遠い昔の放浪話
ーー昔、昔と言うにはあまりにも風化してしまった遥の言い伝え。
むかしむかし、森の中で様々な生き物と遊ぶのが好きな小さい女の子がいました。少女は時折、森の中で一人会話をする事がありました。魔物と楽しく日々を過ごすこの少女には、木々と会話をする不思議な力を持っていたのです。
ある日、少女は森の木々と会話をしていると、1本の大木の傍で大きな卵を見つけました。少女は、この卵から産まれてくる何かにとても興味を持ち、誰にも言わず一人で世話をし続けたのです。その頃の集落では、頻発していた大きな災害が1本の得物を携えた放浪の旅人によって終息に導かれたばかりだったのです。誰にも見つからずに卵を育てていた少女は、付近で偶々襲ってきた魔物を必死の思いで倒した時に、大きな卵に向かって魔物の魔力が流れていくのを発見しました。
それから、卵に良い影響を与えるため定期的に魔物の魔力を流していった少女は卵に少しずつヒビが入っていることに気付き、その次の日には卵から大きな子供の蜥蜴が産まれていたのです。愛らしい顔をした蜥蜴に少女は夢中になり、それからの森での遊びは蜥蜴と共にしていました。
それから年月が流れ歳を重ねていく内、育てていたものがただの蜥蜴ではなく竜であったことに気付いた少女は竜と共に世界を見て回るために無理を押し切り集落から離れて旅をはじめました。竜はその大きい体を小さくすることが出来たため、少女は色々な場所を竜と共に見ることができたのです。時に戦いが起こる旅で、竜には倒した魔物のより強い魔力を受けさらに力を増し名を轟かせていきました。
しかし
旅をしている中である時、強力な魔物の争いに巻き込まれた竜はその自身と拮抗していても可笑しくない強大な力に少女を守りきること虚しく、巨獣の攻撃が少女に襲い、少女はその楽しく危険で濃密な生涯を終えてしまいました。巨獣との戦いが幕を閉じ、少女の命が遂には無くなってしまったことに気が付いた竜はその失意と絶望から自身の魔力を禍へと変質させ、絶望のままに世界でその力を振るい始めました。
正気を失い荒れ狂い果てた巨大な竜は、自身の生まれでも有り少女と初めて出会った場所でもある故郷の森へと歩みをはじめました。竜が森に着くまでに、大きな打撃を受けた世界では竜を大いなる禍として名を禍竜ファグアデルグと称し、世界中が恐怖に慄き世界の終焉を待つことしかできませんでした。
時に、少女の生まれ故郷だった集落で災害を終焉に向かわせた一人の放浪者が、森に新たな災害が向かっていることを知りました。放浪者はその禍が、かつて自分が息の根を止めた災害たる竜の最後の地である森に向かった禍竜に悪い予感が働き、再びかの森へと足を運びはじめました。
放浪者はかつて激闘を繰り広げた森に足を踏み入れ、以前災害を終わらせる際に訪れた小さな集落に再び訪れ、
竜がこの森にやって来て猛威を振りまいていること
竜がこの集落出身の少女と共に旅をし、その名を轟かせていたこと
竜がこの森で生まれていたこと
を知り、放浪者は絵で見た風貌でその竜がかつて自分が倒したはずの竜に特徴が似ていたことで、災害が死ぬまでに子供を産み落としていたのを見落としたことに気付きました。その後、放浪者は森を探索し続け、崖に流れる大きな滝の中に隠れた巨大な洞穴で一時的な休息を取っていた竜を発見しました。
放浪者は、災害を討伐した際の得物と共に新たな長い得物を携え大いなる禍と何日もの間互いの命を奪い合いました。
毎日恐怖に怯える集落の元に放浪者が帰ってきました。放浪者はその手に強大な禍の力を封じた得物と共に禍竜の命を経ったことを集落の人々に伝え、大いなる禍がこの世から去っていきました。その後、放浪者は集落の人々から英雄として崇められ、携えた短長2本の得物からオオタチ様と呼ばれ始めました。だけれど、禍竜との激しい戦いで傷を負った放浪者はその命が尽きるのがすぐそこまで来ていると感じ、人々からその姿を隠しました。
禍の竜は討たれ、かの大洞穴に眠る。自身と親の命を狩った短長2本の得物を携えた英雄とともにーーー
その後、
滝の大洞穴は内部の姿を大きな神殿に変えた今も尚、大いなる禍とその身を穿った英雄と共に記す証拠として健在している。
放浪者は壁画には6枚の光る羽を持った姿で書かれています。しかしこの人物は集落の出身では無い。ではいったいこの妖精達のものと似た特徴を持つこの人はいったい…




