1410:悩んだらウルフ肉を
ダンジョンで潮干狩りを
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今日も気持ちいい感じで眠れた。やはり寝ている間は【熱変動耐性】をオフにしておくほうがより気持ちよく眠れるな。布団からガバチョと起きる所で布団の隙間から寒さが忍び込んでくるのでここでオンにする。これで寒くないし関節を寒さで傷めて動きづらくなるようなこともない。
さあ起きて朝食を食べよう……と、ここでふと疑問。体感的には熱変動耐性のおかげで寒さを感じずにはいてくれるのだが、体のほうはどうなんだろうか。人間寒いところのほうが体がエネルギーを燃やしてカロリーをより消費していく。
この身体でも、寒さを感じてカロリー消費が多くなったりしているんだろうか。それとも、体感通りに普通に消費しているのだろうか。研究課題が増えたな。寒さ熱さを感じない身体でもカロリー消費量に違いがあるのかどうか。思いつく範囲で確かめる手段がないのが口惜しいところではある。
さて、そのカロリーをちゃんと補給するために朝食を食べよう。バターをたっぷり塗って食べるのも悪くないと芽生さんにも教えてもらったからな。バターはカロリーの塊なのでしっかりと摂取して探索途中でエネルギー不足で戦えないことを避けるためだ。今のとこ、ポーションを飲んだとき以外でそういう現象を起こしたことはないのが安心ポイントでもある。
しかし、ネットの話し合いの中では探索中に【身体強化】を使いすぎて地面に腰を着いてへたりこんでしまったという話もある。やはり、身体強化は魔素も使うが体力、カロリーも存分に消費していることは間違いないだろう。
カロリーもそうだが、ミネラルもそうだな。今日も忘れずトマトジュースを飲んでおこう。毎日の健康は毎日の野菜ジュースからという売り文句に乗るわけではないが、飲まないよりは飲んだ方がちょっとだけ健康的であろうし、気のせいであっても実際に問題が起きるまではプラシーボで健康でいられる。
プラシーボであっても健康でいられるうちは健康なのだろうと考えられるし、去年受けた健康診断でも問題らしき問題はなかった。この調子で日々を過ごしていこう。
さて、昼食だが……金のためにサンドイッチやカツサンド、おにぎりで歩きながら食事をし続けるのはちょっと味気がないというか、趣味の料理がおろそかになっている気がする。何かちゃんとした一品を作って落ち着いて食事をするのも大事だろう。
さて、保管庫とにらめっこ。何となく麺類が食べたい気がするが、パスタをソースと絡めるだけではちょっと満足しそうにない。もう一手間加えて野菜多めのソース焼きそばといくか。キャベツともやしとにんじんと玉ねぎとしめじと……確か冷凍のイカがあったな、あれも加えよう。
料理ポイントとしてはそれほど難易度や時間制限を要求されるような内容ではないが、毎回揚げ物というのもあまり面白くないからな。適度に炒めたり具材の投入タイミングでセンスが問われる焼きそばで、今日は良いのだ。
冷凍のイカを破裂しない程度に解凍しつつ、野菜を刻んで……肉は何にしようか。シンプルにウルフ肉でいいかな。オークやボア肉を使って脂の味がしみわたると全体のバランスを損なうかもしれない。
ウルフ肉に焼き目をつけると解凍が終わったイカを炒めて香りと旨味を出しておき、野菜を順番に投入、全体に味が通るようにうま味調味料を混ぜ込みつつ水っぽくならないようにしっかりと焼き水分を飛ばす。ほどほどに水分が飛んだところで麺の投入。炒めて焼き色がついたところでソース追加。
ソースが全体に馴染んだところで火を止めて終わりだ。二人分の焼きそばを作ったので量は充分確保できたはずだ。久しぶりに作ったな、焼きそば。もう一品と行きたいところだが思いつく品物がないので今日のところは焼きそばを一人で食べることで納得しておこう。今日は午前中七十一層午後七十二層だな。
柄、ヨシ!
圧切、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
籠手、ヨシ!
飯の準備、ヨシ!
嗜好品、ヨシ!
