聖神「何があっても絶対に帰ります!!!!!」
おおっと、今日はもう土曜日か!
すみません┏○┓
皆さんこんにちは。
神城家で大黒柱をさせていただいています、神城聖神と申します。
現在の時刻は3時35分程ですかね。
腕時計で時間を確認してから、視線を自身の横に座っている人に向けます。
そこには僕の最愛の人で妻の歌純さんがとても美味しそうに、頬にソースを付けながら機内食のお肉をリスのように頬を膨らませながら可愛らしく頬張っています。
「いらないの?」
歌純さんが僕の前にある同じく機内食のお魚を見ながら言います。
私は返事をしようと思いましたが、返事を返す前に既にお皿の上のお魚はもういません。
お皿の上から歌純さんの顔へ視線を移しますが、歌純さんはそっと視線をそらします。ですが、その口から覗くお魚の尻尾は犯人は歌純さんである事を示していました。
「歌純さん?」
「もぐもぐ.........あたしは聖神の魚なんて知らないわよ!!」
僕はまだ何も聞いていないのですが.....。
と言うよりもその言い方だと、誰が犯人なのか自分から言ってるようなものですよ?
思わずくすりと笑い、ナフキンで歌純さんの口を拭ってあげます。
「そうですか。ちょうどお腹がいっぱいだったので、もし良かったら歌純さんに食べて頂こうと思っていたのですが.........。」
「そうよね!そうだと思ってあたしが食べてあげたのよ!!」
えっへんどうよ、と言うように胸を張る歌純さん。可愛らしいので頭を撫でておきました。
現在僕達は出張先の大阪に向かって快適な空の旅の真っ最中です。
本当は新幹線で行こうと思っていたのですが、今朝になって歌純さんがどうしても飛行機に乗りたいと言いましたので急遽飛行機に変更となりました。たまたま2席空いていたので良かったのですが、危うく大阪に行くことが出来なくなる所でした。歌純さんは絶対にこれと決めたら曲げませんから。
このように歌純さんには振り回されてばかりですが、歌純さんがいて緋彩さんがいて怜我君がいて、僕はこの生活がとても充実して幸せだと思っています。
歌純さんと出会って、ベタなセリフですが僕の無色透明の人生はとても色付いたものとなりました。
あの何も無い場所から連れ出してくれた歌純さんには、今でもとても感謝しています。
『皆様、間も無く当機は着陸致しますーーーーー。』
こうして、道中は歌純さんが結局僕の昼食を全部食べてしまった事以外、特に何も起きずに至って平和に大阪の大地に足を踏み入れることが出来ました。
「では、ホテルに向かいましょうか。」
「待って、まだお菓子を買っていないわ。」
タクシー乗り場に向かおうとした僕の袖を引っ張って引き止め、空港内にあるコンビニを指差す歌純さん。ヨダレが垂れてますよ。あっ、袖で拭わないで下さい。
「先程機内でも沢山食べていませんでしたか?余り食べ過ぎると身体に良くありませんよ。」
「いいじゃないの。今日はクリスマスなのよ?邪魔者も居ないし、ケーキでも買って久しぶりに2人でクリスマス楽しみましょうよ!!」
「.............。」
そう言われると何も言い返せなくなります。
確かにここ最近は毎年家族4人で過ごしていましたね。僕も久しぶりに2人で過ごしたいとも思っていました。それに実はクリスマスプレゼントも買って鞄の中にしまってあります。
ただこれだけは言わせてください。緋彩さんと怜我君のことを邪魔等と思った事は一度もありませんよ!その証拠に、宅配の時間指定で緋彩さんと怜我君にもプレゼントを送っています。
僕には皆大切な宝物なのです。
僕が心の中で自分で自分に言い訳じみたことを言っていると、気付いたら歌純さんは居なくなっていました。
買い物を終えて、大量のお菓子をコンビ二袋に詰めてホクホク顔の歌純さんがもうどこにも行かないよう目を光らせながらタクシーに乗り込みます。
「どちらまでですか?」
「〇×ホテルまでお願いします。」
分かりましたと、車をホテルに向かって発進させる運転手。
車に乗ってしまえば流石の歌純さんでも、何処かへ行ってしまうことはないでしょう。僕は安心して背もたれに身体を預けます。
そうしてタクシーは道路を進んでいきます。
暫くして、僕が携帯に保存してある家族の写真を見ていた時です。つんつんと横からつつかれたので視線を横にすると、何故かもうお菓子の袋を開けて中に入ってあるポテチを頬張っている歌純さんが首を傾げていました。
「どうかしましたか?」
「もぐもぐ.....ねえ聖神。」
「何ですか?」
「もぐ.....ごっくん。何か外の様子変じゃない?」
窓の外を指差しそう言われ、僕も外を見ますが、特に変だという気はしません。あえて言うなら、何処かで火事でも起きているのか、もうもうと煙が立ち上っていることぐらいでしょうか?
