ジングウルート あのときへ 幕間
「あれで良かったんですか?」
「うん。ありがとうね」
何処かへ向かう二階堂 天と秋山 幸。
二人の背中を電柱の陰から見守る別の二人。
「でも良かったよ。破壊者と連絡が繋がって。もしかして秋山 幸に用だった?」
「そうですね。ですが秋山 幸の復讐心は消えました。おかげさまで私は暇になりましたよ」
破壊者と呼ばれた糸目の少女は溜め息を吐く。
「私たちがこの世界の登場人物に能力を与えて物語を盛り上げる。それが私たちに与えられた命令」
「じゃあ『瞳の能力』を秋山 幸にあげれば? 今の彼女だったら悪いことには使わないと思うし」
「それで盛りあがるんですか?」
「さあね」
天たちの姿が見えなくなると、ゲンムは歩き出す。
「でもこういうのって役者が多い方が良いでしょ? 最後には破壊者のあなたと、創造者が世界をメチャクチャにする。そこに相島 立花率いる『瞳の能力』を持った能力者たちが立ち向かう。ドラマチックだよね」
「うっわ。そんな大事にするんですか? もうデータ収集は十分じゃないですか〜」
肩を落として溜め息を吐く破壊者。
ゲンムの後に続く。
「それで次の顔合わせっていつだっけ?」
「また忘れたんですか〜?」
「まあまあ。仕方ないじゃん。普段こっち側に居るから分からなくなるの。破壊者は定期的に戻ってるの?」
「あなたと観察者だけですよ。ずっとひっついてるのは。はい。データ送りました。これで忘れませんよね?」
ゲンムは立ち止まると、目の前の中空を見る。
「うん。ありがとうね」
何度か瞬きすると、ゲンムの瞳は破壊者へ。
「他の皆はどう? 元気?」
「管理者は定期メンテで休憩中。創造者が好き勝手にこの世界に設定を加えたから頭を悩ませてましたよ。で、その創造者は適当に暮らしてます。あの人の能力をこの世界の住人にあげたら大惨事ですし」
人数を確認するために破壊者は指の関節を折っていく。
「観察者はサンプルのところで、監視者は待機中。それであなたと私で六人。いや六柱?」
「まあ一応は神様扱いだから六柱で合ってるかな」
ゲンムは一柱ずつの顔を思い浮かべる。
たまにこうしていないと忘れそうになるのだ。
「皆が気になるなら定期的に戻って来てください。それでは」
「うん。じゃあね」
ゲンムは手を振り破壊者と別れる。
「姉妹でも代わりはあるんだよ、天」
それはゲンムから出た呟き。
「さて。そろそろ身体を麻衣に返そうかな」
瞳を閉じる。
そして再び開く。
「ここ何処よ〜」
麻衣は周りを見回して溜め息を吐いた。




