1388:ゆっくりお昼寝
家に帰ってきて、一息。外はそこそこ寒かったので温かい濃ゆいポタージュスープを作ってまずは体を温める。その後で軽く昼寝。食事は昼寝をしてから取ることにした。
まずは昨日の疲れの取り切れていない部分を積極的に取り除き、明日には問題がないように調整することも仕事の内。横になってスマホを適当に眺めてスレッドを探すと、何処を見ても税金の問題で紛糾していた。
しかし、確定申告が始まってから騒ぎ出すよりもはるかにマシであり、みんなの納税意識が高まっていることは良いことのはずである。そういえば、ふるさと納税で住民税の節約なんて方法もあったんだな。地元愛にあふれる俺としては考え付かなかった。
もし何処かで俺のお気に入りの商品がふるさと納税で手に入るなんてことになれば積極的に使わざるを得ないが、今のところそういう商品は……とふるさと納税の色んなリストを見ていくと、新熊本第二ダンジョンの農産物の返礼品というものを目にすることが出来た。
確かにこれはここでしか手に入らない商品であり、地元愛にあふれる探索者が探索して入手してこないと手に入らない一品。なるほど、こういう使い方があったかと思わず納得してしまった。
ダンジョンドロップ品を返礼品にする企業というのがちゃんと存在する、ということは流通経路がしっかりと確保されているということでもある。自宅であのドロップ品が味わえるとするなら中々に面白い話ではある。
しかし、全部売り切れであることを見るとまだそこまで広まってないか、よほどの人気があるのかどっちなんだろうな。買うのはまあ気が向いたらということでいいんだが、もうしばらく様子見だな。
さて……昼寝をしよう。飯はその後、もしかしたら中途半端な時間に起きるかもしれないがその時はその時、多分空腹で目が覚めると思うからそしたら昼飯を食べて、それからまたまったりするのだ。
完全に体力を回復させるためには必要な睡眠。寝間着は絶賛干している間なので私服で寝る。外へ着ていった服で眠るのはちょっと抵抗があるので自分にウォッシュをかけて、服を洗いたてのような状態に戻……うん?
寝間着に乾燥をかけて早く乾かして着替えたほうが合理的ではないか。そうしよう。寝間着に急いで乾燥をかける。柔軟剤のおかげでふんわりと出来上がっている寝間着に乾燥を更にミックス。しっかりとかけた後で試しに着てみると、脇の当たりと袖の先がまだ乾ききってなかったので、脱いで再度乾燥。
乾いたのを確認すると、寝間着に着替えてベッドに直行。そのまま暖かく出迎えてくれる布団に嬉しさを感じつつ、軽い眠気が襲って来た。やはり、体力は完全には回復していないらしい。もしくは、確定申告で使った分を回復して行け、という布団の啓示なのかもしれない。
しっかりと眠気を覚えている間に眠ってしまおう。おやすみ。
◇◆◇◆◇◆◇
目が覚めると目の前に顔。結衣さんがこっそりと添い寝していた。家の中からいい匂いがする。台所を使った形跡はあるな。おそらくだが、自分の確定申告が終わってそのままこっちへ来て、俺が寝てるのを確認すると昼飯を作ってその後添い寝、というパターンが考えられる。
眠気はしっかりと飛んだのでこれ以上布団で寝る必要はない、ということだろうな。さて、結衣さんの寝顔をそのまま見続けるのも楽しみとしてはありだが、お腹が空いてきた。せっかく作ってくれた料理が美味しいうちに食べたいという欲求もある。ここは夢の中で申し訳ないが結衣さんには起きてもらおう。
「結衣さん。結衣さん」
「んー……おはよう、洋、ちゃん」
洋ちゃん呼びに徐々に慣れて来たらしい。こっちはまだ心の準備がまだそれほどできていないので新鮮さが残る。これも中々悪くないな。
「ご飯作ってくれたの? 」
「見た感じ食べ終わった後というわけでもなかったしね。適当に食材使っちゃったけどそれはいいのかしら」
「まあ、いずれ食べるものだからそれは心配ないよ。むしろ食材が足りたかどうかのほうが心配かな」
のそのそと布団から這い出て、寝間着のままリビングに向かう。かつおとソースの香りがする。
「もしかして、お好み焼き的なものを作った? 」
結衣さんに質問する。