車、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。今日は気楽な一人旅。しっかり茂君も刈って在庫を豊かにしておこう。そろそろ寒さも峠を越える。寒さから解放されたら次は薄手の布団が欲しくなるはずだ。冬に厚布団を買って満足したお客様が夏用の薄い布団が欲しいと言い出すころだろう。そうなれば布団の山本の羽根の在庫も減って、ヘルプメールが届くに違いない。そうなるまでに出来るだけ取り溜めしておこう。
◇◆◇◆◇◆◇
いつもの時間に到着し、入ダン手続き。いつものご安全にを受け取って代わりに探索者証を渡すと、リヤカーを装着してエレベーターで七層へ。七層でリヤカーを取り外していつもの茂君をダッシュで刈ると、リヤカーを再び装着して七十層へ倍速ポチ。
さて、暇な二十五分間クロスワードで時間を潰そう。今日はミルコには餌をやらない日だし、暇つぶしできる話し相手も居ない。昼食の間もそうだ。今日は暇な時間が増えそうだな。厄介ごとが増えるのは困るが、ミルコ経由で新ダンジョンについて何やら相談される可能性もある。
例えばドロップする装備品や装飾品、便利アイテムのたぐいについて、こういうものは便利だろうか? とかこういうのは欲しがられるだろうか? 等の相談はあってもおかしくはない。
ふむ……ダンジョンドロップ便利アイテムか。あえて今便利かどうかと問われて便利なのは、やはり移動系の効果があるアイテムだろうな。今更攻撃力を求めるわけではないので、ダンジョンコアルームに一気に一層まで転移できるような装置があれば便利だとは思うが、そうなるとリヤカーの回収が面倒になるし、転移した先でどうみられるかを考えたら迂闊に使える手でもないか。
さて、クロスワードの続き続き。元素を構成する最小単位……”ゲンシ”かな。横のマスは……品物を加工したり製造したりするための材料……”ゲ”は共通文字だから”ゲンリョウ”だな。よしよし、まだ頭は鈍ってないぞ。
クロスワードを一問解いていつもの七十層。車を出して七十一層側へ移動していつもの行程。今日はまだエレベーターのところに他のリヤカーは無かったので七十一層を独り占めできるな。後から来たら大人しくするとして、それまでは精々素早く移動して日々の糧を得るべく探索に勤しもう。
探索をするという意味では同じところをグルグル回るのはいかがなものかとも言われそうだが、このマップではな……体内マップの六十七層辺りをくまなく探して来いとかそういうお話が来てるならまだしも、探索の目的は魔結晶の採掘作業であり、モンスターの撃破だ。どこでやっても同じでより効率的な狩場であるならばここが最も適している、と言えるだろう。
さて、午前中きっちり稼いで午後もしっかり稼いで、満足するだけの収入を得て帰ろう。この階層の品物は全て即日金として立ち上ってくるドロップ品だ。頑張るだけの価値は充分にある。
◇◆◇◆◇◆◇
午前を問題なく通り越して、七十層に戻って昼飯。焼きそばを食べていると訪問者が現れた。
「あ、あの、お久しぶり……です……」
ミルコがたかりに来たかと思ったが、違った。温泉地ダンジョンをお任せしたユミルだった。見た目からして引っ込み思案の彼女がここに現れるということは、よほどのことがあったんだろうか。うさ耳もぺたんと垂れている。
「とりあえず、座りなよ」
椅子を出して座るよう控えめな催促をする。ユミルは椅子に座り、やがてぽつぽつと語りだした。
「今日はですね、その、お詫びをしにまいりました」
「お詫び……というのは? ゆっくりでいいから話してくれると嬉しいな。もしかしたら助けになれるかもしれないし」
あえて上からや対等な目線ではなく、こちらが下から出迎えるような姿勢でユミルを委縮させないように話しかける。
「実は、その……私だけダンジョンを作るのが遅れてしまっていて、そのせいでご迷惑をかけているんじゃないかと……ベースは出来上がっているんですが、細かいところがまだ出来上がっていなくて、それでですね、お詫びをしなきゃいけないと思って……その……申し訳ありません」
非常に丁寧に、かつおびえるような感じで進捗を報告してきてくれている。進捗報告一切なしでとっととダンジョンを作り上げてしまったサムエとは対照的だな。
