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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十章:新年

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1370/1380

1370:初仕事

 寒いが気持ちのいい朝だ。今日も布団は柔らかく温かい。部屋の温度も充分だ。ただ、トイレに行くのがちょっと寒いな、という感じ。まだ冷えの本番ではないのでそこまで苦痛というわけでもないが、やはり早く春が来てほしいなと思う所。


 朝食にトーストを焼いてから、弁当にすればよかったと気づく。まあでも焼いてしまったものはしょうがないのでいつもの食事を作るか。新年ボケは昨日で終わって、今日からはまた探索者として日々を過ごすのだ。


 いつもの朝食を食べて、頭もはっきりとしだした。よし、今日からまた深い穴の底で頑張るとするか。早速昼食のメニューを決める。二分悩んで決まらなかったので、悩んだときはパスタにすればいいという教えに従ってパスタにする。ソースは……最近ビタミンが足りない気がするのでトマトソースにしよう。


 脚気になるほど欠乏している訳ではないし、それなりに気を使っているつもりだが、栄養に悩んだときはトマトを食べておけば良い、という話もある。


 パスタを茹でつつ、冷蔵庫にあるトマトを輪切りにして一つ分を食べる。これでビタミンCも摂取できただろう。症状があらわれはじめたらビタミンドリンクやエナジードリンクで緊急補給すればいいし、そこまで不調が出た覚えは探索者を始めてからはない。それなりに栄養バランスは取れているものだと考えている。


 パスタを茹で終わり、軽く弱火でオリーブオイルと共に炒めている間に茹でるのに使っていた湯でパスタソースを温める。温め終わったところでフライパンにトマトソースを投入して、絡まったところで器に盛って保管庫へ。サラダはないがまあ一人行だしこんなものだろう。芽生さんがいる時はもう少し健康に気を使うが、今日のところはそこまでやる必要はないだろうな。


 さて……


 柄、ヨシ!

 圧切、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 籠手、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 車、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 今年も指さし確認は大事である。新年早々事故でも起こらない限りは今日もいつも通り。さあ出かけるぞ、ダンジョンが俺を待っている。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 いつもの時間に着いたダンジョン、と言いたいところだが、祝日ダイヤであることをすっかり忘れていたので若干時間はズレた。しかし、早いほうにずれてくれたのは有り難いところだな。


 ギルドの建物に入り支払いカウンターへ。いつもの顔なじみの支払い嬢とあいさつを交わす。


「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

「ああ安村さん。あけましておめでとうございます。去年一年の取引記録の照会ですか? 」


 お願いすることがばれていた。まあばれて困ることではないんだが。


「その様子だと、もう結構な数の人が使われていたり? 」

「そうですね、去年に比べて今年は昨日の内から一年分出してくれ、という風に言いに来た探索者は多いですよ。多分個人事業主関連でややこしいことになるのは解ってるので、出来るだけ早めに、ということでしょうね。いつも帰られる時間までに出来ていればよろしいですか? 」

「ええ、よろしくお願いします」

「承りました。もしもの時はもう一度こちらからお声をかけさせていただきますのでよろしくお願いしますね」


 ギルドでの仕事……ヨシ!


 後は布団の山本から一年分の取引額をまとめてもらえば煩わしい税金からは卒業だ。もう一仕事終えた気になってはいるが、今日はこれからが仕事だ。気合入れていこう。


「あけましておめでとうございます」


 受付嬢からも丁寧に扱われる。


「おめでとうございます。今年も頑張りますので応援しててください」

「はい、よろしくお願いします、ご安全に」


 いつも通りリヤカーを引いて一層に入り、エレベーターに行く前に一仕事。スライムを見つけると、熊手を取り出す。


 グッ、プツッ、コロン、パン。今年もよろしくな、という願いをかけて仕事始めの潮干狩りだ。これで今年も何とか乗り切れるような気がする。


 さて、ちゃんと仕事はじめを終えたところで七層へ向かおう。茂君にも新年のあいさつをしなければならないからな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 茂君をいつも通り刈り取り、新年初仕事第二弾を終わらせると、戻ってきていつも通り七十層をポチ。しばらくすると、ミルコが転移してきた。