「香りだけでよく解ったわね。その通りよ。ご飯は炊いておいたけど、お好み焼き定食はいけない感じだったかな」
「いんや、問題なく。多少冷めちゃってるだろうからレンジで温めて早速頂くとするか」
ラップをかけて置いてあったお好み焼きをレンジで温め、ご飯を茶碗に盛り、お好み焼きが温まるのを待つ。一枚でかいのをどんと焼いた形になるが、シェアするので問題ない。
こういう残り素材で手間をかけずにパパっと作れるのが料理のスキルであり、結衣さんの得意とする分野なんだろうな。同じ料理仲間として負けてはいられないと対抗心を燃やすところだ。
「具材は冷蔵庫の中のものを適当に、一応卵と小麦粉は借りたけど、あの小麦粉どこの小麦粉なの? 何が書いてあるかさっぱりわからなかったんだけど」
「ああ、あれ熊本ダンジョン産。多分小麦粉一キログラムとか書いてあったんだと思うよ」
お好み焼きを二等分し、それぞれに分けると早速食べ始める。さて、中の具材は何が入っているのかな。
味のまとまりはいい。そして、かまぼこが入っていることはピンク色が見え隠れしていたのでわかった。肉は冷凍してあった豚バラを使った模様。中華麺も入っているな。キャベツはしっかりと刻んで中に入れ込んである。ソースは外に出してあった中濃ソースの大びんから拝借したものだろう。かつおぶしはタッパー容器に放り込んであったからそれだな。
一口食べる。お好み焼きのスタンダードな味わいもあるが、口の中が色々な食感を生み出してくれていて中々に楽しい。ご飯と交互に食べるが、かけられているソースの塩梅がちょうどいい。喉が渇かない程度に抑えつつも、しっかりとソースの居場所を主張してくる。
後は天かすのスカッとした食感があるのでこれも入れてあるな。ほのかな海産物の香りは揚げ玉がえびと一緒になってる奴だからだろう。後は……チーズかな? とろけている部分が見える。
流石にかつおぶしは踊ってはいないものの、ちゃんとかつおの風味も忘れ去られてはいない。紅しょうがは在庫がなかったから入れてないんだろうな。
「チーズ・揚げ玉・かまぼこ・中華麺・キャベツ……後は何だろう? 」
「長芋を擦り込んで入れてあるわ。生地がもっちりするから私は好き」
「なるほど、長芋か。中々に手が込んでる。美味しいよ」
「それはよかったわ。アレルギーになるようなものはおいてないだろうから大丈夫だとは思ったけど、そこが心配だったのよ」
「アレルギーは……ないかな。嫌いな食べ物はそもそも買ってこないし、扱いに困るものは保管庫で眠ってもらっているし。だからここには俺の好きな物しかないかな」
うむ、そういうことだ。嫌いな食べ物はそもそも買ってこなければいい。それ以外は生焼けであったり煮込みが足りなかったりという理由でイマイチな調理具合に仕上がる可能性もあるが、お好み焼きに入れる具でそうなる可能性というのは非常に低い。
そんなわけで、このお好み焼きは充分に美味しい。寝起きに腹を空かせて掻き込むにはちょうどいい塩梅の飯といえる。そこまで考えて作ったのかどうかはわからないが、結衣さんの料理スキルは俺より上だということがはっきりわかった。
「ぐぬぬ……次は勝つ」
「なんで対抗意識燃やされてるの? 」
結衣さんが不思議がりながら自分の分を食べている。やはり長年……いや、俺のほうが長年生きているんだから年齢は関係ないんだろう。とにかく結衣さんのほうが料理はうまい。あれだけのパーティーメンバーを毎回納得させられるだけの食事を賄い続けている経験値の差が如実に表れているのだろう。
「ご飯食べたら今日は何するの? 」
「さっきもだけど、今日は一日ゴロンとしてるかな。昨日の探索でちょっと疲れすぎた」
結衣さんに次の階層の話と、その階層での注意点を伝えておく。知らずに入り込んで消耗して出てこれなくて、七十層まで戻ってこれない可能性を考えると伝えておいたほうが良い情報だ。
「そう……じゃあ洋ちゃん達には頑張ってもらって、余った【熱変動耐性】のスキルオーブを買い取らせてもらおうかしらね」
