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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十章:新年

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1377/1382

1377:帰り道で

 七十層に戻り車でエレベーターの前へ。すると、入れ替わりにエレベーターで七十層に下りて来るグループが。いつものD部隊だった。


「D部隊の皆さん、あけましておめでとうございます」

「これは安村さん、あけましておめでとうございます。最近ご無沙汰でしたがお元気ですか」


 そういえば最近とんと姿を見なかったな。どこで何していたんだろう。


「最近は別で何かお忙しいことがあったのですか? 」

「例のインゴットですよ。また数が欲しいってんで集めて回ってたところでした」


 五十六層辺りにいた訳か。道理で出会わないわけだ。さて、そうなると七十三層以降の情報を渡すかどうかはちょっと悩みどころだな。


「安村さん達はいつも通りの稼ぎですか。新年からお元気なことです」

「まあ、そうなります。今年も早いうちに稼いでおかないと、ダンジョン庁からのお達しの通りだとすると八月からは減収になるのが目に見えてますからね」

「ほう……ではこの二月では魔結晶の値下げはないって裏付けと考えてよろしいので? 」


 高橋さんがそんなこと言っていいのかい? とばかりに確認を取ってくる。


「これについては会見か何かで真中長官直々に発言していた話ですから、今更撤回するのはかえってダンジョン庁の手間が増えるのでやらないでしょう。ダンジョン庁も新しいダンジョンが一気に三つも増えてそっちの対応にてんやわんやでしょうからね」


 この状態で価格改定を行うだけの人員確保が去年の内に出来ているとして、果たして無事に終わるかどうかはわからないし、残りの二つのダンジョンが無事に稼働するかどうかもわからない現状としては、後一カ月ぐらい待ってあげて欲しいな、と思うところだ。


「その新しいダンジョン関連で少々うちももめてましてね。どこかのダンジョンのチームを一つ引き抜いて新しいダンジョンに当てさせるか、それとも新規の部隊を編成するか、各部隊からメンバーをより集めて混成するかで色々と、そう色々とやることがあるみたいですよ」


 彼らには彼らなりの問題があるらしい。別に民間開放なんだからD部隊が必ず潜らなきゃいけない、というわけではないんだろう。ただ、最初から潜っておいたほうが我々もいますよ、官民共同でやってますよ、というアピールにはちょうどいいんだろう。


「そんなわけで、久しぶりに最深層を体験しに来たわけですよ。今夜ゆっくり探索して明日の朝帰る予定です。安村さん達は今帰りですよね? 」

「です。ちょうど今ここまで移動してきたところでした」

「お疲れ様でした。何か不自然な現象とかがなければいいんですが」

「そういった感じの物はありませんでしたよ。年末にしばらく熊本に行っていたのでここで何かあったかどうかということまではわかりませんが」

「ということは、熊本で確認されていたスーツ姿の二人組ってのは安村さん達だったんですか」


 山本さんが横から口を出す。一応対外情報も集めてはいるんだな。


「ちょっと噂になったのは自覚してますが、たかだか二日間の移動で見られてるのもそう多くはなかったとは思いますが、向こうでは珍しい格好だったみたいですね」

「ここでも充分珍しいとは思いますよ。それでは、我々は任務に行くのでお先に失礼します」


 高橋さん達は去っていった。多分サメとグリフォン相手にどこまで自分たちが通じるか試しに行くんだろう。


「やっぱりまだまだスーツ探索というのは目立つってことなんですかねえ」

「まあ、注文したところで出来上がるまで一カ月ぐらいかかるしな。その間を考えたらいきなりドバッと増えることもないとは思う。さて、帰ろう。クレーターを無視してきたおかげでちょっと早く到着した分茂君は刈れそうだ」


 エレベーターに乗って二倍速で七層ボタンぽち。そして魔結晶とフカヒレとポーションを並べると、今日の仕事は終わってしまった。いつもよりちょっとだけ多い魔結晶を横目にしながら、さて時間まで何をしようか。


「そういえば、オンオフできるかもって言ってたよね」

「おっと、忘れる所でした……なんか急激に体感温度が変化しますね。使いようによっては良いかもしれませんが、使い方を間違えると死ぬ奴ですねこれ」

「例えば? 」

「サウナに入ってゆっくり汗を流した後水風呂に一気に入る時の心境ですね。環境によってはオンオフした場所によっては心臓に負担がかかるかもしれません」


 ふむ。サウナに入っても汗をかかないほど平気で入られるが、冷たい場所だと要注意ってことか。俺もそろそろ心臓に負荷がかかってきてもおかしくない年齢だ、覚える前にサウナに行って……いや、今年は後厄で何かあるかもしれない。サウナには入るが水風呂には入らずに温い湯に浸かり続けて汗を流し続けるだけにしてみるか。


