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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十九章:ダンジョン探索旅情編 ~旅先で色々と~

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1362/1383

1362:帰りは素早く

 帰りのバスもやはり暑かったが、風呂や赤砂の砂漠に比べればなんということもない。他の観光客から聞こえてくる音声が聞き取れない言語であること以外は問題もなく阿蘇駅までバスでたどり着いて、芽生さんを起こす。


 少し寝ぼけている芽生さんは手元の荷物が少なくなってることを見て少し混乱していたが、俺が懐のポケットに入れたというジェスチャーを見て、保管庫に収納したということに気づき、何事もなかったかのようにバスを降りてくれた。


「寝ている間に仕舞われるとちょっとびっくりするんですが」

「スキがあったら放り込むようにはしてたけど、バレない程度にちょっとは残したからまあセーフでしょ」

「帰りは家まで来てもらわないといけないですね。この旅行全体の荷物がどれだけあるのかがわからなくなってきました」

「とりあえず、これでちょっとした手荷物だけで帰れるな」

「そこは感謝しておきましょう」


 特急がないので豊肥本線鈍行で肥後大津まで乗り、そこで乗り換えて本数の多い熊本駅までの電車に乗り換える。一時間ほどゆっくりと進む。どうやらここが非電化区間であるから本数が少ない、ということらしい。出来れば特急で真っ直ぐ熊本まで行きたかったが、そう一日に本数が多い区間ではない。これも、熊本への半導体工場の誘致の結果いかんでは変わってくるのだろうな。


 のんびり電車で揺られていると、今度は俺のほうが眠たくなってきた。その様子を見た芽生さんがこっちの様子を心配してくる。


「さっきまで私寝てたんで眠気は飛んでしまいました。代わりに寝ててもいいですよ。駅に着いたら起こします」

「そうか……くぁ、じゃちょっと頼むわ。流石に俺も満腹が今頃来たのか眠くなってきた」


 ◇◆◇◆◇◆◇


 side:文月芽生(ふづきめお)


 洋一さんは寝てしまいましたねえ。寝顔もなんだかかわいいです。あんなロマンチックな場面で同棲を切り出してくるなんて思いもしませんでしたが、洋一さんなりに私の今後を案じてくれている、というところでしょうか。


 でも、これからです。実際に同棲が始まったらお互いの居住性の違いや宗教や何やらぶつかり合うことがあるはずですから、そこをうまいこと調整していかないといけません。そこで上手くいかなくなって別れるカップルの話は星の数ほどあるはずですから、その点では私が洋一さんにあわせていくのか、洋一さんが私にあわせてくれるのか、それとも二人の落としどころを決めてそこで収めるのか。


 そういう選択がこれからいくつもあると考えると、中々難しい局面を迎えるのかもしれません。大事なのはこれから、というところでしょうか。


 でも、嬉しかったなあ。合鍵を受け取ってもそう頻繁に訪れている訳ではないので、このまま自然解消して四月からはまた別の道を歩む、という可能性もあったわけですから、それに比べればこの今の関係は私にとってベターなのかもしれません。


 そういえば結衣さんはどうするんでしょうねえこの人。私にそう迫ってきたということは、結衣さんにも同じことを言うつもりなんでしょうか。それとも、結衣さんを切り離してでも私と一緒になりたいとこの人なりの決意でもって考えたことなんでしょうか。


 私としては……純粋に嬉しい。でも素直に喜べない部分があるのも確か。下半身がだらしない人ではないので、結衣さんと私と両方と同棲する、という可能性だってあります。そう思うととりあえず今のところは結衣さんより一歩リードという気がしますね。とりあえず今はここで納得しておいて、また結衣さんとは話し合いの機会を設けなければいけませんね。


 来年は女の戦いが始まる……結衣さんに負けないように常に張り合っていないといけないな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


「……さん、洋一さん、着きましたよ」


 どうやら到着したらしい。芽生さんに起こされてパッと目が覚めて、気が付くと丁度駅に停車する十秒前ぐらいだった。


「ありがとう、おかげで多少スッキリした」

「乗り換えて熊本駅に着いたら、ちょっと買い物を買い足してそれから帰りましょう。まだのぞみやさくらは全席予約じゃないはずなので座れる余裕はあるはずです」

「その予定で組んだが……のんびりもしたが、結構忙しい旅行だったな」

「そうですね……一週間分ぐらい仕事をした気分になりましたよ」


 なんだかんだ行程は無事に進み、芽生さんの望みも叶い、俺も言わんとしていたことを言い、丸く収まることが出来たところか。


 乗り換えて三十分ほど電車で移動し、熊本駅に到着。ちょうどお昼時だったこともあり、熊本駅内で適当に昼食が取れる店を探すことにした。色々選べたので二人で相談した結果、トンカツの店に入ることにした。鹿児島豚が食べれるということで、鹿児島に用事はないだろうからここで食べていこうということになった。