「やあ安村、あけましておめでとう」

「おめでとう、ミルコ。その様子だとこっちの暦を理解した感じだな」

「あちこちで昨日から探索者達がそう言ってたからね。昨日から年が変わったんだな、というのは気づいたさ」

「とりあえず今年最初の一本は他の探索者から受け取ってるだろうから……要らないか? 」


 コーラを出しつつミルコに問う。


「これはこれ、それはそれ。安村からの貴重な一本だからね。ありがたく受け取っておくよ」


 スッと俺の手元からコーラを奪い取るミルコ。早速栓を開けて目の前でごくごく飲みだす。これはあれだな、コーラ版ガンテツだな。もしくは酒版ミルコがガンテツなのかもしれない。


「そういえば、新階層のほうは順調か? 」

「おかげさまでね。安村がガンテツの相手をしてくれてる間に結構進んだよ。まあ、安村も良い暇つぶしになったんじゃないかと思うし、お互い悪い話にはなってないとは思うんだけどね」

「まあ、新鮮ではあったな。ちょっとモンスターが弱すぎて退屈する場面はあったが、ドロップは中々面白いものだった。食品ダンジョンとして広まるにはいましばらく時間がかかるだろうが、ダンジョンから出たドロップ品を専門に扱う会社も出始めてるし、これからじゃないかな。それまでにもう一回踏破されたらその時は問題だがそうならないためのネタはいくつか渡してきたから今頃頑張って増設の最中なんだとおもうぞ」


 是非とも今度は粘ってくれることを祈る。また踏破されることは現状そうないだろうが、食品ダンジョンの有用性に気づきだすのが先か、それともダンジョンが踏破されるのが先か。これは見物でもあるな。


「しかし、不思議な体験だったな。ダンジョンの奥底よりもガンテツに会いに行く方がよほど時間がかかるというのは。地上を移動するにも寝てたからまだマシとは言え、国内移動とはいえ遠く感じたよ」

「そう……そうかもしれないね。僕らはその気になればお話はできるから良いんだけど、君らはそうはいかないだろうからね。まだ、これでも近いほうだったと考えるべきだったのかな? 」

「そうだな、山奥のダンジョンや交通の便が悪いところのダンジョンへお使いに行かされることを考えれば随分マシではあったな。今回は高速で移動できる乗り物沿いにダンジョンがあった形だからまだマシではあったけれど、これがそうじゃない場合はもっと大変だっただろう」

「そういえば、新しいダンジョンのほうの探索者の突入準備は順調なのかな。最初に人は来たけどそれ以来人の出入りが少ないってセノがぼやいてたけど、放置されていたりはしないよね? 」


 そういえばそっちのネタもあったな。中に人が入ってないのは開場の準備をしているからだろう。


「今外見……つまり魔結晶の取引所や何やらの一式を整備してる途中なんだ。もう間もなくオープン予定だとは聞いてるから心配しなくてもいいと伝えてやってくれ……って、この会話を聞いてたら通じるか」

「聞いてたらだけどね。まあ、一応僕からも一報を送っておくよ。他の三人にも伝えたほうが良いかな? 」

「そうだな。ただ、サムエのほうはさらに時間がかかると見込んでおいてくれ。何もないところの路面整備から始まっているだろうからその広さ相当には時間はかかるはずだ。後は温泉街とニュータウンのダンジョンの出現がいつになるかだな」

「そっちのほうは、もうしばらく作り込みたいからもうちょっと待ってくれ、との話を聞いてるよ」

「そうか、まあ三つのダンジョンが落ち着くまでは遅れてもいいんじゃないかな。同時に五つもの新規ダンジョンに対応するにはダンジョン庁も手一杯だろうし、先に出来た三ダンジョンがオープンしてからでも遅くはないからな」

「もし聞かれたらそう伝えてくよ。それで多少気楽になるはずだからね。余裕をもってダンジョン作成に当ててくれと」


 そう言ったところでエレベーターが七十層に到着した。


「そういうわけで連絡事項は終わりかな。安村から僕に話しておくことはあるかい? 他のダンジョンマスター宛てでもいいけど」

「そうだな……しばらくはゆっくりしたいから何もないのが一番だな。年末年始は色々忙しいんだ。税金支払ったり書類手続きがあったりで。だから落ち着いて七十三層が出来るのを待つことにするよ」