「それ以上は色々試してみないとわからないってところか。早めに出ると良いけど」

「そこはまあ、ミルコ君もいじることは出来ないとは言ってましたから、運を天に任せるか、数をこなして実力で達成するしかないでしょうね」

「うん、自分達としては後者になるな。順当に成長してきていてくれることもあって今のところモンスターに苦戦してないのは今のところの良かった点だな。後は数をどれだけ倒せるかで今後の収入と懐の温め具合に差が出てくるところだ」

「ポーション早く結果出ないですかねえ」

「ポーションはさておき、グリフォンのドロップ品は二月の価格改定で査定可能にするらしいからそれまではまだ保管庫の肥やしだな。食べるけど」


 後一カ月で価格改定、二カ月で芽生さん卒業、三カ月で芽生さん就職、と今年は一カ月おきで色々とイベントがある。その合間に芽生さんは車校に通って免許も取らなくてはいけない。もっと余裕をもって免許を取りなさいよ、と今更言っても仕方ないしな。三日ぐらいかけて徐々に二人分の成果として持ち込むことにしよう。


 七層について時間を確認。ダッシュならいけるな。ダッシュして茂君を刈って帰ってきて、エレベーターで一層に上がると退ダン手続きをして査定カウンターへ。


「いつもより魔結晶以外が少ないですね」

「今日はいつもと違う探索をしてたので。しばらくはこうなる可能性が高いかと」

「覚えておきますね。二分割でいいんですよね」

「はい、お願いします」


 どうやらいつもより荷物が少なく魔結晶が多いのを不思議に思っていたようだ。まあそういうときもあると納得させると、査定物の確認をしてもらう。


 流石に丸一日潜ってきてこの金額、というのは他の探索者からしたら充分に多いよとは言われそうだが、我々にとっては普段の半分ぐらいしか稼ぎのない金額になった。


 今日のお賃金、一億三千百八十七万円。少ない代わりに案外キリは良かった。着替え終わってきた芽生さんにレシートを渡すと、リヤカーを返却して支払いカウンターに並ぶ。人はそこそこ。収入もそこそこ。三日通って平均二億ってところか。


 今後はポーションの査定がいつになるかわからないところだが、値段はおおよそ予測はつくしかなりの量を納品してはいるので、収入見込みとしては悪くないものが出来ていると言える。後は治験が上手くいってくれているのを願うしかないか。


 支払いカウンターで振り込みをお願いして、休憩室で熱めの水をもらう。今日は……暑かったな。とにかく暑かった。芽生さんと探索に入る時にはしばらくあの暑さを体感しなければならないと考えるとちょっと嫌になるが、解決策は見いだせた。後はそれに向かって頑張るしかないだろうな。


 そういえば、熱変動耐性が付くってことは火魔法にも耐性がついてたりするんだろうか。それともスキル攻撃には効果がないのだろうか。未知のスキルには考えることがそれなりにある。熱さはないけど火傷はする、なんて可能性もあるからな。


「やっぱり【熱変動耐性】あると便利ですね。ちっとも寒くないです」


 早速全力でスキルを使いまわしている芽生さんが隣に座って同じように熱めの水を飲み始める。


「どうやら……体内では効果がないみたいですね。ちゃんと温かさを感じます」

「体の表面だけってことか。体表面はどうなっているんだろう」


 芽生さんの腕まわりや首筋を軽く触ってみるが、冷え始めた俺の手と違って温かい。やはり、体の表面に薄い膜みたいな感じでまとわりつくスキルらしい。


「湯たんぽとしてはかなり優秀ってことかもしれないな。体の表面は体温を維持って感じになってる」

「やっぱりサウナとか味わうにはオフにしないとダメってことでしょうね。お風呂に入る時もそうですが、気持ちよさを味わうにはちょっと邪魔なスキルかもしれません」


 風呂に入る時はオンオフをちゃんとしておかないとダメってことだな。その気になれば一人で回れるかもしれないマップではあるが、それなら金稼ぎのほうに使いたいからな。一人の時は七十一層、二人の時は先を進むってことでいいだろう。


