1363:突撃芽生さん家
ダンジョンで潮干狩りを
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名古屋駅について乗り換え。芽生さんに最寄り駅を教えてもらってそこまでついて行くことになる。
なにせ旅行のお土産二人分と着替えやら装備やら一通りを俺の保管庫にぶち込んである都合上、じゃあここで解散だから後よろしくねー、とぶちまけるわけにはいかないからである。
芽生さんも今後のスケジュールやら引っ越しの手伝いやらで俺を呼ぶ機会が出来る可能性があるため、もうここまで来たらハッキリ教えてしまって荷物を運んでもらってついでにお茶でも出しますか、ぐらいのつもりでいるらしい。
「あんまり人の部屋をいじったりじろじろ見るのはなしですからね」
「そんなことはしないさ。見られたくないものとかあったら事前に隠しておいてね」
乗り換えて最寄り駅までに色々取り決めをしつつ電車に立ち乗り。流石にずっと座っていて腰がだるくなっている。今座ってしまうと次に立ち上がる時に面倒くさくなるだろう。
最寄り駅まで三十分ほど乗り合わせると、電車を降りて駅からの道を歩く。芽生さんの家の周辺はこう言うところなのか……結構田舎だな。そのほうが人目も少なくて家賃も安くていいのかもしれないな。
しばらく歩いて到着した芽生さんの部屋は、あまり家賃がかかって無さそうな結構年代物のアパートの一室だった。やはり元苦学生、住居にそれほど金をかけられなかったのだろう。奨学金返した後の儲けでアパートを移したりしなかったらしい。まあ、通い慣れた道のほうがかえって安全ということもある。
試しに【索敵】で他の部屋の様子を観察するが、どうやら独り身専用の住居らしいな。部屋に二人以上でいる、という部屋を見つけることはできなかった。
「ちょっと表で待っててください。中を片付けて問題ないか確認してきます」
芽生さんが俺を外に追い出してしばらく部屋の中で何か色々としている。【索敵】で追いかける範囲で確認すると、部屋の中身やおそらくキッチンであろう、そのあたりに異常がないかや部屋に洗濯物が干しっぱなしでないかなどを確認しているのだろう。今日の俺は借りてきた猫。大人しく玄関にも入らず扉の外でじっとしていた。
十分ほどして、芽生さんから入ってOKの返事が返ってきたので玄関から入る。玄関にスーツケースをまず置き、中に入っていくと1LDKといった趣の部屋だ。芽生さんの私室を覗かないようにそのままリビングの机の上に買ってきたお土産やら探索用品やらなにやらをドサドサと出していく。
「ダンジョンドロップ品はどうする? 誰かに分けるなら出すけど」
「ブルーベリーは一つ欲しいかな。後バナナも一本あると嬉しいかも。それ以外は……馬肉が五つほどあれば食費が浮きますねえ」
お願い通りに食品を出すと、もう机の上にスペースがないので台所の方へ出していく。
「いっぱい買いましたね。ちょっと予想外の買い物だった気がします」
「まあ、買わずに帰ってやっぱり買っておけばよかったとなるよりはマシなんじゃないかな」
「さて、お茶でも入れますか? それとも真っ直ぐ帰ります? 」
「今日のところは帰ろうかな。芽生さんの家の位置は多分覚えた。というかスマホに記録させておく。次来る時は引っ越しの準備の時だろうし」
そういうと、芽生さんはちょっと顔を赤くしつつもしっかりとこっちを見て話し始める。
「今までも合鍵はもらいつつも必要な時にしか行きませんでしたが、今後は色々と示し合わせていかないとなりませんよね」
「そりゃそうだな、生活スタイルの違いとか宗教観とかご飯の味とか。色々決めなきゃいけないこともあるだろうが、基本的には俺がやっていく間にちょいちょいと芽生さんにやってもらっていくことになるかな」
「その辺は引っ越してから詰めますか、それとも今から話し合いを始めますか」
ふむ……今からそこを詰めるかどうかか。雰囲気と風呂の勢いはあったとはいえ、正式にこっちから同棲を持ち掛けたことになる。今になって少し冷静になってきたんだろうな。
「引っ越しして問題が出始めてからでもいいとは思うが……やっぱり不安か? 」
