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怜我「絶対に許さん。」

ちょっと少なめですが

今回も最後までよろしくお願いします

どうも、神城怜我(かみしろりょうが)だ。


今現在、俺と姉の緋彩(ひいろ)は何とかあのゾンビの巣窟から逃げ出し、地下鉄の駅を目指して線路に沿って歩いている。

普段は出来ないその体験に、こんな非常時にと思うかもしれないがテンションは上がりっぱなしだ。勿論うまく姉貴には隠しているぞ。心做しか冷たい視線を感じないこともないがきっと気のせいだろう。


「.........この先って.....○×駅よね?」


「そうだ。結構大きな駅だから、人が居ないかもとかは絶対にないはずだぞ。誰かしらはいると思う。」


「.............。」


能力で出した3D状の地図の、駅がある場所を指差し見せると姉貴は黙り込んだ。

また返事が無いだけかと思ったのだが、無表情ながらも深刻そうな顔をしてる為何かあるのだろうか?


「どうしたんだよ?」


「.........電車。」


「電車がどうしたんだ?」


いまいち的を得ない姉貴の言葉に聞き返すと溜息を吐かれ、面倒くさそうな顔をされた。

姉貴は普段、顔の表情筋が死んでるのかと心配してしまうほどの無表情で、長年一緒に暮らしている俺だからこそ多少の感情の変化が分かるのだが、この面倒くさそうな顔をする時だけは凄くわかり易いのだ。


おいおい、そんな顔だけわかり易いからクラスで苛められたりするんだよ。


「.........電車が.....さっきから1本も通らないわ。」


「あ?そうか?」


確かに言われてみれば歩き始めてかれこれ十数分はたっているがその間電車は1本も通っていなかった。


「.....たまたまじゃねぇか?」


「.........一応.....用心しなさい。」


そう言うと集中する様に姉貴はまた黙り込んだ。


俺は地図にのっている黒い矢印と2本の青いピンを見つめる。黒い矢印は俺が能力で出した一番安全だと思われる逃げ道を示したもので、2本の青いピンは俺達だ。

本当はあのゾンビ共も何処にいるのか分かるようにしたいのだが、MPが足りないのか先程から何回もやってもうんともすんともしないのだ。

一度、何をするとどれ位MPを消費するのか調べないといけないだろう。


それから十数分歩いていき、電車が通ることもゾンビ共と遭遇することもなく、駅から後少しの所までやって来れた。


「.....電車、通んなかったな。」


「.........地上も.....地下と同じようになっているかもね。」


俺は地下街のあの悲惨な状態が地上にも及んでいる事を想像して身震いしてしまう。


あの平穏な日常はもう帰ってこないのか。



そして、駅が見えるような位の所に来た時そこは俺の想像の斜めを行く、地下街よりも悲惨な状態が広がっていた。


「おいおい、嘘だろ.....。誰かしらはいるかもって言っけどさぁ.....。」


「.........ここまでとは。」


電車が脱線し横転しながら駅のホームに突っ込んでおり、先頭車は見るも無残にひしゃげて煙を上げている。

そして、ホームや線路の上など至る所には男性や女性のみならず、子供やお年寄りの様なゾンビも確認できた。


物陰から駅の様子を伺っているのだが、俺はその状況を見て顔が引きつっていたが、姉貴は顔色を一つも変えずに冷静に分析していた。


「.....怜の出した矢印が示すのが.....一番安全な道なのだとしたら.........他はもっと大変な事になってるってわけね。」


「この状況見てなんでそこまで考えられるんだよ。俺、グロ過ぎて吐きそうなんだけど。」


俺は矢印を縦横斜め全ての角度を確認し、スーパーの時みたいに何処かの通気口などを通るのではないことを確認し、本当に逃げ道があの場所を通らないといけないのだと分かり、絶望感が沸き起こった。


「マジで、あそこを通らなきゃならないのかよ。」


「.........怜は私の後を付いてきたらいいわ。.............あいつらは私が相手をする。」


「いや、別に戦わないとは言ってないだろ。てか、あの量を1人ではなんとかするとか無理だろ。当然俺も戦う。」


「.........どうやって?」


「.............どうやろう?」


エヘッと誤魔化して見るが、そんな事をしても姉貴の視線がどんどん冷たくなるだけだった。


「.........大人しく私の後についてきなさい。」


「でもさ、あの量を相手にするのは幾ら何でも無茶だぜ。」


「.....後に.........ついてきなさい。」


有無を言わせない圧力を出しながらいう姉貴に、思わず頷きそうになる。

だが、ここで引く理由にはいかない。

あ、そうだ!


