17 小倉駅前ダンジョン その3
申し訳ありません。
腹痛にて投稿遅れました。
「おらあ!」
「フォウ!」
ドカッと鈍い音を出しながら、何度目かの大金槌とコマンドラビット攻撃がぶつかる。
大金槌を弾かれながらも強く握りしめ、離すようなミスは犯さない。手に痺れはなく、何度だって打ち合えそうな感覚に内心ほくそ笑む。あれだけ激しい打ち合いをしてもいまだ手にダメージが少ないのはおそらく『すとろんぐあーむ』のおかげだろう。このまま同じことを繰り返せば先に崩れるのはコマンドラビットだろう。
そしてまた目の前に跳ねてきたコマンドラビットの蹴りに合わせて大金槌を振る。
「フォウフォウ!」
「は?」
しかし大金槌は空を切り、目の前にいたはずのコマンドラビットが視界から消える。真正面から戦い続けて視野が狭くなっていた。おそらくコマンドラビットが消えた先は――
「フォオウ!」
「ぐっ!だと思ったぜ、おらあ!」
俺はほぼ反射的に後ろを振り返り、左手一本で逆手で大金槌を持ち、半身に沿わせて盾にする。密着させた大金槌に蹴りを入れて跳ね返るコマンドラビットが吠える中、右手でナイフを多少雑に投げる。狙いは少しずれたが、コマンドラビットの腹部を掠り、白い羽毛から血が流れだす。
「フォ、フォウ……」
血を滴らせながらも跳ねるコマンドラビット。しかし、そこに先ほどまでの威勢はない。小さい体故に、少量の血でも流れ出せば、たちまち動きは鈍くなる。
「フォウ!」
そんな劣勢を隠すためか、それともこちらをかく乱する気なのか、左右に大きく跳ねる。
「遅いねえ!動きが見え見え、だっ!」
しかし動きが鈍くなったのを見逃す俺ではない。地面を跳ね、真横から飛び込んでくるコマンドラビットの攻撃をスウェーで躱す。そのまま少し離れた場所に着地したところへ即座に詰め寄る。機敏な動きができないコマンドラビットは、それでもなんとはその場から逃れるように更に後ろへ大きく跳躍する。
「ステータスオープン!そこだ!」
身動きができない空中を狙い、大金槌ではなくステータスカードによる攻撃を選択する。まっすく飛んで行ったカードは寸分の狂いもなく、コマンドラビットの傷口に刺さる。
「フォオオオオ!!」
痛みに鳴き声を上げ、空中で姿勢を崩したコマンドラビットは頭から地面へと落ちる。その大きな隙を見逃さず、俺は大金槌を全力で振り投げた。
「チェックメイティング」
「フォ!?」
綺麗な回転運動をしながら、時速80キロメートル/時は出ているであろう凶悪な大金槌は、ちょうど槌の先端でコマンドラビットの頭を粉砕した。俺とはまだ距離があると思っていたであろうコマンドラビットは突然の大金槌になすすべなくやられたのだった。
「おおー、やろうと思えば大金槌くらい重くても狙ったとおりに投げられるな」
光となって消えたコマンドラビットの後には初回攻略ドロップとして、『脱出のスクロース(レベル1)』と『結界のスクロース(レベル1)』が2つずつが落ちていた。いずれも普通にダンジョン攻略をしていれば必要となるので、普通にうれしい。九重大学跡地ダンジョンのボス戦後のように散らかったドロップアイテムを集める必要もないので、一人パーティの俺にもとてもやさしいダンジョンである。投げた大金槌とともに回収する。
「そろそろ攻撃スキルが欲しいが、どうだ。ステータスオープン」
腰を下ろし、ダンジョンボス討伐後のステータスを確認する。
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なまえ:小野寺太郎丸おのでらたろうまる
とし:16
しゅ:ひと
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ついかこうげきりょく:151(+33)
ついかぼうぎょりょく:131(+31)
まなりょう:80(+20)
ついかいどうそくど:101(+23)
ついかまほうこうげきりょく:96(+25)
ついかまほうぼうぎょりょく:180(+39)
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ふれいるすいんぐ
ついかこうげきりょく1.1ばい
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あじゃすとうぉーく
わーどらんげーじ
すとろんぐあーむ
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さいだいだんじょんれべる:3