「不安は確かにあります。普段見せない部分も見せることになりますからね。洋一さんを幻滅させてしまうかもしれませんし、逆に普段見ない洋一さんの姿に幻滅するかもしれません。その前に話しあえることは話しあってしまいたいと思うのですが」
「例えば……洗濯物は別に洗う、とかか」
「それも一つありですね。例えば、女性の匂いのついた下着や服なんて着れるか! みたいなところはあったりしますか」
うーん……芽生さんの匂いのする下着か。興奮はするかもしれないがいや、ということはないだろうな。
「多分だが、俺のほうではない。むしろ気にするなら芽生さんかな。柔軟剤をそれぞれ違うものを使うとかで差別化はできると思うんだが」
「なるほど、そういう……ならそこは追々考えていくことにしましょう。後は……そうですね、ご飯をどっちが作るかとかも大事です。同棲する以上同じものを食べる可能性がありますから、好き嫌いがあればそれも克服するか避けるかしないといけないでしょうし」
「食べ物は食べて見なくちゃわからないかな。アレルギーなんかもあるだろうし」
「ふむぅ……じゃあ後はですねえ……」
何やら、それとない拒否感が伝わってくるような気がする。まだ同棲を切り出すのは早かったか。
「別に同棲が早いと思うなら、ちょくちょく家に来るようにしてこっちで泊まっていってご飯食べて、生活して……の回数を増やすところから始めてもいいんだぞ? 無理矢理家に連れてこなければいけないわけでもないんだし」
「そう、いや、えっと、その……私が混乱してますね。ちょっと待ってください、落ち着きます」
考えが混乱しているのか、芽生さんが気持ちを落ち着かせ始めた。しばらく深呼吸して、冷静さを取り戻そうとしている。
「コーヒーを淹れましょう。飲みますよね? 」
「ああ、貰おうかな。話し合いするにしても喉が渇いていてはうまく言葉が出ない」
芽生さんが落ち着くためにコーヒーを淹れ始める。芽生さんもインスタント派のようだ。ここは一つ共通点を見いだせたな。
入れてもらったコーヒーに氷を一つ貰って、少し冷ましてから飲む。喉が渇いているときは熱いものよりも少し温いもののほうが飲みやすい。その分酸化して酸っぱくなってしまうが。
「ふぅ……ちょっと落ち着いてきました。基本的には洋一さんのおうちにお邪魔する、という方針で良いんですね? 」
「そうなるな。ただ、普段俺が食べてる物と芽生さんが食べてる物が違うから、まずは朝食に何を食べるか、辺りから詰め始めるか? 俺が朝食を作るとトーストと目玉焼きとキャベツになってしまうが」
「それは構いませんが、お昼とかお夕食とかはどうされてるんです? 普段」
「基本的には出来合い物を買ってきたりコンビニで調達してるな。朝と昼は自分で作るが夕食まで作る体力が日々なくなってきたのもあるが、最近は出来合い物を買うことのほうが増えた。特にダンジョンに通い出してからはそうだな」
「では、そこにちょこちょこと私が自分で作っていくことにしましょう。一緒にダンジョンに潜らないときはちゃんと連絡はするので」
それは助かるな。あ、でも炊飯器を持ち歩く都合上ご飯は炊けるまで待つことになるから……今後炊飯器は置いていくことにしよう。タイマーで家に帰る時間に炊けるようにセットすることもできるからな。
「これで一つは難題をクリアできたな。この調子で話し合っていこう」
「そうですね、後はさっきも言った洗濯物ですが、柔軟剤や洗剤はそれぞれで使いますか? それともどっちかに合わせて使っていきますか? 」
「柔軟剤でアレルギーとかアトピーが起きたような現象はないから、そこは芽生さんに合わせてもいいし、芽生さんがこっちに合わせてくれてもいい。俺と同じ匂いのする洗濯物で良ければ、という話になるが」
「そこは問題ないですね。後は……考えれば考えるほどドツボにはまっていきそうな気がします」
「とりあえず年末年始を挟むことだし、その間に詰めつつゆっくりするのがいいんじゃないかな。俺はいつでも待ってるし、芽生さんの部屋はいつでも開けてあるから覚悟が出来たタイミングで飛び込んできてくれればいいよ」
こっちは言い出した側なんだからどしっと構えて待っていればいいのだ。大人しくコーヒーを啜って芽生さんが次の条件を出してくるまで大人しく待っていよう。