「ちなみにだけど、何層ぐらいまでが出来ているのかな? ゆっくりでいいから教えてくれるとありがたい」
「えっと……四十九層までで……見た目は前のダンジョンのままで……階段は綺麗にスロープに作り直したんですが、エレベーターがまだで……」
なるほど、新しい機構を組み込むのにちょっと手間取っているのか。
「エレベーターは元々ダンジョンにはなかった仕組みだからな。他のダンジョンを参考にして、出来ればみんなが作った新しいダンジョンと共通性があるとなおいいね」
「共通性……ですか? 」
「そうだ。たとえばセノの作ったダンジョンで十四層までエレベーターで潜れるようになったなら、ユミルの作ったダンジョンでも十四層までそのままエレベーターで移動できるようになれば、どっちのダンジョンでも活動できるようになるし、普段は向こうで活動していて、湯治にこっちのダンジョンへ来て、ついでに潜る、といった活動もできるようになるだろうからね」
「そのあたりは、問題、なく出来てると思います。もう少しお時間を頂ければ、ですが」
「なら、大丈夫だからそのまま順番に作り上げていってほしいな。あえてゆっくり作った分深くまで出来ていても良いぐらいだ。ほら、これでも食べて元気だしなよ」
ジャガイモを加工して棒状にして揚げたものを渡す。ミルコの分として用意していたものだったが、慰めるには必要だしミルコもそこは理解するだろう。悪いなミルコ、今日はお前の菓子ねえから。
俺が焼きそばを食べる横で、隣で人参の代わりにポテトスティックをポリポリと齧っていくユミル。頭を見ると、ちょっとうさ耳がさっきよりも元気になっている気がする。もうちょっと落ち着けてやれば元気を取り戻すかな。
「車でドライブでもして気分転換でもするか? 俺も腹が膨れてちょうどヒマなんだ」
「ドライブ……ですか? たしかに、車とかいう乗り物には興味ありますが」
保管庫から車を出すと、ユミルを助手席に座らせて軽く運転する。ユミルは最初はスピードの速さにちょっと驚いていたものの、徐々に慣れ始め、窓を開けて冷たいであろう月面の風を感じながら少し元気になったようだった。
「そういえば、新しいダンジョンでもボス撃破ボーナスはつくのか? 」
「あ、はい。一応そういうことになってます。なので、他の新しいダンジョンだと、ボス撃破勝負が行われていたと思います」
そういえば調べなかったな。帰ったら調べてみるか。さすがに十五層までまだ到着してないということはないだろうし、何処かのパーティーがこっそり討伐したにせよ、それなりの報酬とダンジョンマスターとの出会いについて書かれているかもしれん。流石にこれだけ大掛かりにダンジョンマスターとの関係について話した経験のある日本ではあるし、情報規制は敷かれていないだろう。
「後で調べてみるか。とりあえず深さは今の深さがあれば問題ないと思うよ。後はダンジョンを出現させてもしばらくは外で色々作業……ダンジョン庁の建物を構築したり周辺にダンジョンが出来たと知らせたり、色々と時間がかかるだろうからその間に深く作りこむ時間は充分あると思う」
「そう……なのでしょうか」
「それに、静かな所に立てたんだからガツガツと一気に深くまで潜り込む探索者はそう多くないはずだ。多分だから確約は出来ないけど、落ち着いて作業をするだけの時間はあると思うよ」
またうさ耳が立ったりへたれたりと、感情表現は表情や話し声よりも耳を見ながらのほうがわかりやすいな。
「だから落ち着いて仕事をしていけばいいと思う。一歩ずつ前には進んでいるんだから、後はえいやっとダンジョンを立ててしまえば残りは他の人が何とかしてくれるように手はずは整えてある。あとはユミルがダンジョンを立てるかどうかを待ち望んでいる人もいる。だから安心していいと思うよ」
「そうですか……うん、ちょっと自信が出てきました。相談してよかったです」
耳がピンと立ち始めた。どうやらカウンセリングはうまくいったらしい。こんなオッサンの意見で気を持ち直してくれたならよかった。
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