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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十章:新年

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1378:新年納品と帳簿

 寝起きは気持ちいいんだが、起きた直後はちょっと寒い。暖房が点けっぱなしであるとしても、少しひんやりするのは布団の中が温かくて気持ちいいからだろう。


 今日はお仕事も休みだし一日ここで過ごす、というのも悪くはないんだが、布団のほうがさっさと起きろと俺の眠気を覚ましてくれたおかげでここでぬくぬくとしていることがまるで悪いことのように感じてしまう。


 仕方がない、起きよう。そしていつものトーストとキャベツと目玉焼きの朝食を作り、食べる。朝食を食べることで血糖値が上がり、頭と体の調子を整えていつもの日常が始まるんだぞということを胃袋から教えてくれている。


 お腹がゴロッとなってトイレに行って出すものを出し、さあ一日を始めるか、という気分になる。とはいえ今日は探索お休みの日。このままゴロンと横になってのんべんだらりと何もしないでもいい。


 ただ、予定はあると言えばある。そろそろ羽根の納品に行かないといけないのだ。ついでに、去年一年間の取引記録のこちらの書類とあちらで管理しているであろう金額の突き合わせを行いたい。そんなわけで今日の予定は一つ、布団の山本に行くことだ。


 開店時間までニュースを見てダンジョン関連の話はないかどうか探してみたが、なかった。どうやら海外では話題になっているらしい日本でばかり新しく立つダンジョンについて……なんかの翻訳記事もネットで読んだりはするものの、裏情報を知っている方としてはあまり目新しく感じるものはない。


 ただ、多くの人の耳の中に情報が入ればその中には邪推もあれば的を射ている推測もあるもので、日本のダンジョン探索者の中にはダンジョンマスターと常に友好関係を築き続けている探索者がおり、その人が仲介をしてやっているのではないか、というまさに俺の存在を指摘する声もあった。


 ふむ……しばらくは大人しくしている予定だし、その内声も消え去っていくことだろう。現状俺が特定されるような話があるとすれば去年千二百万要求したあの取材だけなので、それを基準にまた取材……ということにはならないはずだ。高いしな、話聞くだけで千二百万とか。


 もしかしたら複数の探索者に声をかけて最前線探索者の講演会を開いてもらいたい……なんて話がある場合にはまた別だが、そんなことをしてもその間にダンジョンで探索した方が儲けられるというのは探索者にとってもわかっていることだろうし、あんまり気にしなくていいだろう。周りが騒ぎ出したらまた何か手を講じる所だな。


 さて、調べものをしている間にいい時間になった。いつも通り開店直後に電話をかけて布団の山本に連絡を入れて、今回の納品量の話と、取引額の合計を正式な文書で出してもらえないか交渉をすることにしよう。


「もしもし、こちら安村と申しますが、山本店長はいらっしゃいますでしょうか」

「山本ですね、少々お待ちください」


 しばし待って、山本店長が電話口に出た。


「安村様、あけましておめでとうございます」

「おめでとうございます。本日納品に伺おうと思うのですがそちらの御都合はいかがでしょうか」

「そうですね、問題ありません。今回もいつもの分量でこちらに来られる予定ですか? 」

「そのつもりです。それともう一つお願い事がありまして今回は訪問させていただこうと思うのですが」


 電話口で語っておいて、俺が到着するまでに書類が用意できるならそれが一番いいからな。ここで話を切りだしてしまうことにしよう。


「こちらでご希望に添えることであれば構いませんが」

「去年一年間の取引記録、金額だけでもいいので正式な書面として出していただくことは可能ですか? 昨年は大変お世話になったので羽根の取引に関しては消費税を納付する必要がありまして。その分のこれだけ取引がありました、というわかりやすい証明書として一通欲しいのですよ」

「あぁ、なるほど。わかりました、安村様がご到着されるまでに用意できるよう手配しておきます」


 どうやらできるらしい。これで一つ難問は解決だな。


「それでは、今からそちらに向かいますのでよろしくお願いします」

「はい、お待ち申し上げております」


 電話を切り、社用車を静かにガレージの中に出すと、いつもの分量の羽根を取り出してエコバッグに詰めていく。これも大分手馴れてきたな。そろそろ毎回ピタッと数字を合わせて来ることに対して何らかの気付きを山本店長にみせてしまうかもしれないので、数グラムの誤差をちょっと出しておく。