.........いえ、前言撤回です。明らかにおかしいです。煙が立ち上っている箇所が多すぎます。パッと見て、これだとざっと十数件は火事が起きているじゃないですか。それに車も僕達が乗っているこのタクシー以外に全く走っていません。
「運転手さん!ちょっとラジオつけてください!!」
「は、はい!」
運転手さんも外の様子がおかしいと分かったのか急いでラジオをつけてくれます。
これ程、多くの場所で火事か何かが起きているのです。恐らくニュースなどで何らかの報道がされているでしょう。
『えー、とっても美味しそうなグラタンですね。ーーー』
『○×高校が歴史的な快挙を達成しました。ーーー』
『ここ数日のうちに連続的に各地で発生している地震ですがーーー』
ですが、おかしな事にどの番組でも特にこの事について報道しているものがないのです。何故でしょうか?もしかしてあの煙は特に何も無いと言うのでしょうか?
「何処も報道していませんね。大した事では無いのでしょうか?」
「.............。」
すると、無言で食べていたお菓子をレジ袋に戻した歌純さんが何を思ったのか突然車の窓を開けました。
暖房の効いた車内に突如舞い込む冬の風。それに煽られ、歌純さんの高めで括られた髪がなびきます。一瞬にしてあの暖かかった車内は極寒の地になってしまいました。
「か、歌純さん、窓を開けては寒いですよ。」
あまりの寒さに空いた窓を閉めようとするのですが歌純さんに遮られてしまいます。その上、僕の両手を歌純さんの片手で拘束されてしまいました。押しても引いてもびくともしません。そんな事はこれまで何度もありましたが、目の前の現実に僕の中にある男としての何かがポッキリ折れそうです。
「血の匂いがする。」
心に深刻な傷を負いつつ、運転手さんに謝ります。そして僕が何とかして窓を閉めようとしていると、歌純さんはポツリと小さな声で何かを呟きました。
とても小さな声なので聞き取れず、すぐに聞き返そうとしたのですが、時すでに遅し。歌純さんは空いていた窓から、走行中のタクシーの上にスルスルと登っていってしまいました。
何やってるんですか???!!!
「うわぁっ!歌純さん戻ってきてください!!」
「お客さん!何してんの危ないでしょう!!」
僕は車内に戻るよう歌純さんに手を伸ばすのですが、歌純さんは運転手さんがいる前の窓を叩いて止まらずに走れと視線だけで脅しています。
歌純さんに睨まれてしまった運転手さんは歌純さんの殺気に当てられ、恐怖から全身がぶるぶると小刻みに震えてしまいました。
「あわわわわっ.....。」
「落ち着いて下さい。大丈夫です。深呼吸して。ゆっくりと停車して下さい。」
恐怖で震える運転手さんが落ち着くようにゆっくり優しく話しかけて、道路の脇に車を停車してもらいます。
車を無事停車できた後もまだ、運転手さんの手は震えています。
睨まれただけで大袈裟だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが本当に怖いんですよ?
今でこそそんな視線も歌純さんの魅力の1つと思えますが、彼女と出会った頃はよく睨みつけられ、今の運転手さんの様になっていました。懐かしいものですね。
運転手さんの事は気にかかりつつも、停車したタクシーから降りて、未だタクシーの上で仁王立ちをして遠くを睨むようにして見る歌純さんに声をかけます。
「突然どうしたのですか?」
「煙が上がっている周辺に何か変なものがーーーー」
キキーーーーッ!!