 というわけで、六白黒豚ひれかつを注文。この旅行は随分贅沢をしているが、ここも経費で落とす。昨日からの行動は交通費を除いては全額経費では落ちないだろうなというのが俺の予想だ。


 ただ、食事ぐらいは問題なく経費として落ちる、同業者である芽生さんと一緒に食事をしているんだから接待費の内に入るんじゃないか、というのが俺の今のところの予想だ。ダメだったら佐藤税理士に怒られることにしよう。


 六白黒豚はサッパリとしていて柔らかく、べたつかない脂が胃袋に優しい気がする。サクサクとそのまま胃に入っていってくれて、その上でちゃんと揚げ物としてのポテンシャルとヒレカツとしての味わいを残しつつ、ソースとよく絡みあっていて美味しい。重たいものを食べたら帰りの新幹線が大変だろうと当社比少なめのものを注文したが、もうちょっと量があっても良かったかもしれないな。


 サクサクと胃袋に軽く、しかししっかりと重たい食事を詰めたところで再びお土産コーナーを物色。くまモングッズも……一応一つぐらいは買っておかないと熊本に行ったっていう証明にならないかもしれないからな。人数分のラーメンあたりを仕入れていけばいいかな。


 適当にお土産を決めたところで買い物を完了させて今度こそ帰り道に着く。熊本駅で乗り換えを意識してきっちり帰り道を確保。今の時間からなら熊本駅まで乗り換え込みで今のうちに予約を入れることが出来た。これで午後七時前には名古屋に到着できることになる。


 帰りのチケットも無事入手したところで帰りの時間が決まり、後はお土産をもう少し買い込んでの列車待ち、ということになる。


「後は何か目を引くお土産というところだが……くまモンだらけだな」

「流石にこれを買っていく趣味はないんですが……友人に一応お土産として持っていきますかね」


 ぬいぐるみを一つ選ぶと会計にしに行った。芽生さんも友人ちゃんといたんだな、よかったよかった。


「今何か失礼なことを考えられたような気がしますが」

「そ、そんなことはないぞ」

「本当ですかねえ。まあいいです。これも買っていきましょう」


 芽生さんの手荷物が増えてきている。これも移動中に機会があればちょこちょこ保管庫に入れていくことにしよう。


 俺のお土産はほぼ保管庫に入れてしまったので大きな目隠し用の荷物としてバッグを背負っているので、そのバッグにしまい込んだふりをして保管庫に入れてしまえば俺の手荷物は大体なんでも入るようになってしまっている。これも目隠しと便利さを兼ね備えたおじさん印の保管庫活用法だ。


 時間目一杯まで使うと乗り遅れちゃったりする可能性もあるので、十分前には新幹線に乗る準備をして待つ。


「はあ……旅行ももうおしまいですか。長かったような短かったような」

「実際には二日ダンジョン通って一日ゆっくりして、だからまあなんだかんだ楽しめた気はするな」

「またガンテツさんのところに行く必要は出てくるんですかね。今度の新しいドロップ品のネタはないかとか、またお酒と一緒に要求されそうではあります」

「芽生さん寝てたからその辺は聞いてないか。ここから先は地元の探索者と顔を合わせてネタとか酒とかを都合してくれってちゃんと伝えてきたよ。流石に毎回食材を探すのも大変だし、高級食材がそうぽんぽんと出てくるわけでもないからな」


 芽生さんと、ガンテツとどんな話をしたのかを共有している間に新幹線が来たので乗り込んで席に座って、続きを話しながら北上。そのままガンテツのダンジョンの感想戦に入る。


「やっぱりブドウが重すぎるんじゃないですかね、あれ。二十一層のセーフエリアが近いとはいえリヤカー背負って移動するには重すぎると思うんですよ」

「確かにそれはあるかもなあ。自分たちは時間の都合で遭遇しなかったが、午前と午後でそれぞれ査定を受けて潜りなおしてる可能性はあるな。そこまで定点観測しなかったってのもあるが……あぁ、調べるにはネットに動画を上げてるパーティーがあるかもしれないからそれを調べてみることにするか」