 一通り荷物を出し終わったところで出発。社用車のガソリンはまだまだ充分にあるので給油はしなくていいだろう。新年も開けて四日、そろそろ運転の怪しい車も減ってきたことだろうし安全運転で行くことにする。


 一時停止と交わる局面に出たらいつでもブレーキを踏めるように準備しておく。この辺りの車は一時停止線を守らない。絶対に出っ張ってから停止する。車によっては停止せずにそのまま合流してくるので常に気を張っていないと安全運転とは言い難い。


 無事に布団の山本の駐車場にたどり着き、店内へ入り安村です、納品に来ましたと伝えると、山本店長は現在接客中なのでこちらで荷物の確認をいたしますと言われたので、いつも通りぞろぞろと店員を引き連れて駐車場へ。


 ダーククロウから順番に渡していって、スノーオウルを渡す前に一端列を切る。その後スノーオウルの羽根を渡していく。では、検品してまいりますのでおかけになってお待ちくださいと言われたので商談スペースで座って待っていると、お茶といつもの羊羹。待ってました。


 お茶と羊羹を早々と胃に詰めて待っている間に、店員がもう一度こちらに来て、書類を置いていった。中身は去年一年間の取引記録だった。クリアブックを出して、去年一年分の記載してまとめてある金額と、布団の山本から提出された記録を照合して、間違ってないことを確認する。


 どうやら去年一年間で七千四十六万円の羽根の取引があったらしい。これを商品化して売り出しているのだから、布団屋自体の収入も相当なものになっているだろう。お互い得しているのでこれでどっちが凄いという褒め合い合戦をしなくて済みそうだな。


 書類を確認したところで山本店長がこちらに来た。どうやら商談はまとまったらしいな。


「お待たせしました。どうも明けましておめでとうございます。今年も当店をよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、今年もどうぞ羽根を使ってやってください」


 立ち上がってお互いきちんとお辞儀、そして握手。


「書類のほうは大丈夫でしたか」


 山本店長が確認のために質問をしてきた。


「ええ、一応のダブルチェックということで確認が取りたかったので。ちゃんとこちらの数字とそちらで管理されておられる数字に間違いはなかったと今確認できました。お手間を取らせて申し訳ありませんでした」

「いえ、これも仕事の内ですので。昨年度はよくお稼ぎになったようで何よりです」


 山本店長はゆったりと椅子に座り、歓談モードとなった。しばらくは関係ない話を続けてもいいということなんだろう。


「まあ、そこそこといったところでしょうね。そろそろお金の使い道について色々考えなければいけないぐらいにはなって来ましたよ」

「それは何よりですね。ただ、使い道にあれこれ悩むよりはため込んでいそうな安村様のことでしょうから、株式投資とかにはあまり向いてい無さそうにお見受けしますが」

「そうなんですよね。ダンジョンから帰ってきたら価格が下がってたとか、そういうので一喜一憂するような使い方はあまり得意ではないと自覚してまして。でも今年は何かに挑戦してみるのも一つかな? とは考えていますよ」


 実際投資するにしろなんにしろ、まずは投資を求めてる会社を探すところから始めなければならない。その時間でいくら稼げるか……なんてことを考え出すと、下手に投資に手を出すより自分で稼いだ方が金になる、という本末転倒な話になってしまう。そこをどう調節していくかだろうな。


「まあ、そのへんは見かけることがあったら興味を持ってみる、という辺りで収めようと思ってますよ。何かダンジョン関連で面白そうな話があったら是非集めておいてください。興味を持つかもしれませんから」

「そうですか、ダンジョン関連でですか……何か思い当たる節があればご連絡差し上げようと思います。それまではどうぞ伸び伸びと探索のほうを進めてやってくださいませ」


 さて……話題が尽きたな。と、いいタイミングで今日の検品の結果報告が来た。今回もいつも通りということらしい。


「では、新年一発目の納品も無事終わったということでここらで失礼します。羊羹ごちそうさまでした」

「またよろしくお願いいたします」


 出入口まで丁寧にお見送りされて布団の山本を出る。さて、今から何しようか……そうだ、サウナでもいこうか。ダンジョン内も充分サウナだったが、やはり行きつけの温泉の併設サウナに比べれば暑さが違う。