「じゃあこうしよう!」


「.....?」


「俺のレベリングをしよう!」


「.....何それ??」


普段全くゲームをしない姉貴にはレベリングの意味が分からないようだ。


「ステータスにLv.って欄があっただろ。ゾンビ共と戦って、あれの数値を上げるんだよ。簡単に言ったら修行しようぜって事。ついでに姉貴も転職して一緒にレベリングしたらいいんだよ。」


「.............転職?.....私は学生よ。」


「.........ほんと、何も知らねーのな。」


それから俺はゲーム知識の全くない姉貴に、ノートに書いてある姉貴のステータスと照らし合わせて基礎知識を叩き込んだ。

姉貴は勉強は人一倍出来るため、飲み込みは早かったが何にせよ知識が0のやつに1から何かを教えるのは大変だった。


「分かったか?」


「.........まぁ.....教えてもらった所くらいは。.....でもド〇クエとかF〇っていうゲームの主要キャラの名前とか別に覚えなくても」


「よっしゃ!じゃあ早速だけど転職しよう!!」


転職ってマジでゲームっぽいな!

段々とテンションの上がってきた俺は、まだ何かを言っている姉貴の背を押す。それから来た道を少し戻り、地図を見ながらゾンビが居なくて突然現れてもすぐに対処出来そうな場所まで行き、落ち着くと地図を閉じ、ステータスを開くように急かす。

そう言えば地図はずっと出していてもMP減ったりしないな。


「.........何でそんなに.....テンション高いのよ.........。」


ドカッと地面に直に座り、地面を叩きながら早く早くと急かし続けると、とてもつもなくうんざりとした顔になっている姉貴が、ため息を吐きながら、俺の前に座り刀を横に置くとステータスを開いた。

半透明のモニターの光がぼんやりと、この薄暗い地下道と姉貴の何を考えているのか分からない無表情の顔を照らしている。


「.....ここの.........職業って文字を.....押したらいいのよね?」


俺が頷くと、姉貴は俺には何も映ってないように見えるモニターのある部分をタッチする。

暫く画面と真顔の睨めっこを繰り返す姉貴だったが、何かあったのか首を傾げる。


「どうしたんだ?」


「..............職業に関する説明文?.........みたいなのが出てきたわ。」


「は?」


「.........こんな事。」


地下街のスーパーで大量に食料品を詰めたバックを漁ってノートを取り出し、何かを書き込むと見せてくれた。


☆☆☆☆☆


職業

→仕事の種類の事。条件を満たすと転職可能。


☆☆☆☆☆


「.............これだけ?」


「.....これだけ。」


思わず2人揃って首を傾げる。


何なんだ、転職できるんじゃなかったのか?

ノートを見返すが、何度見ても職業が書かれている隣には転職可能と書かれている。姉貴が書き足したというのもあるが、あの面倒くさがりの姉貴がわざわざそんな事をするなど考えにくい。


「.............あっ。」


俺がうんうんと唸りながら考えていると、ステータス画面を弄っていた姉貴が突然声を上げる。


「何だ、何かあったのか?」


「.........転職可能職業.....剣士、.....魔術師、.....貴族。.........転職できます欄を.....押したら出てきた。」


「はぁ?何だよそれ。色々理由考えていた俺が馬鹿みてぇじゃねえかよ。」


「.........どれにするの。」


俺が脱力していても、全く気にした様子は無しに姉貴が聞いてくる。

だが、正直俺にもどれがいいのか分からない。

てか、貴族って職業なのか?


「それぞれ説明文とか付いてないのか?」


「.....付いてる。.....だけどどれも.....その職業特有の能力が付く.........としか書かれてないわ。」


「相変わらず、テキトウな文章だな。肝心な所が分かんねぇじゃん!」


その職業特有の能力って何だよ!!


まぁ一旦能力とか分からないことは置いておいて、落ち着いて考えてみよう。

今欲しいのは攻撃力だ。その点で言えばそう言うのとは無縁そうな貴族は外しても良いだろうな。剣士なら姉貴は刀持ってるからちょうど良さそうだし、魔術師ならMPが増えるとかちょっとした魔法が使えるとか.....?能力と魔法って何か違うのか?


「何がいいとか分かんねぇから、姉貴の好きな職業にしたら?貴族はちょっと分かんねぇけど、剣士と魔術師なら今よりは強くなれるだろ。」


「.........じゃあ。」


姉貴は少し考え込むと、どの職業にするか決めたのかステータス画面をタッチした。

その瞬間、姉貴のステータス画面が突然光の粒子となっていき、眩いほどの光を放ちながら姉貴を中心に円を描いていく。


「?!」


「な、なんだこれ!?」


流石の姉貴でも慌てたのか、傍らに置いてあった刀を掴んで立ち上がり、光の粒子を散らすように振り回した。

突然の姉貴のその行動に、目の前で呆然としていた俺が避けられる筈もなく、姉貴が振るった刀の横っ腹に思いっきり頬を叩かれ、横へ吹っ飛ばされた。


「ブハッ!!!」


「.............あ。」


かなりの勢いで壁に打ち付けられ余りの衝撃に意識が遠のいていく中、俺が最後に見たのは、振り切った刀をそのままに固まり、ぽかんとした顔をした姉貴へ、周囲で飛んでいた光の粒子が入っていく所だった。


「.............ごめん。」


絶対に許さん。


こうして俺は意識を手放した。

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