かぐやルート7
次の日。
いつも通りの登校の朝。
「えへへ」
…………さくらちゃんの胸が当たっている。
腕を組んでいるのだが、さくらちゃんの胸が思いっきり当たっている。
もう、わざとなんじゃないかって思うほど当たっている。
「さくらちゃん、ちょっと歩きにくいかな~」
「今日は麻衣ちゃんも金剛くんも居ないからイチャイチャデーなのです!」
「あ、ははは」
俺の乾いた笑い。
今朝、麻衣は部活の用事。金剛はそのための荷物持ちで先に学校へ向かったのだ。
それもあって今日は二人での登校。
それを知った途端、さくらちゃんのスキンシップが激しくなった。
「ん?」
前を歩く同じ制服の生徒。
それだけだったら気にも留めなかったのだが。
「あれって八重橋さん?」
さくらちゃんも気付いたみたいで小首を傾げる。
「八重橋さんもこの道だったんだ。初めて知った」
そこでふと、『さつかそ』との違和感を覚える。
「八重橋さんって車で送迎されてたよね。ほら、高そうな黒い車で」
ゲームのときはそれでお金持ちアピールをしていたはずだけど。
「うん。そうだったと思う。今日はどうしたんだろうね」
さくらちゃんもそう言うので間違いないみたいだ。
一人で歩いているなんて何かあったのか?
「おーい! 八重橋さーん!」
俺が声をかけると、立ち止まったかぐやが振り返る。
「何でアンタがここに居るのよ?」
いつもの仏頂面。
今日もツンツンしている。
「何でって言われても毎日この道だし」
「ふーん。そ」
自分から訊いてきといて反応薄いな。
「八重橋さんはどうしたの? 今日、車は?」
さくらちゃんが問いかける。
一応言っておくが、腕組みは解除中である。
さすがのさくらちゃんも親しくない人の前では恥ずかしいようで。
「いつも送迎してくれる人の体調が悪かったのよ。だから歩き」
「え!? 結構な距離じゃないの?」
「別に。アタシのことが心配で送迎されてるだけだから。実際はそう遠くないのよ」
「そうなんだ。でも、大変だったね」
「平気よ。このぐらい」
ふふん、とかぐやは得意気な表情。
ていうか、さくらちゃんとは普通に会話してんじゃん。
何で俺にはツンを発揮すんだよ!
「そうだ! このまま一緒に行こうよ!」
「え? 良いの?」
「もちろん!」
驚くかぐやにさくらちゃんは微笑む。
はあ、マジで天使だ。
でも、二人っきりじゃなくなって少し残念。
「ねえ、相島 立花」
「何、八重橋さん?」
また何か言われるのかと思い、当たり障りのない返事をする。
ていうか何でフルネーム呼び?
「昨日はどうして、また明日って言ってくれたの?」
「ん? 普通にさよならしただけだけど。何で?」
「だって……」
かぐやはそこで言葉を止めてしまう。
何を言いたいんだ?
まあ、良いや
「特に深い意味はないよ。また会えたら良いなって思っただけ」
「そう」
かぐやの言葉はそれだけ。
素っ気なかったが、何処か嬉しそうだったので詮索しないでおこう。
「ほら、遅刻するよ。車と徒歩じゃ感覚違うんだから迷わないようにね」
「子供扱いしないで!」
「はいはい」
だから何で俺にはツンなの?