 ここらで一風呂浴びてサウナを充分に堪能して、ドロドロの汗をサッパリ洗い流してサラサラの汗をかけるようにしておこう。そのほうが服に染みつく匂い対策にもなるはずだ。


 面倒くさいのでそのまま社用車で移動して近所のスーパー銭湯へ。入泉料を払うと中へ。手ぶらで来たからタオルも面倒なので自販機で買ってしまう。どうせ家に持ち帰って私用として使いまわすのだから問題はないだろう。


 全裸になり掛け湯をして、全身くまなく備え付けのリンスインシャンプーとボディソープで洗うとまずはジェット風呂へ。腰へ適度な刺激を与えつつ、熱めの温度の湯をしっかり楽しんだ後、お待ちかねのサウナへ。


 七十三層の熱気では温度が足りない自称九十度の高温サウナをしばし楽しむ。こっちは汗をかいても全裸だから不快にならないのが実にいい。汗をかいたら手元のタオルで拭けばいい。じんわりとした暑さが全身にまといつき、肩から始まって後頭部や足や胸などからも発汗を催す。


 ……まだだ、まだ早い。テレビでは相変わらず昼のバラエティー番組を放映しているが、あまり興味はない。静かにこぽぽぽっと業務用サウナストーブからの音がするが、ここのサウナは乾式サウナなので湿気はないはずだ。でも水の音みたいなのがするのは何故なんだろうな。


 十分。ぬるりとかいた汗は肌をゆっくりと伝い、そのままタオルに吸われていく。第一弾はここまでかな。一旦サウナを出ると全身に掛け湯をして、そのまま体温ぐらいの温い風呂へ。水風呂は心臓に悪いがこれならゆったりとできるし、頭もボーっとするので達するに近い何かを得ることが出来る。


 五分ほど温い湯に浸かったらまたサウナへ。今度は十五分間耐久サウナだ。サラサラの汗が出るまで頑張る。サラサラの汗が全身から出始めたら、また外へ出て掛け湯をして、水分補給を充分に行って再びぬるま湯へ。この繰り返しで一時間半ほどしっかりサウナの気持ちよさを味わった。


 帰りに更衣室の百円レンタルロッカーの百円でコーヒー牛乳を買おうとしたが、コーヒー牛乳は百四十円にまで値上がりしている。百円をポイッと使えることでお手軽に買えるのがこのドリンク自販機の良さだと思うんだが、本末転倒感が否めない。まあ、買うんだけどな。


 風呂にも入ってサッパリして、タオルもちゃんと持ち帰って洗う。家まで安全運転で帰ると、タオルを洗濯籠に入れておく。私服と一緒に夜にでも洗ってしまえばいいだろう。


 さて、今日の昼食は何弁当にしようかな。種類はまだまだ選べるから今日は……サウナも行ったしヘルシー弁当としゃれこもう。野菜がいっぱい入ってて、出来れば魚も入っていた方が嬉しい。そういう弁当はあるかな……あった。よしこのギンダラが入っているヘルシー和食弁当でいこう。


 量的にもそう少ないわけでもないし、値段も……値段はやはりデパ地下価格か。充分にお高いが、味わいのほうは充分に楽しめるだろうから今のところはこれで納得しておこう。夜はまた食べたいものが決まるだろうからその時にまた選ぶことにしよう。デパ地下弁当に飽きたらまたコンビニ弁当に戻せばいいだけの話。


 食べられるものを色々選択出来て好きに食べられるというこの環境に感謝しつつ、一つ一つ余すことなく腐らせることなく食べていくことにしよう。さあ、いただきます。ご飯を食べ終わったらいつも通りいろんなスレを見ながら午後こそのんべんだらりんとした休日を過ごすのだ。文句を言う奴はいないだろう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
> ちょっと寒い」 それらの感覚が消失して愕然としている芽生さん > さっさと起きろ」 布団にもスノーオウルを混合するおじさん > ゴロッと」 たまごっちのように観測されるおじさん > 高いしな…
『よしこのギンダラ』まででよし子って誰だよって思ってしまったw
ずっと疑問なんだけど何でスキル買い漁らないの? 買えるスキル全部五段階にしない理由が分からない 今後高くなるのは当たり前だし余裕で買えるし 使う使わないに関わらず買った方が良くね?
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