だんじょんこうりゃくりれき:『こくらえきまえだんじょん(3):5かい』
『ここのえだいがくあとちだんじょん(2):5かい』
『ここのえだいがくあとちだんじょん(2):5かい』
『ももちはまだんじょん(1):4かい』
『ももちはまだんじょん(1):4かい』
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「お、おおお!ついに攻撃スキルきたああ!!しかもパッシブスキルまで!?いやあ、大盤振る舞いですわな、こりゃ」
『ふれいるすいんぐ』は読んで字のごとく、剣や斧、鈍器などを振る動作を伴う攻撃スキルである。大ぶりの動作の攻撃となるため、連発するのは難しいがその分一発一発に威力が込められた、大味好きには持ってこいのスキルだ。今の俺の戦闘スタイルとも相性がいい。
そしてもう一つ『ついかこうげきりょく1.1ばい』はかなり当たりのパッシブスキルだ。パッシブスキルの多くは固定値の追加ステータス底上げ効果を持ち、『追加攻撃力+100』だったり、『マナ量+100』などが該当する。対して、倍率によってステータスをアップさせる『ついかこうげきりょく1.1ばい』は熟練者になっていくほど効果が上がっていく。初心者攻略者のうちは固定値のほうがステータスの実数値は高くなるが、熟練者になるほど、追加ステータスに倍率をかけるほうが増分としては多くなるためだ。
そんな当たりのスキルを同時に2つも引けて嬉しさマックスの俺は、午後にもう一度小倉駅前ダンジョンに潜り、新スキルのお試しと魔石の摂取をしようと段取りをつけつつ、ダンジョンから脱出した。
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「おい!だから回復魔法使えるやつはいねえのか!これくらい早く治せって!」
ルンルン気分でダンジョン脱出直後、もう聞くことはないと思っていた嫌な声が耳をつんざく。先ほどまでの良い気分が台無しだ。汚い濁声で当たり散らすように叫んでいるのは、最終試験を共にしたあの二階堂傑だった。遠目から見るとどうやらいつもの取り巻き3人と一緒にいるようだ。
「いいから早く何とかしろよ!ああ!?」
「い、今救急車を呼びましたので、もうしばらくおまちください……」
「んだよ使えねーな!回復魔法ぐらい使えろよ!」
「いてぇ、いてぇよ……」
よくよく見ると取り巻きの一人である織田の腕が金属のような小手もろとも、あらぬ方向に曲がっている。あんなけがをするのはこのダンジョンではコマンドラビット相手だけだろう。俺の大金槌のスイングと同じくらい威力のある蹴りならああなっても不思議ではない。見るからに痛そうであり、正直同情したくなってくる。
ただ二階堂の態度はいただけない。ここは公共の施設であり、他にも攻略者がダンジョンから脱出してくる場所だ。そんなに怒鳴られても、例外を除いてそもそもスキルをダンジョンの外では使えない。回復魔法だってめちゃくちゃレアな防御スキルだ。レベルの高いダンジョンならいざ知らず、このような低レベルのダンジョンの脱出場所では使用者はいなくて当然だ。
「すみません、攻略者証明書とデバイスです。返却します」
「あ、ありがとうございます。ダンジョン攻略お疲れさまでした」
幸い二階堂たちは俺に気づいていないようなので、さっさと逃げてしまおう。近くの受付に行き、攻略者証明書を提示する。
「すみません、攻略者証明書です」
「え、あ、はい。……確認いたしました。こちら生存報告デバイスになります」
「ありがとうございます」
嫌なものを見てしまったが、せっかく新たなスキルを得たんだから、そちらに集中しよう。本日二度目の小倉駅前ダンジョン。受付から先ほど返却したばかりのデバイスを受け取り、さらなる力を求め、俺はゆったりとした足取りでダンジョンの入り口を通り抜けた。
ダンジョン入場受付のお姉さん
(うわあ、何あの金髪の男。いるのよねああいう自己中みたいな攻略者。回復魔法なんて誰も使えないし、おとなしく救急車待ちなさいよ……)
主「すみません、攻略者証明書です」
(あれ、今この子あっちの受付でデバイス返却してたわよね?またダンジョンはいるの?)
「え、あ、はい。……確認いたしました。こちら生存報告デバイスになります」
(えぇ……ほんとにダンジョンに入っていったわ。なんかカッコつけてるし。はあ、なんか今日は変な人が多いわね。厄日だわ、厄日)