「余るほど出るなら俺ももう持ってるはずなんだけどなあ。いかんせんまだ二回しか潜ってないんだ、どのモンスターからも出るという確証はないから難しいところだ。荷物の制限がある以上結衣さん達が潜る際は充分注意しないといけないよ」
「今のところはまだ大丈夫かな。ボスを倒してゆっくりしてもらってる間に徐々に近づけるように頑張るわ」
「まあ、そんなわけで今日は完全に息抜きと疲れ取りのための休日だ。何をするでもなく、何かしなきゃいけないわけでもなく。夕飯は弁当がまだまだあるから食事の支度もしなくていいし、昼食は結衣さんが作ってくれたし、至れり尽くせりの思いだな」
休日を休日足らしめるものはできるだけ何もしなくてもいいこと。料理にしてもそうだ。誰かが作ってくれたご飯を食べるだけでお腹がいっぱいになって満足できる。これも休日のいい点だろう。
「芽生ちゃんは車校なのかな? 無事に三月までに免許取れると良いけど」
「そこまで素直に文面を読み取る子じゃないから大丈夫だと思うよ。運動神経は抜群に良いんだし、運転のほうは心配はしてないさ。筆記は……まあ、ひっかけにさえかからなければおおよそ受かるんじゃないかな。本人はシミュレータに文句たらたらだったけど」
「あれはねー、わざとああやって作ってあるしねー。私も引っかかった覚えあるわ。でも、実際に名古屋を運転してるとアレよりも凄いのが出てくるからあながちシミュレータも馬鹿になんないのよね」
「そうなんだよな。アレよりきわどいの時々見かけるからな。一時停止も守ってくれないし横断歩道以外を平然と歩く人いるし、横断禁止から飛び出してくるおばちゃんとかいるからな」
まことに以て、こっちの地方でのシミュレータの活用度は非常に高い。自動車免許を持っているほぼ全ての人が体験しているはずのシミュレータだが、そのシミュレータでも再現できない事象は時々発生するらしい。
「さて……お腹も膨れたことだしゆっくりするか」
「私はどうしようかしらね、一緒に居たらお邪魔かしら? 」
「一緒にゆっくりするなら。本当にゆっくりするだけだよ? ネットでニュース見たり掲示板見たり、次の料理のネタを探したり……後は何しようねえ」
「本当にゆっくりするだけなのね。でもまあいいわ、いずれ一緒に住むことになるようならそういう時間も必要かもしれないし、逆にお互い一人きりで過ごす時間も大事にしなくちゃいけないしね。そういう慣れのためだと思えば私は努力するつもりよ」
結衣さんは結衣さんで自由にしている、ということらしい。寝るなりなんなり好きにしていいし、なんなら俺の膝枕で寝てるだけでも良いそうだ。
「じゃあ……とりあえず何か料理を考えるか。最近レパートリーが増やせたらいいと考えてたんだ。ネットとかで見れるお手軽レシピを色々探してみようと思うんだけど」
「それなら参考にしてる料理研究家の動画があるからそれを適当に見ていくってのはどう? 」
「そうだな……どうせ家で作るんだし、結衣さんが参考にするってことは現地で料理できることも考えてその料理研究家のレシピを参考にしてるんだろうしそれは一見の価値ありだな」
結衣さんとパソコンに向かい、動画サイトにアクセスすると早速その料理研究家のチャンネルに……勝手に登録した結衣さんではあったが、中々面白く、手軽に便利でそして美味しそうな動画をいくつか見ることが出来た。
トークもなかなかうまく、ただ料理をするだけでなく美味しく楽しむことを主眼に置いた、ちょっとだけ個人的な思想が入っているチャンネルだったが、料理自体は真っ当。時短テクニックや美味しさの基準とは何か、等色々と学び直す機会を得ることが出来た。
なるほど、カレーの時の野菜のアクは取らないほうが美味しいこともあるのか……一つまた学んだぜ。
安村洋一の料理スキルが少し上がった。
結衣さんとの友好度が少し上がった。
ゆっくりして見えない疲労が回復した。
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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。
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