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カノンと土の塔  作者: 一ノ瀬一
第3章 七不思議編
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第22話 噂

 七不思議の噂は先生たちが流した可能性がある、とあたしはカノンに伝えたけど、これには嘘が含まれている。「可能性がある」のではなくて、噂の出どころが先生であることをあたしは知っている──七不思議の噂はジュアン先生からあたしが直接聞いたのだから。

 研究会終わりにたまたま先生と会って世間話をしていたとき、先生が何気ない口調であたしに人魂のことを言った。それを聞いたあたしは面白そうだと人魂の正体を確かめようとカノンに持ちかけた。

 ここまではあたしも噂は本当にあるのだと信じていたけど、張り込みの前にあたしはクラスメイトや同じ研究会の子に七不思議のことを訊いたものの知っていると答えた人は誰もいなかった。

 そして正体が先生だったとき、あたしの疑いは確信に変わった。おそらく七不思議の噂なんてものは実際には出回っていない。

他のクラスの生徒が見たというのも嘘。信憑性を増しつつ、誰が見たのかと訊かれたとき個人情報を盾にして逃れることができるから先生が加えたものだと思う。

つまり私の本当の推理はこうだ──ジュアン先生はなぜか分からないけどあたしたち(・・・・・)に術式を配りたがっている。

もしかしたらそこには第五王子であるパスカル殿下を政治から遠ざけたいという思惑があるのかもしれないけど、そんなのあたしの知ったことではない。殿下が嫌がって七不思議巡りをやめてしまうのは避けたいから、あたしたちをターゲットに術式を配っていることは四人には言わない。

術式が貰えるのなら貰うし、それで同期よりも一歩「塔」に近づけるのならあたしはそれでいい。

カノンや殿下たちには無駄足を踏ませてしまうことになるけど、情報収集をあたしだけが請け負うのは怪しまれる可能性があるから仕方がない。あたしはあたしで先生のところに行って二つ目の七不思議を先生が作れたか訊くとしようか。


 * * *


「七不思議? 聞いたこともないが……」

「そうですか……リリアーヌ先輩は知ってますか?」

「わたくしも知りませんわ」

 研究会に来て二人に七不思議について訊いてみたけど、案の定成果は得られなかった。シルヴィは人魂を見たのは一年生だと言っていたし、きっと噂になっているのは一年生の間だけなのだろう。

「まあ、歴史ある学園だから七不思議くらいあってもおかしくはないよなぁ」

「そうですわね。いっそのことわたくしたちで作ってしまいますか?」

「さすがにそれはまずいだろ……なんでカノンは七不思議について調べてるんだ?」

「えっと、噂を聞いて友達と昨日、七不思議の一つを調査したんですけど、他の七不思議についても知りたいなって思って」

「なるほどねぇ……すでに七不思議はあるのか」

 顎に手を当てて考えるアンドレ先輩は様になっていた。喋ったり突然魔術戦申し込んだりしなければイケメンなのに。

「話は変わるんですけど、自分が改変した術式を誰かに教えたいときってどんなとき……ですかね?」

「んー、自分が死にそうなときとか相手に魔術師として力を付けてほしいときとか? 例えば師弟関係や親子で上達のために自分の術式を使わせるのはあるかもな」

「そうですわね。師弟でも術式は気に入った弟子にしか教えないみたいな話も聞きますけど、わたくしもその二つくらいだと思います」

 ジュアン先生は病気か何かで死にそうなのか、それとも単に私たちの魔術上達のために術式を配ったのか──現実的なのは後者かな。先生にとっては課外授業みたいな認識で、眉唾物の噂をわざわざ確かめようとした生徒にご褒美をあげる感覚で楽しんでるのかもしれない。

 ただの善意ならいいけど、今後の七不思議で絶対に暴発するような危険な術式を先生が渡すことがあるかもしれない。そういうときはこっそりみんなに教えればいい。今は素直に先生からの術式を受け取ろう。

「ありがとうございます。ちょっと練習場に行ってきますね」

 貰った術式はしっかり頭に入っている。先生から叩きつけられた挑戦状のような魔術──早く使えるようになっておきたい。


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