「動画関係はいっぱいありそうですね……」


 芽生さんがスマホをいじって熊本第二ダンジョンの動画を検索してはこちらに見せて来る。


「どうやら二十一層までは動画で配信してる人もいますね。この人は二十四階層まで行ってますね」

「流石にここで動画を見るのはギガがなくなるし移動中だから、見るとしてものぞみに乗り換えてからかな。うっかり博多で降りそこなっても困るし」

「そうですね、今のところは大人しくしておきましょう」


 口が暇になってきて、お昼が意外に軽めだったのでちょっとお腹が空いてきた。かといってダンジョン産のお土産を開けるのもちょっと辛い環境ではあるので、自分用のお土産として買ってきた熊本駅土産を早速食べ始める。芽生さんも断ることなく、横から手がにゅっと出てきた。


「もうちょっと量が多くてもよかったかもしれませんね、今日のお昼」

「もしかしたら旅館での量が胃袋が拡張されていて一杯食べれる体にされてしまったかもしれない」

「帰ったら年末年始はダイエット探索ですかねえ」


 サクサクとサブレを食べつつ、乾いた喉を俺にコーラを要求しては胃袋に詰めていく。お土産を早速帰り道に食べるという行為はおそらく国内外においてもそれなりの数見られることはできると思うが、俺自身がそうするとは思わなかった。やはり移動時間が暇、というのはそれなりにストレスに感じるらしい。


 この熊本から名古屋までの四時間の移動だけで、二億ちょっとの金額を稼いでしまえる俺としてはこの移動時間も短くしたいところではある。この先の日本の交通行政によっては、これも短くしてしまえるのか。それとも、ダンジョン改革みたいなものが起きてダンジョン間での場所の出入りができるようになる。


 たとえばだが、いまだに解っていない百五層にはそれぞれそこまで出来上がっているダンジョンとの通路があり、そこを抜けることで次元間の移動により移動改革が行われるようになる……とかそういうのだと面白いんだが。


 まあ、何にしても百五層に向かえるようになるのは後数年先にはなるだろう。その頃まで俺は探索者を続けていられるのかどうかはわからない。もしかしたら肉体的に早めに寿命が来て、その前に引退という話も充分ありうることだ。あまり未来の話はしないでおこう。


 博多駅について乗り換え、東京行きののぞみで名古屋で降りる。流石におやつをつまみ食いして二人満足したのか、いつも通りうつらうつらと眠たくなってきた。アラームをかけて名古屋到着予定時刻にセットすると、俺も腕を組んでそのまま眠りに入る。


 少ししてアラーム音で目覚める。どうやら完全に寝入ってたようだ。夢も見ず、完全に無の意識のまま眠った三時間強だった。探索にもこういうお眠タイムを意識した方がより効率的に回れたりもするんだろうか。ちょっと考えておこう。


 しかし、実入りはそこそことは言えスキルオーブまでは落とせなかった今回の新熊本第二ダンジョン探索、反省点があるとすれば奥まで行けなかったことぐらいか。せっかく来たんだから最奥まで行くのが礼儀だったのかもしれない。


 もしかしたらあそこが最奥のセーフエリアで、二十八層まではまだ誰もたどり着いていないという話だしそういう意味ではちゃんと仕事はした、ということにしておこうか。反省点を挙げだせばキリがない。


 今回もきちんと仕事をしたし、いくつかあった目標もすべて達成した。ついでに芽生さんにずっと言えなかったことを伝えられたし、色々と充実した時間であったことは確かだ。芽生さんがいつ頃引っ越しを決めるまでは解らないが、とりあえず今日芽生さんの部屋を紹介してもらってお土産と荷物の運び込みだけは済ませておかないとな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
>>いまだに解っていない一〇五層 >>何にしても百五層に向かえるようになる 層表記が表記揺れしてます プライベートジェットとは言わなくてもヘリチャーターで十分時間短縮はできますね 思い立ったら飛…
> 帰りのバスもやはり暑かった」 暖房はリッチ 密度はエコノミー > 宗教」 きのこたけのことか シチューライスとか > 上手くいかなくなって別れる」 お金は全てを解決すると言う芽生さん > そ…
芽生さんの友人かー そっち方面では安村さん知り合い全くいませんしねえ どっかでばったり遭遇したらどう説明するのやら
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