天ルート 幕間21
「うーん! 打ち合わせ終わった〜!」
一人だけになった空き教室で秋山 幸は腕を上げて背筋を伸ばす。
「さ〜て、私も帰るか」
幸は自分の荷物を回収すると学校を出る。
帰り道の途中にあるスーパーに寄り、道中で考えていた夕食のメニューに必要な材料を買い物かごに入れていく。
そして精算を済ませて帰路に戻る。
彼女の家は住宅街から少し離れた場所に建つマンション。
数年前に出来たばかりで綺麗な扉の鍵を開ける。
「ただいま。お昼はちゃんと食べたかな、“ジングウ”?」
幸の声は静かなリビングに響くのみ。
小首を傾げた幸は、リビングを通って寝室へ。
「ジングウ、居る?」
寝室に備えつけられたデスクトップパソコンの席に座る、ジングウを見つける。
「なーんだ居るじゃん。返事してよね」
幸はジングウの頭からヘッドホンを奪い取る。
「うるさいな。返してよ」
「お帰りは?」
「……おかえり」
「うん。よろしい!」
幸は後ろからジングウを抱き締める。
「今日もずっとゲーム? たまには外に出ようよ」
「別に良いでしょ。学校に行く方がおかしい」
「酷いな〜。ジングウの代わりに学校に行ってるのに。せめてジャージから着替えなよ。洗濯しちゃうから」
唇を尖らせる幸。
彼女の姿が一瞬にして変わる。
「神崎 さくらに会って来たよ」
そう、幸は言った。
“神崎 さくら”の姿で。
「……どうだった?」
ジングウがマウスを握る手を止める。
「うーん。そうだね〜」
幸は今日あった打ち合わせの状況を思い出す。
「オロチの言う通り、『瞳の能力』は持ってると思うよ。感覚的に感じただけだけど。でも噂とはイメージが違うな〜。ずっと私を見てビクビクしてた」
「“私”のことが怖かったんじゃない?」
ジングウが振り返らずに言う。
「そうかな〜。私はニコニコで話したけどな〜」
幸はにっこりと笑みを形作る。
「あ、そうそう。相島 立花にも会ったよ」
「……え?」
そこでジングウは初めて振り返る。
幸と同じ黒紫の髪と瞳の少女。
「相島ってゲンムたちがご執心の奴、でしょ?」
「うん。そうだよ」
“相島 立花”の姿の幸が頷く。
「神崎 さくらが付き添いで呼んだみたい。神崎 さくらは私のこと初めから結構警戒してる。それはそれで恐ろしいよね。彼女には第六感があったりして」
「そんなの関係ない。それよりも恐ろしいのは『瞳の能力』の方だよ。オロチさえも殺せる。心臓を壊せるなんて、それこそ化け物じみてる」
「だけどきっと、ジングウの方が強いよ」
元の姿に戻った幸がジングウの右手を自分の両手で包む。
「だってジングウは神様なんだから」
「……ありがとう、私」
「ふふっ。ジングウって素直だと可愛いよね」
「っるさい」
「はいはい。ご飯作っちゃうからシャワー浴びて来てね」
「今日は何?」
寝室を出ようとした幸は顔だけ振り返る。
「ひ、み、つ♡」




