年上のプライド
リアルが少し忙しかったんです。汗汗
待ってた人ごめんなさい。
第五十話 「年上彼女のプライド」
付き合って数か月。
最近、私はあることに気付いた。
「……」
蓮は二歳年下だ。
二十四歳。
私は二十六歳。
それなのに。
「私の方が子どもでは?」
◇
月曜日。
昼休み。
社員食堂。
「高橋」
「ん?」
「相談」
「珍しい」
高橋が箸を止める。
「どうしたの?」
「……私」
「うん」
「彼氏より年上なのに」
「うん」
「精神年齢負けてる気がする」
「ぶっ」
高橋が味噌汁を吹きそうになった。
「何それ!」
「笑い事じゃない」
私は真剣だった。
◇
「だって」
私は指を折って数え始める。
「不安になったら話を聞いてくれる」
「うん」
「私が拗ねても怒らない」
「うん」
「冷静」
「うん」
「私はすぐ照れる」
「うん」
「すぐ慌てる」
「うん」
「すぐ顔に出る」
「うん」
「……」
「うん」
「年上の威厳がない」
高橋は数秒黙る。
そして。
「最初からあった?」
「……」
痛いところを突かれた。
◇
「瀬名」
「何」
「年上だからって」
「うん」
「しっかりしてなきゃいけないなんて決まりないでしょ」
「……」
「むしろ」
高橋が笑う。
「黒瀬さん、そういう瀬名が好きなんじゃない?」
「……」
「ほら」
「……」
「また照れてる」
「うるさい」
◇
その日の夜。
私は蓮の家に来ていた。
一緒に夕飯を食べる約束だった。
「いただきます」
「いただきます」
穏やかな時間。
でも私は少しだけ考え込んでいた。
「紗雪?」
「……ねぇ」
「うん?」
「私」
「うん」
「年上らしくないよね」
蓮がきょとんとした。
「急ですね」
「答えて」
「……」
少し考えたあと。
「らしくないですね」
「……」
即答だった。
◇
「やっぱり」
私は肩を落とす。
「でも」
蓮は続けた。
「年上らしくない、とは思いますけど」
「うん」
「紗雪らしくはあります」
「……?」
「年齢で好きになったわけじゃないので」
私は顔を上げる。
「紗雪だから好きなんです」
「……」
「二十六歳だからじゃない」
「……」
「紗雪だから」
また。
この人は。
そういうことを。
◇
「それに」
蓮が笑う。
「年上らしい時もありますよ」
「ある?」
「あります」
「例えば?」
「仕事の話してる時」
「あ」
「すごく頼もしいです」
「……」
「あと」
「うん」
「俺が風邪引いた時」
以前、蓮が軽い風邪をひいたことがあった。
私は心配で、ゼリーやスポーツドリンクを買って家まで届けた。
「その時」
「……」
「すごくお姉さんでした」
「……」
そんなこともあった。
◇
「だから」
蓮が少し照れくさそうに笑う。
「普段は可愛い恋人で」
「……」
「たまに頼れる年上」
「……」
「それで十分です」
私は思わず笑った。
「欲張り」
「そうですか?」
「そう」
「でも」
蓮は真っ直ぐ私を見る。
「その全部が紗雪なので」
◇
帰り道。
私はふと思った。
年上らしくなくてもいい。
しっかりしすぎなくてもいい。
恋人なんだから。
頼る日があっても。
支える日があってもいい。
「蓮」
「うん?」
「ありがと」
自然にタメ口が出た。
蓮が少しだけ目を丸くして、それから柔らかく笑う。
「どういたしまして」
手を繋ぐ。
少しだけ握り返される。
その温もりが心地よかった。
——二歳差なんて、きっと些細なことだ。
大切なのは。
どちらが年上かじゃなくて。
お互いを思いやれるかどうか。
私はそう思えるようになっていた。




