこを開示するのは今ではないと断言する事により混乱は収まった。が、各国のダンジョン庁に相当する機関では、日本が先んじてダンジョンマスターの存在を公開するんじゃないか、という疑念は払しょくされていない模様だ。


 ここまでの情報はギルマスや真中長官から仕入れた情報もいくつかあるが、ネットでも徐々に拡散され始め、ダンジョン庁がまだまだ情報を隠している、ということだけは周知されている形になった。


 ちなみに、二十一層以降はゴキの壁という新しい探索者間カテゴリが作成され、ダンジョンコックローチに襲われても精神が無事でいられるかどうか、というのはCランクからBランクにせっかく上がったのにゴキが倒せなくてそこより先の探索を断念する、という探索者も居たことから名づけられたらしい。


 これらの動きに伴い探索者にも判断する場面がいくつか増えた。各地のダンジョンのスキルオーブに夢を見て新しいダンジョンへ潜ろうと移住を始める者。より深く、より楽しみを求めて探索を進めていく者。早々と三十層に到着してエルダートレントと記念写真を撮る猛者。トレントの実を齧ってあの高揚感を楽しんで大麻よりキマる、と得意げに配信していた探索者が大麻取締法違反で検挙される等、大小様々なネタはあるものの、おおむねダンジョン庁の動きは好意的に取られている。


 とりあえず自分たちのやる事は、カニうま島でカニの身を削いだりトライデントを集めては保管庫に放り込んでいく作業に従事するか、三十七層三十八層あたりでスノーオウルの羽根を集めて布団の山本向けの材料として保管庫に在庫を溜め続けている。


 結構な量が溜まってきたが、布団を作って枕を作って……となるととてもじゃないが追いつかない量ではある。B+探索者が増えた訳でもないので、この辺の素材の価値や利用法についてはまだまだ研究中ではあるが、寝具というカテゴリにおいて一つ実績を作ったことで他のジャンルの素材として広まっていくかどうかはまだ解らないが徐々に価値を不動のものにしていくことだろう。


 個人的には次の改定で値下がりはするだろうな、とは思っているが、下限一杯値下がりしても百グラム四万円という高級素材であることに変わりはなく、またスノーオウルを倒して羽根を手に入れてもそのまま素材を傷つけることなく地上まで運び出す作業はかなり難しいため、ダーククロウの羽根と共に採取難易度の高い商品である可能性が非常に高いんじゃないか、というのが今のところの感想だ。


 三十六層かカニうま島を抜ける間に折れたり曲がったり磯の匂いが付いたりするのは仕方がない所であり、その辺の移動の間ノーリスクで運搬できる保管庫だからこそできる芸当だというのは当分変わりそうにない。


 カニうま島といえば、ダンジョン国際機構上で四十一層以降の情報を最初に持ち帰ったダンジョン庁の功績で、モンスターの命名権利を得られたため、新たに出て来たカニとリザードマンの名前を付けたらしい。


 リザードマンはそのままリザードマンとなり、カニはドウラクという名前に決まった。セーフなのかアウトなのか非常に判断に困る所だが、俺の中では解りやすいと評判である。その話を聞いた瞬間俺の保管庫の中身もカニの身からドウラクの身と名前が変更された。これ、名前からカニって連想できるのは日本人でも割と一部になるんじゃないかとも思ったんだが、写真と動画を見て真中長官がこれしかない、と主張して憚らなかったらしい。その拘りをもっと別の方面に活かしてほしい所である。


 小西ダンジョンの周りは更に発展を遂げた。今度スーパーとホームセンター……つまり地方の準田舎によく設置されている二点セットが小西ダンジョンの近くにオープンするらしい。近くと言っても歩いて十分から二十分かかる距離だが、探索者的視点から言うと近くになる。そのホームセンターに薬局が併設され、その中ではポーションの販売が公的に認められることになった。


 ダンジョンの近くでダンジョンから採れた産物を販売するというコンセプトを掲げられたこの店舗達は、スーパーでもダンジョン産の肉を多めに扱い、小西ダンジョンから直接卸しに行くことで中間コストを削減しダンジョン庁により利益を生み出させるために色々考えてみているらしい。


 ポーションの販売については形式上ではあるが薬剤師が専属で対応し、これまでに積み上げられたポーションによる治験データを元に必要だと判断された場合に処方する、という形になっているらしい。


 ポーションを普段から常備している俺でもお世話になった回数は片手で数えられる程度ではあるが、それなりに重傷でも効き目があったことから信頼性については充分に満足している。しかし、処方するにあたってデメリットである所のお腹がやたら空く、という効果を確実なものにするために食後すぐに服用するのはダメ、という注意書きが最低限添付されている。