 バスの時間が来たのでバス停に並ぶ。芽生さんも一緒だ。


「待ち続けても寒くないのはいいかもしれませんね。逆に暑くても維持してくれるなら好都合です」

「こっちは少し寒いな。早いところそのスキルを手に入れられるように精々願っておくか」


 バスが来て乗り込む。バスのエンジンの熱気と暖房でかなり温かさが増した。これを感じ取れるのも【熱変動耐性】をまだ手に入れてないおかげではあるが、風情がなくなるという意味では少しもの悲しさがあるのかもしれないな。


「次は七十四層の地図作りですかね。七十三層よりもモンスターも多いみたいですし、七十五層のボスに挑む前にそろえておきたいところですよねえ」

「そうだな……これだけ暑いマップのボスだし、同じく火属性に強いボスが出て来る可能性は高いからな。どんなモンスターが出てくるかまではわからんが、あるに越したことはないだろうし、これまでのダンジョンの作り方というかテンプレートをメタ読みする感じ、持ってないと厳しい戦いを強いられるような気がする。焦って攻略する必要もないし、芽生さんの予定に合わせて動いていくってことで」

「すいませんねえ。もう少し早く取り掛かっていれば免許のほうも問題なく取得できそうではあったんですが、お金の話のほうが大事ですっかり忘れてましたよ」


 就職するならどんな配属先になるとしても車が運転できるかどうかは割と大事だからな。もしも芽生さんが地方に飛ばされるなら車は必須だろうし、プライベートの運転も出来ればきっと便利さが増すだろう。どんな車でも買える金はあるんだから好きなように乗り回して精々乗り潰すといい。


 バスが駅に着き、芽生さんと別れた。さて、今日の夕飯は何弁当にしようかな。暑かったからちょっと涼しげな弁当があればいいが……温めなくても充分美味しい所を攻めていこう。揚げ物や煮物系はパスして……お、ローストビーフの弁当があったな。よし今日の夕飯はこれで決まりだ。後はミルコに渡した分のおやつを補充しにコンビニによればしばらくは大丈夫だな。


 コンビニで新商品のおやつをいくつか購入すると、そのまま会計。今日は余計なものは買わず、デパ地下弁当に意識と胃袋を集中させて食べることにしよう。そのほうがなんとなく雰囲気を楽しめる気がする。


 家に着き、洗い物と洗濯物を一区切りさせて、さあ、食べるかと弁当の蓋を開ける。ローストビーフにかかっている甘酸っぱいソースの香りがふわっと漂ってきてこれは悪くない、と早速一枚味見。しっかりと中まで火が通されているにもかかわらずほんのり生食感。こういうのが良いんだ。こういうので良いんだ。


 冷めたご飯をローストビーフで巻き込んで同時に口の中に入れ、それぞれの食感と味を口の中で巧みにより分けたり同時に噛みこんでご飯の甘さとビーフのうまみ、そしてソースの甘酸っぱさと同時に味わうのもいい。これは中々当たりの弁当だな。まだまだ弁当の種類はあるし、今後も色々楽しんでいくことにしよう。


 付け合わせに色々と詰め込まれているが、メインがローストビーフであることに変わりはなく、ちょっとだけ乗っているマッシュポテトや、甘辛く煮こんである人参をアクセントにどんどん胃袋に入れていく。


 ふぅ、至福の時間だ……飯を食うだけでこれだけ楽しめるのは良い人生を送っている証拠なのかもしれない。四十二にして自分が納得できる人生を歩み始めているのだと思うとちょっと感動するな。弁当一つで大げさかもしれないが、好きな時に好きなものを食べて好きに仕事ができるのは少なくとも悪い人生ではないだろう。


 あと何年……いや、若返りのポーションが何本まで効果があるのかもわからないんだし、結構長く続けられるかもしれないな、これ。そう思えばまだしばらくはこの楽しみを享受できることになる。俺の人生の黄金期が今なのかもしれない。ならば、精々今のうちに楽しんでおくのが華だな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
> また数が欲しい」 今は急いで最深層へ向かえと言う手のひら返しの最中である > 悩みどころ」 ゲスい顔をするおじさん > いつも通りの稼ぎですか」 悔しくて奥歯がすり減ったTWIS > ほう……
リアル永遠の〇〇歳アイドルの可能性を感じる
ギルマスに新層の事報告するの忘れてますよ。
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