歌純さんが何かを言いかけていると、突如僕の背後から車の急ブレーキが響いてきました。
反射的に振り返ると、僕らに向かってバスが目と鼻の先まで迫ってきていました。
「くそっ!」
先程までタクシーの上にいた歌純さんが僕に飛び付き、紙一重の所でバスを避けます。そして僕達を通り過ぎていったバスは僕達の背後にあった、まだ運転手さんが乗っているタクシーの横に突っ込むとフロントガラスが派手に割れながらもバスは停止します。
バスに突っ込まれたタクシーは見るも無残な姿となっていました。
「何故バスが.........。」
バスが突っ込んできたのも気になりますが、タクシーに乗っていた運転手さんの安否の確認の方が先だと思い、僕と歌純さんは急いでタクシーに駆け寄ります。
「運転手さん大丈夫ですか!?」
「運転手!大丈夫なら返事しなさい!!」
僕はバスがぶつかった方とは逆の方からドアを開けようとしますが、バスとぶつかった時の衝撃で変形してしまったのか、固くて開けようとしても扉は開きません。
仕方が無いので中を覗こうとするのですが、飛び散った血のせいで車内の様子を知ることすらできません。
取り敢えず僕は救急車を呼ぶ為に携帯を取り出し、119番に掛けましたが何故か電話は繋がりませんでした。
僕が何度もかけ直している間、どのドアも開かない事を確認した歌純さんが、運転手さんがいる前の窓ガラスじゃなく、後ろの窓ガラスを叩きわろうと拳を構えたその時でした。
「わっ!地震ですか!?」
「最近多いわね。」
僕が突然の大きな地震に立っていられず、座り込んでしまいます。
そんな中歌純さんはと言うと、まるで地震が起きていることを感じさせない凛々しい佇まいでした。惚れ直しそうです。
暫くして地震が収まると、すぐに立ち上がりタクシーに近寄ります。その間に歌純さんは窓ガラスを叩き割っていました。
普通なら素手でガラスなど割っては手を怪我してしまいますが、歌純さんに限ってはそんな事を心配しては怒られてしまいます。
僕としてはとてもとても気になるのですが、実際歌純さんは校舎の4階から飛び降りてもぴんぴんしているような方なので大丈夫でしょう。
そうして窓ガラスを叩き割った歌純は、割れて開いた窓から血塗れの運転手さんを引きずり出すと、首に指を当ててから胸元に耳を当てると首を降りました。
どうやら手遅れだったみたいです。
僕は着ていたジャケットを脱ぐとそっと運転手さんに被せます。
「救急車はどうだったの?」
「いえ、何故か繋がらなくて.....。」
「ふーん。まぁ繋がらないなら仕方ないわね。取り敢えずバスの中も確認しましょう。あっちも酷いことになってそうだし。」
親指でくいッと指さした先にあるのは、先程タクシーに突っ込んだバスです。
大きなフロントガラスには沢山ヒビが入っており、無残にもそのガラスには大量の血が飛び散っていました。
「酷いですね。」
「そうね、じゃあ行きましょう。」
僕はバスの中の悲惨な光景を思い浮かべてしまい少し中に入るのを躊躇してしまいますが、物怖じや躊躇などを全くしない歌純さんに引き摺られバスへと向かっていきます。
幸いな事にタクシーの時とは違い、ドアは簡単に空いてくれました。バスに入って最初に僕達の目に入ってきたのはありえないほど大量の真っ赤の血がまるで絨毯の様にバスの床を埋め尽くしているとこでした。そして扉を開けたことによりその血は地面に滴り落ちどんどん広がって行きます。
「こ、これは.....!?」
「.........聖神、あなたは外で待ってて。」
「えっ?ちょっ、歌純さんっ!!」
僕が思わず口元を押さえ吐き気を我慢していると、歌純さんは僕に待っているように言い残すと、僕が止める間もなくバスの中へと入り、ドアを閉めていってしまいました。
僕はと言うと、彼女の言葉に逆らう事など出来るはずもなく大人しく外で待っていることにしました。何だか夫と妻という立場が逆転している気がしますが、まぁいいでしょう。
もちろん、ただ呆然として待つのではなく携帯で警察や消防に電話をかけたりと、ここでもできることをします。ですが、救急車と同じように警察や消防にも電話は繋がりませんでした。一体何が起きているというのでしょうか?