 満腹状態でポーションを飲むことですぐにカロリー欠乏症……というか急激な空腹を催すが、満腹のためそれ以上のカロリーが摂取できない、という状態を防ぐためらしい。カロリーを摂取する事を体が望むようにするためにも、満腹でポーションを飲むべきではないという知見が得られているだけでもポーションの研究は進んでいるんだなと思う次第である。


 それ以外で大きな変化というと、二十一層の要塞化、というか居住地化が始まっているのが大きな点だろうか。


 二十一層はこれまで見て来たとおり廃墟であり、穴は開いてるわ天井は抜けてるわ、と居住スペースがある割には殺風景で穴だらけな場所である。二十一層をキャンプ地としているBランクCランクにとってプライベートスペースを囲い込むことは重要であり、落ち着いて休憩できるような形にするため、各自でブルーシートやマット、壁の補修用の資材なんかを持ち込んで建て直しみたいなことを始めた。


 もちろんダンジョンオブジェクトである壁や床、天井を破壊して作り直すことはできないので、日曜大工的な手法で穴をふさいだり立て掛け式のカーテンで視線を遮ったり、そう言う活動が盛んになってきた。


 Bランクでも二十八層までたどり着いてそちらへ新たに拠点を移す時には、今後誰かが使うかもしれないということでそのまま設置したままにし、人によっては表札を掲げたり俺が昔七層でやっていたように外出中や仮眠中などの札を掲げることでお互い気持ちよく休憩が出来るようになってきている。


 おかげで二十層や二十二層が探索者であふれかえり、まともな狩りがしづらいという状況にはなっているのだが、そもそも二十一層近辺に今のところ用事がないのでそのまま放置されてはいるが、そのうち二十一層のテントも片付ける時期が来るのかもしれないな、とは考えている。


 一応俺たち安村パーティーと新浜パーティーがB+ランクということでダンジョンの更に奥まで向かっているのは公然の秘密であるので深くは追及されないが、二十一層の退去を求められた場合は素直に応じようかなあとは思っている。エレベーターから近く周りを見通せる廃墟ビューイング性の高いこの居住地はなんだかんだ言ってダンジョンの栄えっぷりを見渡すにはちょうどいい場所になっている。


 そんな中で俺たちがやっている事と言えばソロでのトレント狩りとペアでのスノーオウルの羽根集め、もしくはドウラクの身とトライデントのため込みである。ドウラクの身とドウラクミソはまだ値段が付かないらしく、値段交渉が難航している。


 それもそのはず、いつでもどこでも新鮮で腐らない生のカニが食える、というフレーズはどこの料亭でもどこの料理屋でも歓迎され、あまりに安すぎると冬の寒い海でカニを取りに行っている漁師の仕事を圧迫し、儲けを減らす可能性が非常に高い。そうならないためにもそこそこ高い値段で査定、販売をしたいところだ。


 しかし高すぎても逆に需要が無い、ということにもなるので値付けが難しく、時々俺にドウラクの身を要求してはあちこちの料亭で会合ついでに持ち込んで食べたり、漁業組合と話をしながら食べたり、主に食べて消費している。かなりの持ち出しの量なので、後で値段が決まったらダンジョン庁に今まで俺の手元から出荷したドウラクの身とドウラクミソについて請求する予定である。


 この先、ゴブ剣ではその防御力を貫くことが難しいモンスターが出てくるだろう。そんな相手にも通用する可能性があるとして、射出武器ラインナップにリザードマンが稀に落とすトライデントが新たに加わることになった。まだまだ数は少ないが、射出試験でドウラクの甲羅を貫通するだけの威力を発揮したことにより、確実にスケ剣やゴブ剣よりも頼りになる武器という位置を得ることに成功した。


 今のところまだ三本しかないが、この三本を上手く使いまわしつつ、もっと数を溜めていこうと思っている。高橋さん達チームTWYSには、トライデントが出たら原価で譲ってくれないか、という話をつけてあるので、彼らが拾って持ち帰ってきてくれた分はそのまま保管庫に念のためしまい込んである札束で頬を殴って買収しようかと思っている。


 近況報告はそんなところかな。要するにいつも通りって事だ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 満腹時に服用が駄目の理屈がわかりません。通常時の体内カロリーをA,お腹一杯食べたときの摂取カロリーをB,薬効の消費カロリーをXとすると、X>Aでは服用即ハンガーノックですよね。X=Aく…
[一言] 逮捕ーw 安全で健康にも悪くないキマル食べ物として広がってある意味ギャングの敵になりそうな探索者たちww
[良い点] 「かなりの持ち出しの量」 何本か書けそう〜♪ \(^o^)/ [気になる点] 高額納税者なので タッパーとか使わず 保温性の有る高価な入れ物わを 使って欲しい 安村氏が貧乏性に見えるし 稼…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