第二話 入浴
夕食を終えた俺たち2人は夕食の片付けを手伝った後お風呂に入っていた。この世界には入浴の文化がとても広く普及しているのだ。
初めてみた時には驚いた。
また、石鹸も地球のもの程の洗浄力はないものの存在している。
「ルゥ、石鹸を取ってもらえないか?」
「うん、はい石鹸」
ルクスは夕食の後しばらく経って大分立ち直っていた。石鹸を手に取り俺たちは互いに石鹸を泡立て身体を洗う。
「お兄ちゃん、背中洗うよ。」
「ありがとう、じゃあお返しに俺もルゥの背中を洗おう。」
「ありがとう、お兄ちゃん。」
少し手の届きにくい背中を互いに洗い合う。ルクスの力は6歳らしく少し弱いが、そこが良い。そのようにして互いに身体を洗い終わると湯船に浸かる。
「「ふぅ~」」
湯船に浸かると互いに思わずまるっきり同じように深く息を吐く。
「温かいね、お兄ちゃん。」
「そうだな」
などと意味のない会話をしつつのんびりと浸かっていると不意にルクスが不思議そうに口を開いた。
「ねえ、このお湯はどこから来てるの?」
ルクスは心の底から疑問そうで好奇心に満ちた表情だった。俺は透き通った色の魔石を指差して
「それはな、あの石が火と水の魔力を持っていてその力でお湯を生み出しているんだ」
「そうなんだ!なんだかすごいね。」
あんまり理解できてなさそうなルクスは完全にいつもの調子に戻り、本人目線、不思議なことに対して目を輝かせている。
「魔力で生み出しているんなら、お兄ちゃんも同じことができるの?」
「できるぞ、ただしまだ火の魔力が使えないから水になるけどな。」
「水でもいいから見せて!見せて!」
加えて、ルクスは顔から溢れそうなほどのワクワク感を表情に滲ませ、待っている。俺は腕を浴槽の外に突き出し詠唱文を唱え始める。
「魔力よ、水を生み出せ。流水」
詠唱文を唱え終える。そして、手に魔法陣を描くとその魔法陣からそこそこの量の水が溢れ出し浴槽の外へと落ちていく。
「すごい!すごい!」
ルクスは無邪気な様子で目を輝かせながら魔法陣から湧き出してゆく水を眺める。
「ねえ、僕もお兄ちゃんみたいなことできるようになるかな?」
ルクスは未来への希望を込めながら問うて来た。
その言葉に呼応し俺の脳裏にとある記憶が浮かび上がった。
『ねえ、僕もあの先生みたいなかっこいい大人になれると思う?』
それは遥か前世の時のかけがえのないあいつとの日々の内の1つであった。
もう会えないのかと思うと胸がほんの少しだけチクリと痛んだ。この転生したその瞬間に、確かにもう自分の心の中で終わらせたはずだった。だが、どうしても思い出さずにはいられない。
「お兄ちゃん?」
返答に詰まる俺を訝しむようなルクスの声が聞こえ、はっ、と我に帰った。
そして、その時ルクスの表情と幼い時のあいつの顔がどうしようもなくダブって見えた。だから、
「ああ」
せめて違う場所に旅立ったあいつにも届くように
「きっと、なれる。きっとなれるさ。」
ルクスとここに居ないあいつに対しても俺は答え、肯定した。
「そろそろ上がろう?」
「そうだな」
そんなことがありながらゆっくり入っているとルクスが言ってきたのでのぼせない内に上がろうと思い答える。
そうして俺たちはお風呂から上がりリビングへと戻って行き寝る準備をして寝室へ向かう。