そうして帰ってくるのが遅い歌純さんを待っていると、何やらバスの方が騒がしくなっていました。何かあったのでしょうか?
「歌純さん?何かあったんですかー?」
気になった僕が少しバスの中を覗こうとドアに手を掛けようとするしたその時でした、歌純さんがバスの後ろの方の窓を突き破り、飛び出してきたのです。
「え?か、歌純さん?!」
「聖神!逃げるわよ!!」
「突然どうしたのですか?中で何かあったのですか?」
「後で説明するから!今は.........って、聖神!後ろ!!」
歌純さんが僕の後ろを指さしたので振り向くとそこには死んだはずの運転手さんがいました。下を向いているため顔色は伺えませんが血塗れの身体を足を引きずって少しづつ僕に近付いて来てました。
「運転手さん!生きてたんですか!!」
「そんな訳ないでしょ!!」
そんな運転手さんに歌純さんは躊躇なく顔に拳を叩き込みました。そして歌純さんからの重い一撃をもらった運転手さんは放物線を描き、後方へと吹っ飛んでいきました。
「歌純さん何してるんですか?!」
「あいつはもう死んでるのよ!死んでるのに動いているの!!私が見間違えるはずないでしょ!!放っておけば何故だか分からないけどあなたも襲われてたのよ!バスにも似たような奴がいっぱいいたの!こんなところにいたら何されるかわかったもんじゃないわ!!いいから逃げるわよ!!!」
歌純さんは早口でまくし立てると、有無を言わせぬ迫力で僕の手を引き肩に担ぐと、バスから逃げるように走り出します。
恥ずかしい事に肩に担がれた僕がバスの方を見ると、歌純さんが突き破った窓からべシャリと人が何人も落ちていました。
「歌純さん、あの人達は大丈夫なのでしょうか?バスとはいえあの高さから落ちたら怪我しますよ。」
「大丈夫よ、あいつら全員死んでるから。」
「死んでいるのに動いているのですか?」
「そういうことになるわね。それでいて何故か襲い掛かってくるのよ。ああ言うのなんて言ったかしら、確か.........フランケン?」
「.........いや、それは少し違うと思います。」
そうして2人で緊張感の無い会話をしている内に、いつの間にかバスが見えないほど遠い場所に来ました。途中までバスにいた人達が僕達を追いかけていたのですが、僕を担いだ歌純さんに誰も追いつくことが出来ず、どんどん差が開きいつの間にかいなくなってしまいました。流石歌純さんですね。
「ねえ、これからどうする?警察にでも行く?」
「そうですね.....。」
大の男を1人担いで走っているのにも関わらず全く息を乱した様子のない歌純さんが尋ねてきます。
僕はこれからどうするかと聞かれ真っ先に思い浮かんだのが緋彩さんと怜我くんです。向こうは大丈夫なのか、何か恐ろしい目にあっていないかがとても心配です。
そんな僕を見透かすように歌純さんは言いました。
「あの子達なら大丈夫よ。怜我だけならちょっと心配だけど、緋彩も居るし。それに心配なら電話かけなさいよ。」
「それもそうですね。ではちょっと失礼します。」
歌純さんに最もなことを言われたので、その通りに携帯で取り敢えず緋彩さんの番号にかけます。
『おかけになった電話番号は、電波の届かないところにあるかーーー』
.................出ません。
次に怜我くんの番号にかけます。
『おかけになった電話番号は、電波の届かないところにあるかーーー』
.........................出ません。
「どうだったの?」
「.........せん。」
「え?なんて?」
「出ません!!2人揃って出ないとは何かあったに違いありません!!帰ります!急いで家に帰ります!!!何があっても絶対に帰ります!!!!!!」
「あ、はい。何かまた変なスイッチ入っちゃったな。」
緋彩さん、怜我くん、待っていてくださいね。お父さんが必ずあなた達を救い出して見せますからね!
お父さん覚醒(笑)




