さくらルート43
騒動は警備員の人が来たことによって収まった。
友達同士の喧嘩ということで警備員の人には激しく説教されたが、いじめっ子たちも無事でその場で別れた。
俺たちは今、帰りの電車の席に座って揺られている。
相当疲れて俺はウトウトする。
右肩にはさくらちゃんの頭。
先ほどまで泣いていたのだが、今は小さな寝息を発てて寝ている。
「それで、私はどんな感情でソイツと接すれば良いの?」
左の席で俯いていた麻衣が訊いてくる。
今日起こったこと。そして俺の説得によって、さくらちゃんが相島 立花を助けたい一心で行動していたことを麻衣も納得してくれた。
だとしても、まだ気持ちの整理がつかないんだろう。
「昔に戻れたら。私はそう思うよ」
俺は小さい頃の相島 立花たちを知らない。
だけど幼馴染みだったならきっと仲が良かったはずだ。
「……頑張ってみる」
「ふふ。ありがとう、麻衣」
頑固だけど、正義感溢れる麻衣なら大丈夫だ。
また、絆を取り戻すことが出来る。
ああ。
目が閉じてしまいそうだ。
「結局、ソイツはアイツらに何をしたの? 睨んだら倒れたみたいだった。まるで呪い殺そうとしたみたいに」
麻衣は少し緊張した声だった。
誰だって理解出来ないことが起これば恐ろしい。
俺だってそうだ。
さくらちゃんの瞳の力の謎は未だに分からない。
彼女に力を使わせないようにするしか対処法が思いつかないし。
「いろんな偶然が重なっただけだよ。さくらちゃんが睨んだときにたまたま相手の胸が痛み出しただけ」
「そう、か」
俺の回答に納得してはいないといった表情。だけどそれ以上訊かれても俺も困ってしまう。
「今は、そうしておく」
物分かりの良い妹だ。
やっぱり麻衣の方が大人だな~。
「あとさ」
「ん?」
閉じかけていた瞼を再び開く。
「何処まで思い出したの?」
何処までと言われても実際は《絆の結晶》の記録を見ただけだ。
そもそも俺には相島 立花の記憶はない。
「階段から落ちたときのことだけだよ。麻衣が私を助けてくれたことも思い出した」
「それより前の記憶は?」
声が震えている。
「ううん。思い出せない。でも、何で?」
「ううん。少し気になっただけだから」
思い詰めていた顔が少し和らいだように感じた。
そう言われてしまうと逆に気になってしまう。
でも、こういうのは触れない方が良いのか?
「駅、着くよ」
「ん? あ、本当だ。さくらちゃん、起きて。降りるよ」
「んー。うん」
寝惚け眼のさくらちゃんが俺を見る。
「えへへ」
何故か頬を緩ませて笑った。
「りっちゃん、だーいすき」
ぎゅっと俺に抱きついてくる。
そしてそのまままた寝出した。
「ちょっと、さくらちゃん! 起きてッ!!」
「やー。もうちょっと寝る~」
看病に行ったときもそうだが、さくらちゃんは頭が回っていないときは極端に幼くなる。
「あ、もう。仕方ないな。ほら、ちゃんと掴まって」
俺はさくらちゃんを背中におぶる。
「え、それで行くの? 起こせば良いじゃん」
「面倒だからこれで良いよ」
俺は手すりに掴まり、なんとか立ち上がる。
両手が塞がってしまうので荷物は麻衣にもってもらった。
「本当にお姉ちゃんのお人好し」
誉め言葉と受け取っておこう。