「つい勢いと雰囲気で同棲しようと言い出したものの、問題は色々出て来るだろうしな。一つ一つ解決していこう」
「そのまま同棲して結婚しないカップルとかいますけど、そうならないですよね? ちゃんと最後まで責任取ってくれるんですよね? 」
芽生さんにくぎを刺される。そんなことはないとは思うぞ。
「今のところその予定はない。ちゃんとする。それは三人で話したあの時から変わってない……つもりだ。結婚するならどちらかになるけど、俺としては芽生さんにずっと一緒にいて欲しい。先に逝くだろう俺を看取ってほしい。その前準備みたいなものだ」
「じゃあ、結衣さんはどうするんですか。結衣さんも一緒に同棲、という形にもなるかもしれないんですよね」
結衣さんは……芽生さんを選んだから結衣さんはさようなら、と言える間柄でもない。このまま恋人関係を続けるか、結衣さんも一緒に住むかはまだ未定だ。
「そうなるかもしれない。もしかして彼女が彼女で自分の幸せを見つけたのならそれでもいいとも思ってるし、二人で看取ってくれても構わない。出来れば二人仲良く笑顔で見送ってくれると嬉しいが」
「そんな何十年か先の話をもう決めてしまうんですか」
「昔の人はもっと早く決めてたんだからそれはそれでいいんじゃないかと思うよ。是非とも姓を変えて安村芽生として社会人生活の第一歩を踏み出してほしいとまではいわないけどさ。逆に俺が文月洋一になってもいいし、そこも含めて考えながら生活する時間があってもいいと思う」
安村という名字にそこまでこだわっている訳ではないし、残さなければならないというわけでもない。どっちの姓を使うにせよ、いつかは当人たちが決めることだ。その時の気持ちで答えることにしよう。
「なるほど……うん、うん、なんか少しずつですが前に進めそうな気がしてきました」
「まずは気軽に家に来ることから始めようか。鍵は渡してあるんだし、戸締りさえちゃんとしてくれてたら多少家の中を荒らしてくれてもいいから」
「そうですねえ、まずは年末年始をそっちで過ごしてダラダラするところから始めましょうかねえ」
「おう、そこからだな」
芽生さんが少しずつだが、悩みを解決して普段通りの芽生さんに戻りつつある。
「じゃあ、私の年末年始の目標は洋一さんの家に慣れていくことにします。実際に同棲までいくかはわかりませんが、部屋はそのままの状態にしておこうかなと」
「それでいいとおもうよ。お互い家賃や固定資産税を節約しなきゃいけないような御身分でもないからな」
「同棲するとなれば部屋を引き払わなくちゃいけないですし、家電製品の処分やなんかで手間やお金もかかりますからね。そこも考えたら今から同棲する、というより半同棲の形のほうがいいかもしれません。そうしましょう。できるだけお世話になる……いや違いますね、二人でやっていくということで」
「そういう形で納得できるならそれでいいと思う。足の早い食品の消費とかもあるはずだしな」
芽生さんの中で納得できる落としどころが決まったようだ。家具類はこっちにもあるからまあいいとして、必要なものは買いそろえるかこっちから持っていくか等、色々これから考えることは増えると思うが芽生さんなら多分良い回答を引き出してくれる事だろう。
コーヒーを飲み終えてお土産物の確認。俺の保管庫に入ってて実は芽生さんが買ったものだった、というものがないように一通り出して確認しておく。これは俺が買ったもの。これは知らないもの。これは芽生さんが買ったことを目撃してる物、とそれぞれ分けだして、しばらくそれに時間を費やす。
「では、また明日以降にそっちへ行きます。着替えとか色々持って」
「楽しみにして待ってることにするよ。俺も帰って荷物整理と洗濯と、それから賞味期限が近いものの消費のために色々としないとな」
玄関口で別れのキスをして家を出……ようとすると、芽生さんに最後の確認をされる。
「念のため確認ですが、毎晩……ということはないですよね? 」
「そこはご期待に添えられるような形にしようと思う」
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