「もう少しで出来上がるからね。後ほんのちょっとだけど待ってくれるとありがたいかな」


 どうほんのちょっとなのかは解らないので進捗について色々聞きたくはあるな。そもそもどんな感じでダンジョンを作っていくのかとか。モンスターが先なのかマップが先なのか。ボス登場階があるとその分コストがかかるのか。色々と解らないことがあるが、そのへんがダンジョンマスターの仕事ということらしい。


「まあ、焦って作って変なバグや探索不可能な場所が出るようなことがないのが大事だからな。落ち着いて待つことにするよ」

「すまないね、予定ではもう一週間ほど早くお目見え出来る予定だったんだけど」

「まあ、そんな時もある。その次がいかに早くできるかだからな。その次を楽しみにしておくさ。じゃあな」


 ミルコと別れて七十一層側に車で移動して、今日の探索開始だ。いつも通り二時間みっちり午前を終えて、昼を食べてから午後の時間。さあいつも通り頑張るぞ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 午前中にポーションをきっちり二個手に入れ、いつものいい感じの探索を終えることが出来た。昼食のパスタを食べながら午後の体力を回復していく。パスタに対してソースがちょっと多めになったが、これもまた悪くない。


 パスタをトマトソースでべたべたにしてまんべんなく絡んだソースをズゾゾゾゾっと啜るのもまた楽しい。スーツに跳ねてもウォッシュで綺麗にできるので、自分が一番おいしいと思える食べ方で食べられるのもいい。


 新年明けての稼ぎとしては中々に悪くない午前の成果。後は午後にポーションが余分に一本出てくれれば更に文句のつけようのない結果になるだろう。午後のポーションが四本でるか、それとも五本出るか。もしくはグリフォンからポーションが出るか。この辺りで今日の収入が決まる。


 グリフォンのポーションは例によってまだ金額どころか効能すらも解っていない。年も明けたことだし、そろそろ一端ぐらいは垣間見えても良いような気がする。もう何カ月待たされているんだろうか。


 これが最先端を走る、ということなんだろう。俺の後に道が出来ていく。道を切り開いて新しい物品を、新しい材料を新しい食材を。それぞれの効果や効能を徐々に解明していく。


 しかし、グリフォンのくれるポーションはどんな効果なんだろう? 思いつく限りの効能はランク5のヒールポーションやキュアポーションで充分に発揮されていることを思えば、次にどんな効能が出来上がるのかは楽しみであるとともにちょっとした恐怖感もある。


 もしも、現実では不可能な事象を巻き起こす……例えば死者蘇生だったり、そういう効能があったりすると、これはもう金額で折り合いをつけるのは難しいんじゃないだろうか。査定の金額ではある一定額に収まることは理解できるが、その先がどうなるかがわからない。


 どんな社会問題を引き起こしてくれるんだろう? 楽しみでもあるが、つらみでもある。これを量産するために更に深く潜れ、なんていう話にもなってくるんだろうか。


 あ。結衣さんからレインだ。「今日の成果はどうですか」だそうだ。「今日も順調」としっかり報告しておく事にしよう。


 さて、食事を終えてスマホを適当にいじって消化の時間を作る。これと言って激しく運動する予定はないが、ちょっとペースを上げて初日から多くのドロップを狙うのも悪くない。一応未査定の物品は七十層に溜めてあるという体を装っているので、他のパーティーが追いついてくるまでは問題なく探索が出来ることになるだろう。


 さて、今年中に追いついてくる探索者はどのぐらいいるんだろうな。それを楽しみにしながら自分のペースで攻略を進めるというのも悪くないだろう。


 まずは、一人で探索して今年も調子よく動くことが出来ている、という自信の獲得に努めなければな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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新しいポーションは毛が生えるとかだったら需要は天元突破しそうではあるが部位再生の時点で毛根は再生されるのかどうかは気になるな。
> 新年ボケは昨日で終わって、 たった1日でボケるとはワーカホリック極まれり。
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